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真田十勇士

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巻ノ七十七 七将その八

「殿のお命を」
「何っ、兵までか」
「はい、率いてです」
「七将全てがか」
「この屋敷に向かっております」
「それはいかんな、ではすぐにな」
「御身を」
 島は石田にまた言った。
「佐竹家の方に既にお話をしております」
「手配してくれたか」
「はい」
「済まぬな」
「お礼よりも今は」
 すぐにというのだ。
「お隠れ下さい」
「それではな」
 石田は島の言葉に頷いてだった、実際に。
 変装し籠も細工をしてだった、そのうえで。
 佐竹家まで逃げ込んだ、佐竹家側はすぐに彼を出迎えたが。
 すぐにだ、佐竹家の者が石田と彼に同行する島に言った。
「この件は桑島殿の知らせですな」
「はい」
 島は佐竹家の者に答えた。
「お拾様の侍従であられる」
「そうでしたか、やはり」
「はい、しかしですな」
「先程屋敷の周りに怪しい者を見ました」
「それは」
「おそらくですが」
「では」
「はい、七将側の兵は多いです」
 それでというのだ。
「ですから」
「ここからですか」
 石田も言った。
「去られた方がよいと」
「今この屋敷の兵は多くありませぬ」
 佐竹家の者は申し訳なさそうに言った。
「ですから」
「ここは、でござるか」
「然るべき場所に」
「わかり申した」
 石田は答えた。
「そうします」
「申し訳ありませぬ」
「いえ、ここに匿ってくれただけでも」
 一時そうしてもというのだ。
「有り難きこと」
「そう言って頂けますか」
「死地を脱することが出来ました」
 とりあえずのそれをというのだ。
「ですから」
「だからですか」
「はい、それでは」
「どうか難を避けられて下さい」
 佐竹家の者はこう言ってだ、そのうえでだった。石田と島を丁寧に送り出した。石田は一旦島と共に佐竹家の屋敷から出たが。
 すぐにだ、島にこう言った。
「ここはだ」
「伏見城にですか」
「逃れる」
 こう言った。
「やはり御主もわかったか」
「はい」
 島は石田に確かな笑みで応えた。
「殿ならばと」
「そう言ってくれるか」
「はい、それでは」
「すぐに伏見城に入ろうぞ」
「身を隠されたまま」
「そうしようぞ」
 是非にというのだ。
「今よりな」
「あの城は今現在内府殿がおられますが」
 島はあえて石田にこのことを話した。 
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