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IS《インフィニット・ストラトス》~鉄と血と華と~

作者:白さん
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第六話 バルバトス

クラス代表決定戦当日、第三アリーナのピットにいつも通りチョコを食う三日月、側には箒が居る。


「まさかお前にも専用機があるとはな」


首から下げられているバルバトスを眺めながらに箒は言う。専用機は国の代表操縦者および代表候補生や企業に所属する人間に与えられるISであるが、三日月どの例にも属さない立ち位置に居る。


「オルコットはあれでも代表候補生、生半可では勝てんぞ。勝算はあるのか?」

「さあ」

「さあってお前……」


でもと付けたし


「やるからには勝つよ」

「……そうか」


チラリと箒は彼の背中に目線が行く。今の彼の格好は袖が長いタイプのISスーツ、そして背中部がむき出しの為、三つ並んだ端子が見える状況だ。それについて触れようとした矢先


『オーガス、時間だ』


そう千冬からアナウンスで告げられ


「そっか、じゃいこうか、バルバトス」


呼応するように展開されるバルバトス。


「行ってくる」

「ああ」


三日月はピットの出口に視線を移し


「三日月・オーガス、バルバトス、出るよ」







アリーナへ飛び立った三日月は、青いISを纏うセシリアと対峙する。


「逃げずに来ましたのね」

「逃げる理由が無いだろ」


背部のパックからメイスを右手で抜き、三日月は尚も言葉を続けるセシリアに耳を傾ける。


「貴方に最後のチャンスをあげますわ」

「?」

「いくら貴方が専用機をもってしても、私が一方的な勝利を得るのは自明の理。今ここで謝ると言うのなら、許してあげないこともなくってよ」

「別に謝る理由も無いよ、ごちゃごちゃ言ってないで始めよう」


何処まで嘗めた態度を、とセシリアを顔をしかめ


「ならこうしましょう、私が勝ったら今までの非礼を、地に伏せながら詫びてもらいましょう!」

「俺が勝ったらどうするの?」

「ふん、貴方が勝ったら考えてさしあげますわ」

「あっそ、じゃあさっさと終わらせようか」


スラスターにそれぞれ火を灯し三日月とバルバトスは飛翔する。それと同時にセシリアも手にした銃、スターライトmk-Ⅲを構え


「さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットと『ブルー・ティアーズ』の奏でる円舞曲(ワルツ)で!」


放たれる青いレーザーは三日月にまっすぐ向かう。それを身体を傾けることで回避しセシリア目掛けスラスターを更に吹かす。


「よく初見でかわしましたわね、これならどうです!」


引き金を何度か引き、レーザーを放つが一向にあたる気配は無い。気づけば既に三日月はメイスの間合いに入った。右手に持つメイスをそのまま左に薙ぐ。


「単調でしてよ!」


後方に飛ぶ事でメイスはかわされ、空振りに終わる……と思ったのもつかの間、薙いだ時の遠心力を生かし三日月はその場で回りセシリアを正面に捉えた瞬間


「当たれ」


何とメイスを勢い良く投擲する。


「きゃぁ!」


メイスはそのままブルーティアーズの非固定ユニットに直撃し、彼女はよろけすぐ三日月に視線を戻そうとするが


「居ない……!!」


センサーが反応を示したのは自分よりも上の位置。セシリアに当たり、上空へと弾かれたメイスを三日月はキャッチ。


「よっ」


下方にいるセシリアにメイスを振り下ろすが寸前の所で避けられ思わず舌を打つ。





「すごいですね、オーガス君。候補生にあそこまで戦えるなんて」

「ああ……」


彼の戦いをみて、彼女は違うことを考えていた。

三日月は“戦い慣れしすぎている”

千冬が真っ先に思ったのがこれだ。三日月は自身のIS、バルバトスの性能を良く理解している。スラスターの加速度、運動性能、武装の扱い方。どれも昨日やそこらで会得できるものではない。

それに初撃のレーザーの回避、普通であれば何発かレーザーの軌道を見ることで、回避等を行うもの。しかし三日月は“さも当然のように”最初のレーザーを回避した。


「(三夏があの手の武装に耐性があるのか、それとも……)」


阿頼耶識の為せる技か。

阿頼耶識とは本来、ナノマシンによる身体能力の向上を目的とした人間兵器を製造する計画のためのシステムであり、それがIS発表と同時に男女問わずにIS適正を得られる為の、ナノマシンを介して操縦者の脳神経と機体のコンピュータを直結させることで、脳内に空間認識を司る器官を疑似的に形成する為のものに変更された。あの反応は阿頼耶識によるものであろうと推測する。


「さて、此処までは良い流れだ。だが、ここからどうだろうな」


モニターの向こう、いよいよ余裕が見られなくなったセシリアの表情みてそう呟く千冬。





「もう!何なのですか!貴方は!」


こんな筈ではなかった、自分の脳内で行われたシュミレートであれば既に決着はつき、華々しい勝利を手にしていた。

しかし現実はどうだ?対戦相手の三日月は自分の攻撃を悉くかわし、更に一撃を加えてきた。悠長にやっている暇はない、此処は一気に決めるのが得策。そう踏んだセシリアは


「お行きなさい!!」


その言葉と同時に四つのユニットがブルーティアーズから切り離される。それはまるで意思をもったように宙を飛び、三日月の周囲に展開され


「もう手加減はしませんわ……!」


四方に位置するユニットからレーザーが放たれるが、既に回避行動に移っていた三日月。


「へぇ、こんなものもあるんだ」


“BT兵器”に驚いたような声を上げる三日月だが回避は尚も続いている。


「ここまでかわすとは!それにしても――」


何て動きだ、まるで生身の人間のような。ISでここまでの動きが出来るものか?彼女は更に表情を強張らせる。対する三日月が考えていること、先程のセシリアの言葉を借りるならば“単調”だ。


「うん、こいつの動きわかってきた」


一見不規則に動いているBT兵器だが、ある一定の行動パターンに基づいている。三日月は無意識にそれを見つけ回避をしているのだ。


「けど……こんなの動かせるなんて、あんた凄いな」


いきなりの発言にセシリアは顔を赤くする。


「な、なんですの!戦闘中に、馬鹿にしているんですか!?」

「してないよ、これを動かせるほどの力は俺には無い。俺には――」


ぐりんと方向をセシリアに変え


「こういうことしか出来ない」


真っ直ぐに進む三日月。BT兵器を彼の周囲に操作しそれぞれレーザーを撃つ。


「!?」


セシリアは目の前の光景に唖然とした。三日月の右方から迫るレーザーを、バルバトスの右肩部装甲を、次に左方から襲い来る青い閃光を左腕部装甲を。肩、腕の装甲をそれぞれパージすることで盾とし、避ける必要を無くすことで接近してきたのだ。


「(こんな……こんな戦法が……!)」


パージ戦術に目を奪われたセシリアは我に返った時にはメイスを振りかぶった三日月の姿が。


「(げ、迎撃を!)」


咄嗟にスターライトmk-Ⅲで迎え撃とうとしたが間に合う筈もない。バルバトスのメイスはそのまま彼女に振り下ろされた。
 
 

 
後書き
イオク様週ごとにやらかしてますね……レクスの動いているところ早く見たい作者でございます。 
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