英雄伝説~灰の軌跡~
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第一部~メンフィル・エレボニア戦争~ 外伝~メンフィル・エレボニア戦争開戦~
12月3日、同日12:00―――――
~エレボニア帝国クロイツェン州・”交易町”ケルディック・領邦軍詰所~
「た、大変です、司令!」
メンフィル帝国による襲撃が行われる当日、領邦軍の兵士が血相を変えてケルディックに駐屯している領邦軍の司令がいる部屋に入った。
「ん?そんなに慌ててどうした。」
「メンフィルです!メンフィル帝国軍が現れました!」
「な――――寝言は寝て言え!ケルディックはメンフィル帝国領とも接していないのに、いきなりメンフィル帝国軍がこのケルディックに現れる事はできないだろうが!」
部下の報告を聞いて一瞬絶句した司令だったがすぐに気を取り直して部下を怒鳴った。
「本当にメンフィル帝国軍が現れたんです!西ケルディック街道を哨戒していた部隊がケルディックへと進軍しているメンフィル帝国軍を見つけた為急遽ケルディックに帰還し、報告してきました!」
「何だとっ!?それよりも何故それ程の重大な事実を通信で連絡せずにわざわざ走って伝えに来た!」
「それが……哨戒部隊の話によると通信をしようとした際街道に妨害電波のようなものが流されていた為通信ができなかった為、報告が遅れたとの事です!哨戒部隊の報告を聞いた我々も通信で司令に報告をしようとしましたが、このケルディックにも妨害電波のようなものが流されていた為通信による報告ができませんでした!状況を考えると恐らく通信障害の原因はメンフィル帝国による破壊工作かと思われます!」
「バカな!?クッ……メンフィルは一体いつの間にそんな破壊工作を行っていたのだ!?いや、それ以前に何故メンフィル帝国軍がこのケルディックを襲撃するのだ!?メンフィル帝国と戦争状態になった話等聞いていないぞ!?」
部下からの信じ難い報告に信じられない表情で声を上げた司令は唇を噛みしめた。
”貴族連合軍”がメンフィル帝国軍の奇襲をあっさりと許してしまった原因は3つ。
祖国の諜報活動を担う”情報局”を有している”革新派”と違い、”貴族派”は本格的な諜報部隊を有していなかった影響でメンフィル帝国軍の諜報部隊による裏工作に対して無防備だった為、領邦軍の誰もがメンフィル帝国軍による裏工作に気づけなかった事。
また、貴族連合軍の”総参謀”を務めているアルバレア公爵家の長男―――ルーファス・アルバレアもユミル襲撃の件を知ってはいたが、たかが辺境を襲撃され、死者も出ていないのにメンフィル帝国が戦争を仕掛けるとは露ほども考えておらず、メンフィル帝国に対しての情報収集も怠っていた事。
そして最後は”貴族連合軍”は他国に駐留している大使達からの連絡もまともに取り合おうとしなかった為、メンフィル帝国による宣戦布告の連絡が貴族連合内に行き届かなかった事が奇襲をあっさりと許してしまった原因の3つであった。
「クッ……とにかく必要最低限の兵達を街の防備に配置し、残りの兵達を全員迎撃に向かわせろ!それと双龍橋とバリアハートにも援軍の要請の兵達を送れ!我が軍には”機甲兵”があるのだから、幾ら相手がメンフィルとは言えど、援軍が到着するまでくらいは持ちこたえられる!」
「イエス・サーッ!」
その後急いで街に駐留している兵達を集めた領邦軍は少数の兵士達を街の防備に配置し、メンフィル帝国軍との戦闘を繰り広げようとしていた!
~西ケルディック街道~
「!き、来ました、司令!メンフィル帝国軍です!」
「な、なんて数だ……!」
「何だあの大型魔獣達は!?」
「ま、まさか……”竜”か!?」
「ほ、本当に俺達だけで防げるのか……!?」
進軍してくるメンフィル帝国軍を見た領邦軍は、自分達の倍以上の戦力で進軍してくるメンフィル帝国軍に加えてメンフィル軍の中にいる大型の合成魔獣やゴーレム達を見て狼狽していた。
「―――狼狽えるな!我等は誇り高きクロイツェン領邦軍!それに我等にはあの”蒼の騎士”をベースにした新兵器である”機甲兵”を有している!数の差等大した問題ではない!総員、迎撃開始!」
「イエス・サーッ!」
狼狽えている様子の部下達を鼓舞した司令が迎撃の指示をしたその時
「くふっ♪久しぶりの”遊び”だね♪」
「ふふっ……さっきも打ち合わせた通り、それぞれの攻撃を一斉に放って一番早く殺した人が一番槍だからフライングはなしよ?」
「うふふ、それじゃあ始めましょうか♪」
転移魔術によって領邦軍の頭上にエヴリーヌとセオビット、そして飛竜に騎乗しているレンが現れた!
「!?し、司令!上空に人が……!」
「何っ!?」
そしてエヴリーヌ達に気づいた領邦軍が上空にいるエヴリーヌ達を見上げたその時!
「死んじゃえばぁ!?精密射撃!!」
「暗黒の刃よ、貫け―――突闇剣!!」
「空の聖槍よ、貫きなさい―――イナンナ!!」
「がふっ!?」
「ぐふっ!?」
「ギャアアアアアァァァ――――ッ!?」
上空から襲い掛かって来たセオビットの暗黒の刃、エヴリーヌの矢、レンの魔術によって発生した光の槍がそれぞれ機甲兵に命中すると共に機甲兵の装甲を易々と貫いて操縦者を絶命させた!
「お、おい!?」
「へ、返事をしろ!」
「ま、まさか……生身で機甲兵の装甲を貫いたというのか!?」
仲間達の突然の死に驚いた領邦軍は混乱し
「うふふ、戦場で余所見は厳禁よ♪それっ!」
「キャハハハハッ!うーで、あーし、むーね……全部潰してあげる!」
「アハハハッ!メンフィルを敵に回した事、後悔しながらあの世へ逝きなさい!」
「う、うああああああ―――ガハッ!?」
「グギャアアアアアア――――ッ!?」
「ガアアアアア――――ッ!?」
その隙を見逃さないかのようにレンは飛竜と共に領邦軍へと突撃して大鎌を振るい、エヴリーヌは上空から人間業とは思えない凄まじい早さかつ正確な狙いで矢を撃ち続け、セオビットは飛び回りながら魔剣を振るってそれぞれ僅かな時間で数十人の兵士達を葬った!
「何なんだ……何なんだ奴等は!?ガッ!?―――――え?」
その様子を見ていた領邦軍の司令は信じられない表情で身体を震わせながら声を上げたが突然胸が熱くなり、それに気づいた司令は自分の胸を見ると何とエヴリーヌが放った矢が司令の胸を貫いていた為、司令の胸はぽっかりと空洞が開いていた!
「がふっ!?な、何故……こんな……事に…………」
そして司令は口から大量の血を吐いて絶命して地面に倒れた!
「し、司令――――ッ!」
「う、うわああああああぁぁぁっ!?」
司令官の死を見た領邦軍は恐怖し
「くふっ♪敵将討ち取ったり~♪」
エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべた。
「むう、今回はエヴリーヌお姉様に先を越されちゃったわね。」
「ふふっ、そんな事をしている暇を作っていいのかしら?その首、もらったわ!」
「ギャアッ!?…………」
一方エヴリーヌに先を越された事にレンは頬を膨らませ、その間にセオビットは一瞬で領邦軍の兵士に詰め寄り、魔剣を振るって首を斬り落として絶命させた!
「あーっ!セオビットお姉様ったら、ズルいわよ♪―――――メルカーナの轟炎!!」
「「「グギャアアアアアア――――ッ!?」」」
セオビットの行動を見たレンは声を上げた後凶悪な笑みを浮かべて魔術を発動し、レンの魔術によって発動した業火に呑まれた兵士達は断末魔を上げながら焼死した!可憐な殺戮者達は次々と敵を残虐に滅して行き、敵の血で大地を真っ赤に染めて行った!
「全くもう……幾ら相手が雑兵と言えど、突出は危険すぎです。――――総員、戦闘開始!メンフィルの怒り、卑劣にして愚かなエレボニア帝国に思い知らせてやれっ!」
レン達の戦いの様子を見守りながら進軍していたメンフィル帝国軍の元帥の一人にしてメンフィル皇女の一人―――サフィナ・L・マーシルンは呆れた表情で溜息を吐いた後、すぐに気を取り直して号令をかけ
「イエス・マム!!」
「オオオオォォォォ―――――ッ!!」
サフィナの号令に対してメンフィル帝国軍は空気を震わせ、大地をも轟かせる程の雄たけびで答えた後領邦軍との戦闘を開始した!
「い、一体何がどうなっているの!?」
「………領邦軍とメンフィル軍が戦っている。」
領邦軍とメンフィル軍が激突しているその頃戦場より離れた所から双眼鏡で状況を見守っていた紅毛の男子―――エリオット・クレイグは混乱した様子で声を上げ、エリオットの疑問に対して銀髪の女子――――フィー・クラウゼルは静かな表情で答えた。
「そんな事はあの”戦場”を見れば誰でもわかる!それよりも問題は何でメンフィル軍が領邦軍と戦っているかだろうが!?」
フィーの的外れな答えを聞いた緑髪の男子―――マキアス・レーグニッツは疲れた表情で答えた後真剣な表情で声を上げた。
「……ま、普通に考えればメンフィル帝国によるエレボニア帝国侵攻だろうね。」
「そ、それは………」
「クッ……メンフィル帝国とエレボニア帝国の間に国際問題が発生したなんて話、少なくても内戦前は聞いた事がないぞ!?」
冷静な様子のフィーの推測を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、マキアスは唇を噛みしめて声を上げた。
「―――”内戦前まで”はね。」
するとその時エリオット達の背後から女性の声が聞こえてきた。
「え―――――」
「こ、この声って、まさか……!」
聞こえてきた声が自分達にとって聞き覚えのある声である事にエリオットは呆け、マキアスは驚きの表情をした後エリオット達と共の背後へと振り向くとそこにはワインレッド髪の女性と水色の髪の女性がいた!
「フフ、お久しぶりです。皆さん、ご無事でなによりです。」
「サ、サラ教官……!?」
「それにクレア大尉も……!」
「サラ、わたし達を見つけるの遅すぎ。それでも元A級正遊撃士?」
水色の髪の女性―――エレボニア帝国の”鉄道憲兵隊”に所属しているクレア・リーヴェルト大尉はエリオット達に微笑み、ワインレッドの髪の女性―――”トールズ士官学院”に通う学院生である彼らにとって担任教官にあたるサラ・バレスタインの登場にエリオットとマキアスが驚いている中フィーはジト目で指摘した。
「ぐっ……これでも可能な限り早くあんた達の足取りを追って、ようやく見つけたのよ!?――――って、今はそれどころじゃないわ。急いでケルディックに向かって元締め達に領邦軍とメンフィル軍の戦いが始まった事を知らせるわよ!」
フィーの文句に対してサラは唸り声を上げた後疲れた表情で声を上げたがすぐに表情を引き締めて今後の方針をエリオット達に伝えた。
「へ……ど、どうして元締め達に……」
「メンフィルの侵攻ルートから推測するとメンフィル軍は街道での戦いが終わればケルディックを占領する為に街へと向かうはずです。そして領邦軍も幾らメンフィル軍を迎撃する為に多くの兵達を割いているとはいえ、最低限の街の守りは残しているはずです。もしメンフィル軍と街にいる防衛部隊がぶつかり合えば……」
「―――間違いなくメンフィル軍と領邦軍による市街戦に突入するね。」
エリオットの疑問に対してクレア大尉は静かな表情で説明し、フィーはクレア大尉の説明に続くように推測を口にした。
「そ、そんな事になったらケルディックの人達が………!」
「そ、その……クレア大尉はメンフィル軍が領邦軍に勝つ事を前提に仰っていますけど……領邦軍がメンフィル軍を撃退する可能性もあるんじゃないんですか?領邦軍には”機甲兵”がありますし。」
二人の推測を聞き、ケルディックの民達が市街戦に巻き込まれ、最悪の場合命を落とす事を悟ったエリオットは表情を青褪めさせ、マキアスは複雑そうな表情でクレア大尉に指摘した。
「あの戦況を見て、領邦軍がメンフィル軍を撃退できると本気で思っているのかしら?あんた達もさっき見たでしょ?メンフィル軍にとって”機甲兵がいた所で何の障害にもならない”圧倒的な戦いを繰り広げている事を。」
「そ、それは………」
「しかもよりにもよって”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”が全員揃っていた。あの3人が全員揃っている時点で最初から領邦軍の負けは確定している。領邦軍は100%”殲滅”させられるだろうね。」
サラ教官の指摘されたマキアスは機甲兵がいても、圧倒的な戦いを繰り広げていたメンフィル軍の強さを思い出して口ごもり、フィーは静かな表情で自身の推測を口にした。
「せ、”殲滅”………」
「今は領邦軍の事は頭の片隅に追いやっておきなさい!ケルディックに急いで、元締め達に説明して街の中で唯一の”中立地帯”である七耀教会に避難してもらうわよ!」
「”百日戦役”の時もリベールに侵攻したエレボニアもそうですが、エレボニアに侵攻したメンフィルも市街戦に突入した際七耀教会の施設には危害を加えなかったとの事です。その事を考えると恐らくメンフィルも中立地帯である七耀教会にまでは危害を加えないと思われます。ケルディックに到着次第、二手に分かれてケルディックの民達に状況を説明し、避難してもらいます!」
フィーの推測を聞いて呆然としているエリオットにサラ教官はクレア大尉と共に指摘した後指示をし
「「は、はい……!」」
「了解。」
二人の指示に頷いたエリオット達はサラ教官とクレア大尉と共にケルディックへと急行した。
~同時刻・オーロックス砦~
メンフィル軍がケルディックに駐屯している領邦軍とぶつかる少し前、リフィア率いるメンフィル軍はオーロックス砦へと進軍し、その中にはメンフィル軍に復帰したリィンやリィンを支える為にメンフィル・エレボニア戦争の参戦に志願したセレーネ、そしてリフィアの専属侍女長であるエリゼもいた。
「さてと……そろそろ哨戒の時間だな。」
「ったく、どうせ哨戒した所で峡谷に正規軍がいるなんてありえないのにな。時間の無駄だぜ。」
メンフィル軍が進軍してくる少し前、峡谷の哨戒の為に砦から出て来た領邦軍の兵士達がそれぞれ雑談をしながら機甲兵や戦車に乗り込んでいた。
「ま、気持ちはわかるけどな。少なくても手配書の連中が全員捕まるまでは哨戒をする必要はあるだろうな。」
「手配書の連中って、以前ユーシス様と共にバリアハートに来た士官学院の連中だろ?学生如きがそんな大した事をできるとはとても思えな――――え。」
「?どうした。」
会話を途中で切り上げた仲間の様子を不思議に思った兵士は仲間に問いかけた。
「な、なななななな、な、何で奴等がこんな所に……!?」
「おい、一体どう――――なっ!?あ、あの紋章は……――――メンフィル帝国!?」
峡谷から進軍してくるメンフィル帝国軍を確認した領邦軍の兵士達は驚き
「こっちに進軍してくるという事は間違いなく奴等の狙いはこのオーロックス砦………!」
「クッ!?メンフィル帝国と戦争状態になったなんて話、聞いた事がないぞ!?こちら哨戒部隊!緊急事態発生!応答せよ――――!」
「応答せよ!応答せよ!クッ……何で通信が繋がらないんだ!?」
メンフィル軍の出現を砦内の兵士達に知らせようとした兵士達だったがメンフィルの破壊工作によってオーロックス砦やその周辺は通信妨害をされていた為、通信ができなかった。するとその時進軍してくるメンフィル軍から己に秘められている”鬼の力”を解放した状態のリィンが普通の人間の肉眼では絶対に見えない凄まじい速さで飛び出て、領邦軍が駆る機甲兵達へと詰め寄った。
「え――――」
「な――――」
「―――八葉一刀流。四の型・”紅葉切り”!」
機甲兵達に詰め寄ったリィンは神剣アイドスを抜刀して機甲兵達の背後へと駆け抜けると、無数の斬撃波が機甲兵達を襲った!
「ギャアアアアアァァァ―――ッ!?」
「ガアアアアアアァァァ――――ッ!?」
エレボニア帝国正規軍の主力である最新鋭の戦車―――”アハツェン”の砲弾をも防ぐ防御結界―――”リアクティブアーマー”を搭載している機甲兵であったが、対するリィンが持つ武器は古神が宿りし”神剣”。”神剣”に宿りし”神の力”に加えてリィンの”鬼の力”も上乗せされた神剣アイドスは”リアクティブアーマー”を易々と斬り裂き、リィンの剣技を受けた機甲兵達は斬撃を受けた部分が斬られて地面に落下すると共に絶命した領邦軍の兵士達の血が噴出し、そして兵士達の死体が地面に叩き落された!
「なあ……っ!?」
「な、生身で……それもただの剣で機甲兵を斬っただと!?」
「ば、”化物”……!」
「クッ……よくも俺達の仲間を……!撃て――――!」
生身で機甲兵を圧倒したリィンの強さに驚き、恐怖した戦車に乗っている領邦軍の兵士達はリィンを砲撃で殺する為に砲口をリィンへと向けたが
「―――させません!全てを塵と化せ―――超電磁砲―――――ッ!!」
「魔力よ、爆ぜよ―――――アウエラの導き!!」
「な………っ!?」
「うおおおおおっ!?」
リィンに続くように馬を駆ってメンフィル軍から飛び出てそれぞれ馬を止めたセレーネは両手から極太の雷光のエネルギーを、エリゼは片手に集束した純粋魔力の球体をそれぞれ戦車にぶつけ、それらを受けた戦車は大爆発を起こし、二人の魔術や爆発に巻き込まれた戦車の中にいた兵士達は絶命し
「二の型――――洸波斬!!」
「え―――――グアアアアアアアア―――――ッ!?」
リィンは神速の斬撃波を残りの戦車へと放ち、神剣によって放たれた事で莫大な魔力や神気が纏った斬撃波は戦車に乗っている兵士ごと真っ二つに斬り裂いた!
「………………」
哨戒部隊の全滅を確認したリィンは解放していた力を抑えて元の姿に戻り、神剣アイドスを鞘に収めた。
「兄様!シグルーン様も功を焦るなと仰っていたのに、いきなり突出した行動をしないでください!」
「心配をかけてすまない、エリゼ。だけど初戦となるこの一戦で手柄をたてる”足掛かり”として一番槍をこなしたかったんだ。」
「だからと言って、心臓に悪い行動は止めてください!私もそうですがセレーネも本当に心配したんですよ……!?」
「うっ………本当にすまない。もう2度とこんな事はしない。セレーネも心配をかけてしまって本当にすまなかった。」
怒りと心配のあまり涙まで流す程のエリゼに怒鳴られたリィンは唸り声を上げた後申し訳なさそうな表情で謝罪した後セレーネにも謝罪した。
「い、いえ………お兄様が無事で本当によかったです……」
一方謝罪されたセレーネは若干顔色を悪くしてリィンを見つめて微笑んだ。
「セレーネ?顔色が悪いようだけどどこか具合が………―――あ。セレーネ……その……」
セレーネの状態が気になったリィンだったがセレーネが視線を向けている方向――――セレーネの魔術によって破壊された戦車や戦車の中にいて絶命した兵士達に気づくと辛そうな表情でセレーネを見つめた。
「どうかお気になさらないでください……わたくしもいつかは通る道ですし………それにお兄様を支えるのが”パートナードラゴン”であるわたくしの役目なのですから、どうか気にしないでください……」
「セレーネ………」
「あ………」
初めて人を殺した事による罪悪感で顔色を悪くし、身体を震わせているセレーネを慰めるかのようにリィンはセレーネを優しく抱きしめた。
「セレーネ。エリゼもだけど俺も初めて人を殺した時はセレーネと同じで本当に辛かった……」
「え……軍人であるお兄様もですか……?」
「ああ。だからセレーネが今感じている感情は決して間違っているものじゃない。」
「お兄様…………はい、ありがとうございます。………もう、大丈夫です。」
「フフ………」
(うふふ、釣った魚にもちゃんと餌をあげるどころかアフターケアもするのがご主人様の良い所よね♪)
(ふふふ、同感です。さすがは”慈悲の大女神”をもたらしこんだご主人様ですね。)
(えっと………そこで私が出てくるのはちょっと間違っていると思うのだけど……)
(ア、アハハ………)
リィンの気遣いに感謝したセレーネはリィンから離れ、その様子をエリゼは微笑ましく見守り、リィンの身体の中でエリゼ同様ベルフェゴールと共に微笑ましく見守っていたリザイラの念話を聞いたアイドスは困った表情で指摘し、メサイアは苦笑していた。
「全く……戦場で乳繰り合う等リウイ達ですらした事がなかったぞ?」
するとその時メンフィル軍と共にリィン達の所へと到着したリフィアが呆れた表情でリィン達に指摘した。
「はう……」
「も、申し訳ございません、殿下。エレボニアとの初戦の戦だと言うのに御見苦しい所を見せてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
リフィアの指摘に対してセレーネは顔を真っ赤に染め、リィンは疲れた表情で謝罪した。
「フフ、嫉妬深い貴女もさすがに今回ばかりは目を瞑ってあげているようね。」
「べ、別に私は嫉妬深くありません!それに本当に嫉妬深かったら、セレーネ達の事を許していませんよ……」
一方微笑みながら指摘したシグルーンの指摘に対して頬を赤らめて反論したエリゼは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………リィン。お前が今回の戦争で手柄をたてたい理由はシグルーンより聞いてお前の気持ちも理解しているが、その事と今回の無茶な突出は別問題だ。今回は一番槍や哨戒部隊の殲滅の手柄もあるから目を瞑っておくが、以後先程のような無茶な行動は慎むように。」
「は、はい!」
そしてシグルーンの夫にしてリフィアの親衛隊の隊長であるゼルギウス・カドール将軍の注意にリィンは姿勢を正して答えた。
「それでは殿下、ご下知をお願いします。」
ゼルギウスはその場で跪いてリフィアに話しかけ、ゼルギウスが跪くとリィン達も続くように跪いて頭を下げた。
「うむ。その前に―――出番じゃ、ディアーネ!」
ゼルギウスの言葉に頷いたリフィアは自分の使い魔―――魔神ディアーネを召喚した。
「ディアーネよ、お主も存分に力を振るい、砦内に兵共を蹴散らせ!」
「ククク、当然皆殺しでよいのだな?」
リフィアの命令に対してディアーネは凶悪な笑みを浮かべて確認し
「よい。初戦となる今回の戦、アルバレア公に対する”見せしめと”して例え降伏してきてもクロイツェン領邦軍は絶対に許さぬ。」
「ハハハハハッ!そうこなくてはな!久方ぶりの”本物の戦”、楽しませてもらうぞ……!」
リフィアの答えを聞くと大声で笑って凶悪な笑みを浮かべてオーロックス砦を見つめた。
「――――これより”オーロックス砦制圧作戦”を開始する!エレボニアの愚か者共に余達メンフィルの民達に手を出せばどうなるか……そしてメンフィルの怒りを存分に思い知らせてやれ!兵は将をよく補佐せよ!そして将は兵を奮い立たせよ!誇り高きメンフィルの兵共よ、今こそメンフィルの……”闇夜の眷属”の力と怒り、存分に見せつけてやれ!何人たりとも、余に遅れを取ることは許さんっ!!」
「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」
リフィアの号令に対してリィン達を含めたメンフィル兵達は武器を掲げて雄たけびを上げて勇んだ!そしてリフィアは掲げていた杖をオーロックス砦へと向け
「全軍!突撃開始っ!」
大声で号令をかけた!
「オォォォオオォォォォォォオオオォォ――――――――ッッッ!!!!」
リフィアの号令の元、リフィア率いるメンフィル軍は辺りを轟かせる雄たけびを上げながら、地面には地響きをたてながらオーロックス砦へと突入した!
こうして……メンフィル・エレボニア戦争は開戦した―――――!
後書き
今回の話を読んで気づいたと思いますがリィン達、何気に生身で機甲兵や戦車をwwここからメンフィル無双の時間が終わるまでメンフィル陣営もそうですがリィン達も滅茶苦茶暴れまくる(敵を殺しまくる)話が続きますのでそれが嫌な人達はメンフィル無双の時間が終わるまで読まない方がいいと思います(まあ、この話を読んでいる人にそんな人はいないと思いますが)勿論メンフィル無双の時間の間に貴族連合の裏の協力者や上層部の一部もメンフィルやリィン達に殺されまくりますのでリィン達の活躍を楽しみにしている人達はその時までお待ちくださいwwなお今回のBGMは閃Ⅰの”Atrocious Raid”、閃Ⅱの”交戦”、碧の”To be continued!”のどれかで、リフィアが号令をかけた所からはVERITAの”覇道”でオーロックス砦制圧作戦時のBGM、戦闘BGMも”覇道”だと思ってください♪
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