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マイ「艦これ」(短編)

作者:白飛騨
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マイ「艦これ」(短編)「トモダチっぽい・中編」

 
前書き
中学生の私は艦娘を轟沈させた。最初は気に留めなかったのだが、その轟沈した艦娘が目の前に出現したことで事態は急展開する。 

 
「ごめんなさい……私がバカだったから」

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マイ「艦これ」(短編)
「トモダチっぽい・中編」
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「でも、どうする?」
ミサトは私に聞いてきた。

「夕立ちゃんを、このまま部室に残しとくわけにはいかないよね」

うん、それは分かる。私は自分の頭に手をやって思案しながら言った。
「私かミサトの家で預かるしかないよね」
「そうだね。もし警察に連絡したらさぁ、艦娘って兵器だから、きっと捕まって何されるか分からないよね」

 彼女の、その言葉に私はハッとした。
そうだ、夕立ちゃんは艦娘。つまり兵器そのものだ。下手に警察なんかに連絡したら、それこそ牢屋だけでは済まない。むしろ自衛隊出動されるか? 
 いやいやそれはヤバイ。私は思わず頭を振った。

艦娘って存在が珍しいから最悪、何処かの研究所でバラバラに解体されてしまうかも。それでは夕立ちゃんがあまりにも可哀想だ。
 だからといって私の親に話すのも抵抗がある。もし話してもきっと反対される。だからせめて落ち着くまで何処かで預かって貰うことは出来ないか?

 私はミサトに聞いた。
「ねえミサトの家で預かれない? ミサトん()部屋も多いよね」

 私の問い掛けに彼女は直ぐ否定した。
「ムリ、無理ぃ! ほらウチってさ、格式張ってるから、こういう常識を超えたような現象に弱いんだよね。はははは」

「はははは」
私も苦笑した。それは分かる。

 この状況……既に常軌を逸しているのは、お互い同じ条件だ。でも彼女はウチより由緒ある家系らしいから無理か。

「ぽい?」
二人の会話を聞いていた夕立ちゃんも不安そうな顔をしている

私は慌てて言った
「ごめん……でも大丈夫だよ夕立ちゃん! 私が何とかするから。絶対に」

これといったアテはない。でも、なぜかそんな言葉が自然に私の口から出た。

「大丈夫! アケミはねぇ結構、義理堅い少女だから」
ミサトは私の腕を取って夕立ちゃんに言う。義理堅いって……それ何の義理? よく分からないけど。

 でも、このまま夕立ちゃんを放置出来ない。もしかして、これってやっぱり私が夕立ちゃんを轟沈させた償いなの? 
分からないけど……何とかしなきゃ。

 私は手を伸ばして夕立ちゃんに声を掛けた。
「あの……夕立ちゃん立てる?」

彼女は私の方を見て少しニッコリした。
「うん……大丈夫ぽい」

そう言いながら棚に手をかけると、ゆっくり立ち上がる。意外に大丈夫そうだった。
「私の艤装が衝撃を吸収してくれたっぽい」
「へえ、武具みたいだね」

私が感心しているとミサトが言う。
「その艤装、どうする?」

部室の片隅においてある煙突。確かに大きくて、かさ張る。これを持って移動するのは大変だ。

「とりあえず防具の山に混ぜて積んでおけば何となくそれっぽくない?」
確かによく見ると、夕立ちゃんの艤装は煙突の天辺(てっぺん)が剣道の面のような格子状になっている。大きさもちょうど顔くらいだ。

「そうだね。しばらくは、それで誤魔化せるかな」
「うん、そうしよう」
私たちは笑った。

 夕立ちゃんは私を見て言った
「そういえば……貴女の名前を聞いてないっぽい」
「え?」

私がちょっと驚いているとミサトが言った
「私はミサト。この子はアケミって言うんだ。私と同じ剣道部なんだよ」

「剣道部?」
夕立ちゃんは口を少し尖らせるような表情をした。ああ、いつもの夕立ちゃんっぽい。

ミサトは言う。
「あーそっか。夕立ちゃんは軍人だから剣道は当たり前にやるんだよね?」

「ううん」
夕立ちゃんは頭を振る。

「あんまり、やらないって言うか。最近、ちょっとサボってるんだ。大淀さんによく注意されて……アハハ」
意外に元気な夕立ちゃん、冗談も通じるようだ。私たちも笑った。
部室は少し和やかな雰囲気になった。

ミサトが言う。
「取り敢えず、帰ろうか?」
「うん」
私たちは部室を片付けて、帰宅する準備をした。

「じゃあ、夕立ちゃんはアケミん家(ち)で決まりだよね?」
ミサトが念を押すように言う。

私は「うん、大丈夫」って応えた。
ホンとは心配だけど仕方がない。

 私たちは部室を出て廊下から玄関へ向かう。途中で先生に出会った。でも薄暗かったので
「早く帰れよ」「はーい」 ……というやり取りで済んだ。

 学校を出てしまえば、ひと安心だ。擬装を外した夕立ちゃんは、その制服のデザインで普通の女学生にしか見えない。
夕方の街は、薄暗いから彼女の派手な金髪も、さほど目立たない。
 怪我が心配だったけど夕立ちゃんの体力は、かなり回復したようだ。艦娘は兵士だから基礎体力が違うんだね。

「じゃあね」
「バイバイ」
ミサトと別れた私たちは、家へ向かった。
私の家までは数分で到着する。その道中も誰にも怪しまれることは無かった。

「ただいま」
「お帰り、今日は遅かったねえ」
母は奥から出てきて夕立ちゃんを見ると言った。

「何? 友だち?」
「うん、トモダチっぽい」
夕立ちゃんは明るく答える。

「……ぽい?」
母は一瞬、不思議そうな顔をした。私はちょっと焦った。

「何だ? こんな時間に」
ブツブツ言いながら父が出て来た。

だがステテコ姿の父は玄関に立つ長身の夕立ちゃんを見て絶句した。
「ゆ、夕立?」

夕立ちゃんの前にステテコ親父を晒した私は恥ずかしさのあまり彼に負けじと素っ頓狂な声を上げた。
「あれえ! 何でお父さんが夕立ちゃんを知ってるの?」

「えっと……」
父はドギマギしている。

「てことは、お父さんも提督だったんだ?」
まあオタクの兄の父親だから別に変でも無いだろう。

「そ、それよりだな、お前……何で?」
自分に矛先を向けさせまいとしているのか父は必死に夕立ちゃんを指差す。ステテコ姿なんだからいい加減引っ込んでくれたら良いのに。

「お父さんも何で、この子を知ってるの? ……金髪でハーフなの?」
母の着眼点はそこか。

「えっと……だな」
焦る父。

 すると珍しく兄が奥からのっそりと出てきた。案の定、彼もまた夕立ちゃんを見るなり直ぐに凍りついた。
その反応を見て母は言う。
「何?ケンジまで……結局、皆が知ってる子なの?」

母は全く状況が分かっていない。既に混乱しまくりの我が家の玄関口。
でも私は、この混乱に乗じて母に訴えた。
「お母さん、ちょっと込み入った事情があってさ! ……お願いっ! 今夜、この子うちに泊めたいんだけど。良いかな?」

一瞬、考え込んだ母は、父を見た。
腕組みしていた父親は
「そうだな、困っているなら仕方ないだろう」と言った。

その背後で兄も、しきりに頷いている。調子が良いな。
そんな二人を見た母は、夕方ちゃんを見て言った。
「貴女、晩ごはん、まだでしょう?」

「うん」
アニメ声だ。可愛い……二人の男子はクラクラしている。バカみたい。

「じゃあ、上がりなさい。一緒に、ご飯食べよう」
母の、この一言で決まった。二人の男子は妙にニヤけた顔になった。

 私はホッとした。母親が受け入れれば我が家という『関所』はオッケーだ。細かい問題は後から考えよう。
私の表情に安心したのか夕立ちゃんも微笑んでいる。至近距離で見るとやっぱり可愛いよな、夕立ちゃん。

 母は食事の準備があるのか、サッと引っ込んだ。二人の男子は、
「ホラ、上がって」と言いながら夕立ちゃんを手招きする。

「失礼するっぽい」
『おおお!』
夕立ちゃんの台詞に、二人の男子は感動している。そうか『……っぽい』っていうのが夕立ちゃんの口癖だな。艦これプレイをしていれば、よく聞くのだろう。

私は夕立ちゃんに手を貸す。
「大丈夫?」
「うん」

そのとき再び奥から戻ってきた母は、着替えを手にしていた。
「ちょっとあんた、どこかで転んだ?」

確かに、改めて玄関で見ると夕立ちゃんはあちこち擦り剥けているし、制服も所々破れたり汚れたりしている。
夕立ちゃんは戦闘していたんだもんね。

「取りあえず上だけでも、これに着替えて」
「有り難う」
母に着替えを手渡されて軽く頭を下げる夕立ちゃん。本当に金髪がきれいだな。

 その夜は久しぶりに明るい食卓になった。私は艦娘って何食べるんだろう? ……って思ったけど。見ていると普通に私たちと同じものを食べるようだ。
 なるほど……こうやって見ると夕立ちゃんは普通の女の子って感じだ。

 彼女を見て母親がふと言った。
「何だかね、あんた見てるとウチの一番上の女の子を思い出すんだよね」

私は一番上の姉を知らない。

「そうだな。そういえばそんな感じだな」
父親も同意する。その言葉に兄もまた、しきりに頷いていた。調子の良い兄だ。私が言わないと仏壇に手も合わせないくせに……本当に分かってるのかな?

「そうなんだ」
夕立ちゃんは自然に応対している。兄よりも反応が良い。何だろう……やっぱり、本当の『お姉さん』って感じがする。

「ご飯のあと、お風呂入る?」
『お風呂?』
夕立ちゃんと二人の男子が応える。

『あ……』
二人の男子が同時に口を開いた。滑稽だなあ、男子って。

何を言うのかと思って私と母親が見ていると互いに目配せをしてから、まずは父親が言う。
「えっとね、ウチのお風呂は普通の風呂なんだ」

『は?』
私と母親は最初、父が何を言わんとしているのか、何のことか、よく分からなかった。

それを察したのか兄が補足した。
「えっと、多分夕立さんは怪我してると思うんだけど。その怪我がすぐ治るとか、そういうドックみたいな風呂じゃないから」

兄にしては珍しく饒舌だ。いつもその調子で話してくれれば良いのに。
そんな説明を母は不思議そうに聞いている。

「あ、何となくそれ、ワカルっぽい」
夕立ちゃんは、ニコニコして二人の男子を指指した。

「銭湯みたいな所、行ったことアルっぽいんだ」
なるほど。艦娘も現実の『お風呂』の違いは分かっているようだ。

半分は理解したような母は私に言った。
「そうだ、せっかくだからあんた一緒に入ってあげな」

「……え?」
いきなり母親に振られた私は焦った。

でも、直ぐに悟った。
「うん」

 夕立ちゃんにとって普通の人間のお風呂っていうのもきっとあまり経験ないよね。
「分かった」

「ぽい?」
「うん……ぽい」
私は夕立ちゃんの反応に合わせてあげた。

 私は食事が終わってから夕立ちゃんを、お風呂に案内してあげた。何となく廊下をゾロゾロと、付いてきたがっている二人の男子だったが、母親が、しっかり目を光らせていた。心強いぞ、お母さん。

 脱衣所に入ると私は言った。
「ごめんね、きっとウチの風呂は狭いから」
「ううん、大丈夫っぽい」

ニコニコして軽く頭を振った夕立ちゃん。私が籠を出すと、そこで服を脱ぎ始める。
至近距離で見ると、やっぱりかわいくて美人だ。良いなあ……目の保養って言うのかな? 
男子じゃないけど、こうも美人だとクラクラしそうだ。私も、お風呂で逆上(のぼ)せないように気をつけよう。

「痛っ!」
上着を脱いだ彼女が小さく叫んだ。もしかしてと思ったけど、やっぱり彼女の体は、アザだらけだった。

「無理しないで、手伝ってあげようか?」
私が言うと夕立ちゃんは顔をこわばらせて言った。

「……ゴメンネ、ちょっと引っ張ってくれるっぽい?」
「うん」
 私は彼女の下着を脱ぐのを手伝ってあげた。彼女の白い肌が顕わになるにつれて、私は胸が痛くなって来た。

 その透き通るような白い肌が赤や紫のアザ、そして擦り傷だらけなのだ。
私は涙が溢れてきた。
「うっ」

「どうしたっぽい?」
私が泣き出したのを見て夕立ちゃんが豊かな胸を晒しながら聞いてくる。

 この光景は男子なら至福の時間なのだろうけど……その胸にまでアザがあるのを見て私は耐えられなくなった。
「ごめんなさい……私がバカだったから」

 私は居たたまれなくなった。出来れば逃げ出したいけど、夕立ちゃんを洗面所に置き去りにするわけにもいかない。

 すると夕立ちゃんが私の肩に手を置いた。
「心配しなくても良いっぽい」
「……」

何も返事が出来ない私に彼女は覗き込むようにして言った。
「ううん、アケミのこと全然、恨んでないっぽいから」

夕立ちゃんの優しさに私は涙が止まらなくなった。彼女は優しく言った。
「お風呂、入ろう? さめちゃうよ」
「うん」

多分、私よりは年上だと思う夕立ちゃん。何だかお姉さんが出来たような不思議な感覚だった。
慣れたら……夕立ちゃんを『お姉さん』って、呼びたいなと思った。
 
 

 
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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