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真田十勇士

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巻ノ七十四 最後の花見その三

「では我等もな」
「花見にですか」
「行きますか」
「そうしますか」
「そうしようぞ、そしてな」 
 そのうえでというのだ。
「楽しもう、ではな」
「はい、では」
「その様にして」
「そのうえで、ですな」
「皆で」
「酒も楽しもう」
 こう言った、多くの大名や武士、それに民達が花見に行こうと思った。誰もが春を待ち遠しく思った。しかし。
 その春が近付く夜にだ、幸村は将星が落ちるのを見た。そして十勇士達に言った。
「一つ大きな時代が終わるな」
「昨夜も星を見ておられましたが」
「では」
「またしてもですか」
「どなたかが」
「とてつもなく大きく金色に輝く星がだ」
 まさにというのだ。
「落ちようとしておる」
「とてつもなく大きな、ですか」
「星がですか」
「落ちる」
「そうだと」
「では」
「わかったな、御主達も」
 こう十勇士達に言った。
「どういうことか」
「はい、よく」
「そういうことですか」
「遂に、ですな」
「その時が来たのですな」
「うむ」
 その通りというのだ。
「これはな」
「左様ですか」
「ではいよいよですか」
「何かが起こる」
「そうなりますか」
「天下の泰平はじゃ」
 このこと自体はというと。
「大きく揺らぐ気配はなかった」
「それは、ですか」
「特に、ですか」
「そこまでは至らない」
「そうなのですか」
「星を見るとな」
 そう出ていたというのだ。
「だから安心していい様じゃが」
「しかし、ですな」
「それでもですか」
「遂にその時が来ましたか」
「まさに」
「近い、人は必ずじゃ」
 まさにというのだ。
「そうなるが」
「誰もがですな」
「生きてそしてそうなる」
「あの方も然り」
「それ故に」
「おそらくじゃが」
 幸村はこうも言った。
「あの方は出来るだけじゃ」
「まだ、ですな」
「生きていたかった」
「そう思われますな」
「その時も」
「間違いなくな、しかし人は必ずじゃ」
 誰が何をしてもというのだ。 
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