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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#43
  FAREWELL CAUSATIONⅢ~All Round Attack~




【1】


聖 光 爆 裂 弾(スターライト・ブレイカー)双 奏(カノン)ッッッッッ!!!!!』 
 並み居る強者の死闘が局面を迎える中、
スタンド使いに成り立ての少女、その渾心の流法(モード)
運命の灯火の如く時空を劈いた。
 目標地点は高層マンションの最上部で妖しく蠢く結界型燐子
“ピニオン” 一つ一つに大した能力(チカラ)はないが複数集まり
周密なネットワークを形成するコトにより
強大な汎用性を宿すに至る正しく必勝の儀。
 今回はソレを操るティリエル自身が主力として出てしまっているが
コレが完全なるサポート役、喩えば最大スタンド使いエンヤの後方支援等に徹すれば、
如何なるスタンド使い、フレイムヘイズ、 『組織』 や “兵団” で在ってすらも
打ち崩す事は不可能であろう。
 故にシンガポール首都を囲むこの幻想大結界、
コレが敵味方共に “アキレス腱”である事は云うまでもない。
 そしてその要所の一端にようやくメスが、
これまた敵味方共に “盲点” である
少女の想いで打ち砕かれる。





 ヴァッッッッッッッギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――
――――――――――――――――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!!




 敵の巣窟に入り込まないため、そして内部の人間を傷つけないために
発動させたスタンド流法は、特殊な波長で特化された波紋の如く壁面を伝わり、
標的である “ピニオン” のみを破壊せしめた。
 宙を舞う大輪の花弁と千切れた蔓、
それが吉田 一美の身に豪雨のように降り注ぐ前に
形は山吹色の火の粉となり、元の存在力に還元されて消えていった。
「まず一つ! お疲れさまでした、ライトちゃん」
 やるべき事をやり遂げた充足がそうさせるのか、
いつになく高揚した少女の声にスタンドが応える。
「でも、このままじゃ時間が掛かり過ぎてしまいますね。
大事なものの一つが壊されたら、当然あちら側も護ろうとする筈です。
あの花を壊すだけでも大変なのに、他の人と戦える余裕なんかありません」
 腰元で帯がリボン状に結ばれた民族衣装を揺らしながら、
スタンド使いの少女はフムムと一考する。
 以前の彼女にはない向上力と積極性、
承太郎に託されたという心情も拍車をかける。
 だが彼女のスタンドは 『近距離パワー型』
水と水の間を転 移(ジャンプ)する、或いは自ら恐竜に変貌し、
群れを率いて襲い掛かる能力ではないため目的の完遂は困難を極める。
 今までの彼女だったなら、大いなる困難を目の前に怯え上がり
「挑戦する事」 もしないまま出来ないと決めつけていただろう。
 ソレが 『真の失敗』 だという事実にも気づかないまま。
 だが今の彼女は違う、必死に賢明に、自分の状況と能力をみつめたまま
未知成る可能性を紡ぎだそうとしている。
 その勇気はまだ小さく吹けば消えてしまいそうな儚き存在の光ではあるが、
他の強者に劣らぬほど気高い。
 誰しも最初は弱き者、一番悪いのは “変わろうともせず”
口先だけで問題を先送りにし結局は何もしない事、
人間は精神に拠って形創られる存在、
その者の想い次第で、どれだけ愚劣にもどれだけ崇高にもなれる。
「このまま、もし二つ目三つ目を順調に破壊できたとしても、
状況はそれに比例して悪くなっていきますよね。
壊せば壊すほど相手の警戒心も強くなりますし、
最後の一つは何が何でも護ろうとする筈です。
だったら、“残り全てを同時に破壊出来ないでしょうか?” 」
 まだ一つ目だったら相手の危機感も高くない、
事実の確認とそれを実行している者を探し出そうとする位だろう。
だが順番に破壊していけば、(ピニオン) を防衛することに優先順位が挿げ替わる、
だから相手の目的意識がやや曖昧な今の内に全てを決定してしまう。
「ライトちゃん、私を抱えて、屋上まで跳べますか?」
 言い終わりとほぼ同時にスタンドがコクリと頷き、
紗衣の靡く細腕に少女を軽々と抱き上げついで跳躍する。
聖 光 の 運 命(スターライト・デスティニー)』 が背に持つ羽根は、
主に防御と攻撃補佐に用いる幻像で飛行能力はない、
だがそれでも 『近距離パワー型』 
華奢な少女を抱えての10数メートル程度の跳躍など造作もない。 
「……」
 全貌というわけにはいかないが一望できるシンガポールの街並み、
灼熱の戦場、絶え間ない轟音と振動、余波に過ぎないのに大気を震わす
それぞれの精神が空間を伝わってくるようだった。 
 コレから繰り出そうとする彼女の “策”
戦闘はほぼ無経験、ましてや承太郎やシャナのように
相手が強大なら強大なほど闘争心を燃え上がらせる
精神など持たない故に辿り着いた発想。
 幻想大結界、その要石 “ピニオン” の、四機同時一斉破壊。
 ソレを実行する術は、先刻の流法(モード)
聖 光 爆 裂 弾(スターライト・ブレイカー)双 奏(カノン)』 にヒントを得たモノであるが、
訓練も考察も行っていない術をいきなり実戦で投入するのは、論理の破綻した無謀。
 しかしそれを実践出来る覚悟と勇気無くして 『スタンド使い』 に在らず、
能力に縛られ振り回される、三流以下の遣い手に他ならない。
 熱く冷たい戦風が恐怖感を煽る眼下の光景、
考えたくなくとも策の失敗、直上からの垂直落下を否応なく想起させる。
「う、うぅ~」
 視たくないのに目を背けられない、自身で決断を下した事など殆どない
今までの自分が震えとなり踏み出す一歩を後退させる。
「うぅ~、こ、怖くない! 怖くないったら怖くないですッ!」
 虚勢とも云えぬ強がりで無理矢理自身を奮起させた彼女は、
半ば破れかぶれの心情でスタンドを促す。
「ヤってください! ライトちゃん!」
 震える足下を抑えられなくとも、少女は決意の表情と共に叫ぶ。
 怖くても、自信がなくても、ヤってみなきゃ何も始まらない、
失敗さえ出来ないし過ちに気づく事もない。
「痛み」 を怖れて、何も出来なかった、
しようともしなかった今までの自分。
 もう戻らない、戻れない、戻りたくない。
 途中で投げ出す所か、本当の気持ちすら偽って歩き出せない、
『ゼロの自分』 には。
 ずっと、 “待っていた”
己の本心、願望を叶える事の出来る、相応しき 『時』 が到来する事を。
 そんな 「日」 は来ない事を薄々解っていながら、
今日を歩き始めない者に「明日」 は来ないと心の何処かで承知していながら。
 もうそんなのはイヤだ。スタンド能力が在ろうと無かろうと、
自分の行動に責任も持てない人間になるのはイヤだ。
 何のために此処にいるのか? 何のために此処に来たのか?
 そして自分には一体何が出来てこれからどうしたいのか?
 答えは 「決断」 の中に在る。
 承太郎も、エリザベスも、自分自身のスタンドさえも、
そのコトだけは絶対に教えてくれない。
 だから――!    
聖 光 の 運 命(スターライト・デスティニー)ッッ!!』
 決意の喊声と共にスタンドが動く、(のうりょく) を撃ち出すポイントは
少女の足下、その僅か上、衝撃と衝撃がギリギリ接触するように。
 具現透化する瑠璃の光、表面に記載され秒 読 み(カウントダウン)に入る数字は
30と29、打ち出された差を引くとほぼ同時に炸裂する計算になる。
 取りも直さずスタンドが反転、少女を右腕に抱えたままその足裏を、
時限式の爆弾に等しき光の上に、陸上競技のスターティング・ブロックのように乗せる、
その(ケリ)足全体に集束したスタンドパワーを宿しながら。
(スベテを、三分以内に終わらせます。
一体ずつ壊せばすぐに見つかってしまいますが、
“四体同時に壊せば” 誰がヤったか解りません。
寧ろ一人じゃない、複数の人間が動いたと勘違いさせられる筈です。
コレがいま私に出来る事、私にしか出来ない事、
折角此処まで連れて来てもらったのに、足手まといになるのだけは絶対にイヤですッ!)
スターライト(S・L)ブレイカー()カノン()』 の応用、
相乗炸裂する累積衝撃破に合わせて足裏のパワーも爆散、
つまり “三重” のスタンド効果により目的の場所へと
「瞬間的」 に(厳密には秒間だが)移動するのが少女の紡ぎだした作戦。
 空間を削り取る能力のように、広大射程の何処にでも出せるスタンドのように、
流法(モード)の破壊力を 「推進力」 に換えて、
一挙に距離を縮め残りのピニオンを全て破壊する算段。
 だがあくまで素人考え、炸裂飛翔のタイミングをミスれば
“最良でも” 片足が根刮ぎ吹き飛び、更に軌道計算を誤れば
鉄筋ビルに超高速で真正面から激突するコトになる。
 しかしそれは避けようのないリスク、
戦闘の経験が皆無なら、それでも成果を欲するなら、
自らの傷や犠牲を覚悟して全身全霊、
尚かつ 『運』 という不条理にも身を委ねる他はない。
 他の者が血を流して、何度も何度も死線を潜り抜けてようやく得られる能力(けいけん)
それら一切を無視して小賢しいだけで、
大した代償も支払う覚悟もなく戦果を上がられるほど、
真実(ほんとう)の 「戦場」 は甘くない、
寧ろソレに対する冒涜と云えるだろう。
 ただ、その絶望的不利を打開せしめるのが
弱者の搾り出す 『勇気』
何の能力も持たずとも、端から勝算などないとしても、
その小さな輝きは絶対的強者の圧威にも劣る事はない。
 それが殆ど唯一、無力な彼女に残された武器、
必要なのは、窮地に際しては鋭い等という都合の良い妄想ではないのだ。 
(方向は、コレで良い筈です。
私じゃなくてライトちゃんの 「眼」 は、スゴク正確ですから。
アノ “花” は大きくて目立ちますから概算で合ってればそれでいい、
後はどれだけ(はや)く行動出来るか、
私の能力(チカラ)が持つかどうかです――!)
 無論不確定要素は無数に有る、
ピニオン直近に燐子の罠が仕掛けられている事は充分考えられるし、
ソレを守護する者が(現在交戦中だとしても)優先順位を替えて
自分に襲い掛かってくるかもしれない。
 だがIfの話をしていたら一歩も動き出せない、
戦場での 「ちょっと」 は処刑前のそれと変わらない。
 だから――
「行きますッ!」
 ビル屋上の高層から、少女はリスクのある 「後」 ではなく
しっかりと 『前』 を見据えた。
 元より時限式の能力で在るため躊躇する暇はない、
だが恐怖に囚われず目的だけに集中し完遂しようとする彼女の精神が、
スタンドを機動を通常より研ぎ澄ました。





“踏み出さなければ何も変わらない、しかし一歩踏み出せば、確実に何かが変わる”





『エイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァ―――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!』
 叫んだのは少女かスタンドか、
路面に走る亀裂と破片すら吹き飛ばして能力が双乗する。
その同時より微細にズレ、刹那の断層の中で
殆ど絶妙にケリ足のスタンドパワーが爆裂して
キラメキを放ちながら超高速移動への還元を実存足らしめる。
 瞳には映らない聖光の流星、運命の未来航跡、
少女とスタンドは、戦場全域を遍く駆け巡る 『特異点』 と成り姿を消した。







【2】


『LUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUGAAAAAAAAAAAAA
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――――――
――――――――――――――――――――ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!』
 水の中とはいえ、手負いの相手に不覚を取る、姑息な術に危うく討たれかける、
単純な戦闘力なら並みいる王を凌ぐ獅子の怒りは頂点に達していた。
 凄爪が走行中のまま止まった大型車を三つに引き割いて弾き飛ばす、
鬣が唸りをあげる鋼の突貫が高層ビル中階を突き抜けて倒壊させる、
道路中央で放った吼斬波が視界360°全てのモノをズタズタにする。
 しかし少女は姿を現さない、猛り狂う獣王を嘲笑うように存在の気配を消す。
 真正面から激突すればソラトの圧勝は間違いない、
しかし広大な戦闘範囲、その何れかに潜んだ “蟻” を見つけだすのは
百獣の王といえど至難の業。
『LUGAAAッッ!! GULUAAAッッ!! 
GALUAAAAAAAAッッッッ!!!!』
 破壊の化身にとってその破壊する対象が無ければ存在する意味はない。
その根元的な理念が必要以上にソラトの怒りを煽っていると視て間違いない。
スタンドバトルならば恒常的に流れている風靡、
圧倒的なパワー、スピード、殺傷能力、
それはソレで優位なモノと云えるだろうが
決して絶対的戦力差にはならないのだ。
「お兄様! 落ち着いてくださいませ! 
状況はこちらが優位だからこそ姿を消した!
熱くなったら相手の思うつぼですわッ!」
 大樹を此処まで移動させたティリエルが幹の中から叫ぶ、
しかし殺戮の想念で燃え滾っているソラトの心中にその声は届かない。
(ダメだ、聴こえていない、無理もありませんわ。
吸 血 鬼(ブルート・ザ・オガー)” の真の能力は
溜め込んで凝縮させた絶大な力を器に注ぎ込んで
変貌させるが故に理性は失われる。
相手と対峙している状態なら強大な威力を発揮しますが、
索敵しながらの潜行戦となると顕わになった存在力により
その位置が一目瞭然ですわ)
 花飾の爪を口唇に()み、遺憾を抑える少女。
 こうなった以上自分がなんとかするしかない、
荒れ狂うソラトを逆に利用し全体的な戦局に活かす一手を。
( “魔術師” の方は、一端捨て置きますか? 
このまま無理に追跡して時間とお兄様の力を消耗するよりも
他の戦いに介入して一挙に殲滅してしまう事も――
そう、何もこの戦いに固執する必要はないのですわ。
『星の白金』 が討たれれば、頼まずとも姿を現すに決まってますもの……!)
 一部を除きほぼ全員の力が拮抗、
否、どう考えてもDIO側が優勢なこの戦況に於いて、
微力の加勢でも致命的な極め手となる。
ましてやソレが怒りに燃える血染めの獅子で在ったなら、
『最強の波紋使い』 エリザベスと雖も危うい。
(決まりましたわ! 魔術師を餌にお兄様を別の戦場へ。
他の皆様には申し訳ありませんがこの戦いの功、
私達愛染兄妹の “総取り” とさせて戴きますわッ!)
 並の者は 「弱点」 が有ると如何にしてソレを是正、
克服する事にばかり頭が行く。
だがそう簡単に消えないからこそ 「弱点」 なのであり
モノによっては費やす時間がただの徒労にもなりかねない。
 ならば弱点は放置したままソレを補って余りある
長所を活かした方が遙かに合理的。
この場合はソラトの怒りの矛先を別のベクトルに、
理性が崩壊している今のソラトにとって攻撃する対象は
シャナでなくてもイイ。
跡形も無く破壊(ガジ)り尽くせるなら誰だって構わないのだ。
「お兄様! 相手の居場所が解りましたわ! 私の誘導に」
 瞬間、紅い軌跡がティリエルの周囲へ気流のように棚引いた。
「え!?」
 継いで熱源を感知する毒蛇の如く、弧を描いて無数の火刃が襲い掛かる。
「キャアアアアアアアアアアアアッッ!!」
 出現は繊細に、旋撃は強烈に、少女の躰全方位に突き立つ遠隔操作能力。
 速度が音速に充たなかったため自律(オート)で展開した蔓が
ボロボロになりつつも主を護ったが、完全に虚を突かれた事実は
完勝の確信を得た少女に大いなる衝撃となって心奥に響いた。
「一体、ナニが!? お兄様ッ!」
 分析する暇もなく、荒れ狂うソラトの周囲にも紅い軌跡が棚引く。
『LUGAUッッ!!』
 百獣の野性勘、微細な空気の変化すら感じ取れるソラトにとっては、
近距離パワーでもない遠隔操作のスピードなど止まっているも同然。
ブレる残像にも触れさせない体捌きで、
二本足で屹立したまま電光の如く身を躱す。
 だがそこに――ッ!
 古の聖少女を無慈悲に断裁した火刑台の如き高十字架(ハイクロス)
回避地点を精密に探知して猛然と迫っていた。
『GULUAAAッッ!!』
 通常不意を突かれた獣は、事態を認識出来ないため棒立ちとなるか
本能的に後退るものだがそこは紅世が屈指の獅子王、
逆に真正面から受け止め突進のエネルギーごとクロスを抱え込み
装甲の表面を融解させながらも惨苦の威力(チカラ)を瞬時に練る。
『GALUAAAAAAAAAAAッッッッ!!!!』
 咆吼烈閃、装甲の防御に頼らず獅子の王は裡に宿る狂暴な殺傷力のみで
灼熱の高十字架(ハイクロス)をバラバラに引き裂いた。
 鎧の損傷も僅か本体へのダメージは皆無、
己に向けられた奇襲を力のみで堂々と完殺せしめた。
 元より獣が顕力(チカラ)の存在変貌、
その本質が剥き出しになっている状態なので
触れる事すらヤバい現在(いま)の形態、
超低温のスタンドが如く、無尽蔵の緑黴(カビ)をバラ撒く能力が如く。
 ソレを十二分に認識した視線が建物の死角、
外部に設置された螺旋階段より、その牙が届かない、
尚かつ姿を覚られないギリギリの位置で閃を放つ。
 仄かな火の粉、後には音も残らない、
微細な気流の変化すらも捉える獅子の感覚と云えど、
ここまで距離が離れていると感知は不可能。
 吹き抜ける戦風に紛れながら、既に遠隔操作の自在法が込められた
無数の鋭刃(エッジ)が相手の存在力を感知して静寂に接近、
目標直近で一度弧を描いて幻惑した後、裂けた蜂巣(ほうそう)が如き狂暴さで襲い掛かる。
『GAッ!? GULULULULULULULULULULULUッッ!!』
 全方位から突き立つ炎の鋭刃、高架破砕の硬直と機が同調したため、
殆ど僥倖に旋撃が全被弾(フルヒット)する。
 一つ一つの殺傷力はさほどでないとしても多段着撃、
内部まで届かずとも獅子の装甲が破損する。 
 有効な攻撃とは、何も大規模破壊、一撃必殺を宿す能力とは限らない。
寧ろ少ない消耗で確実に成果を上げられるモノの方が
常に相対流動する戦闘では有益かもしれない。
 本来手業にて放つ打剣、それを己の周囲に展開させ
遠隔操作を纏わしつつ 「自動追跡」 で標的を穿つ広範囲能力。
 裂空爛舞。静寂の叢閃。
蓮華(レンカ)凛駆(リンク)』  
遣い手-空条 シャナ
破壊力-B スピード-B 射程距離-半径100メートル
持続力-C 精密動作性-B 成長性-A






――28日前、日本。
「やはり無茶だ! シャナ! 刀を使わず
ボクの 『エメラルド・スプラッシュ』を迎え撃つなんてッ!」
 紅い陽炎に霞む孤立世界、この世ならざる異能者以外は
誰一人認識できぬ隔離された空間で、
翡翠の美男子の眼前に紅蓮の美少女が伏していた。
 長い不況と無茶な上方修正の煽りを受けて経営が頓挫し、
解体もままならない状態で放逐されたデパート内部、
夜の逢瀬としては、些か以上に似つかしくない場所。
「無茶だから、ヤるのよ……! 
中途半端な戦闘訓練なんて、何もしてないのと一緒!
木の枝で何万回打ち合ったって、真剣相手じゃ何の役にも立たない!
子供の遊びじゃないってコトはおまえだって解るでしょッ!」
「し、しかし……!」
 その異能(スタンド)故に、幼き頃より他者の想像を絶する修羅場を生き抜いてきた
中性の少年、しかしその孤独で冷たい戦いの中でも失われず磨かれてきた人間性が
一方的に少女を打ち据える現状を躊躇わせる。
「悔しいけど、 『遠隔系能力』 操作、放出の技術はおまえの方が上、
一流のフレイムヘイズ、紅世の王にもそうはいない。
だからおまえにしか頼めないのよ! 手ェ抜かないで!
本当に撃ち殺す気で掛かってきてくれないと意味がないッ!」
 スタンドバトルの相対汎用性、
フレイムヘイズの戦いでは必要なかったが、
コレから先の戦いは、アノ男 『DIO』 のように
大刀、焔儀、今まで培ってきたモノが
まるで通用しない能力者と遭遇する可能性が在る。
 その少女の目算は概ね正解、
『幻想の白蛇』 『荒天の使徒』
強さには、際限なく “上” が在る。
 故にシャナは承太郎(彼もまた同様であるが)にも秘したまま
己が能力の増産に努めた。
通常の戦闘では役に立たないとしても、
想定外の事態に対して常に備えを怠らないコト、
ソレが窮地に於いて想わぬ力を発揮する。
 血を流し、痛みに打たれ、それを厭と云うほど繰り返し
死に物狂いでようやく修得出来る能力(チカラ)
 最終的には高速、高威力、変則機動で全方位から襲い掛かる
翡翠結晶を防ぎ切り尚かつ反撃にも転じる事を可能とした霊妙なる秘技。
『遠隔自動操作能力』 
 スタンドではない故に瞬間的には出せず尋常ならざる集中力と制御技術を要するが、
スタンドではない故に距離の法則に捕らわれずまた、
自動追跡の代償となる動作の単調さも補完される。
 姿を眩まし視えない位置から一方的に攻撃を加えるコトの出来る能力、
一撃で仕留めるような(わざ)ではないが徐々に肉体を老化させるスタンドに同じく、
本体を発見されなければその効果は絶大なモノとなる。
 ビルとビルの隙間、高層の影を巧妙に移動しながら
少女の周囲で転回する火刃が次々と目標に向けて自動追尾を開始する。
(本当は “アノ男” に喰らわせてやる予定だった秘密兵器(とっておき)だけど、
特別におまえ達にクレてヤるわッ! 愛染の双児ッッ!!)
 真正面からの交戦など、今の自分では
ソラトは疎かティリエルにでさえも粉と砕かれる。
 故に一定の距離を保ち、付かず離れず能力により確実に存在を削いでいく持久戦。
 大刀にて果敢に挑む今までのシャナには想像もつかなかった戦法であるが、
窮地を窮地と考えない、追い詰められてこそ初めて発現する
未曾有の精神があるのを認識したコトによる思考の転換。
 今、少女は確実に、戦士から真の “魔術師” へと変貌を遂げつつ在った。
 ソレに呼応するが如く、彼女の裡で眠る原初の炎を暗示する
『分身』 が、一度大きく胎動した。
 覚醒の刻、迫る。
 二枚のタロットカード、その象徴が紡ぐ運命。
 時の根源に到達した『流星』 を追いかけ、
灼熱の “魔術師” の炎が存在を換える!





 ド・グ・ン……ッッ!!





 
 

 
後書き


はいどうもこんにちは。
ストックが残り少ないから出し渋ってるとかそういうコトなんですよ('A`)
まぁもう一山二山ありますがこの後トンでもねーのが控えちゃってて・・・・orz
荒木先生方式も使いこなせないドアフォが使うとこうなるという良い事例です。
しかしまぁ今回女の子しか戦ってないんでボヤきますと、
前に言った通りワタシは女の子が戦う話は殆ど読まないのですよ。
(露出狂みたいに制服で蹴り出しまくるのは更に無理・・・・)
で、なんでそうなるかというとまぁ色々ありますが女の子の「優しさ」
みたいのが感じられない話は基本好きじゃないのですネ。
(戦いがメインの話だからある程度は仕方ないけど
頭イってる女が多過ぎ、あのジャンル)
例外として「焔の眼」と「くノ一魔宝伝」とあげましたが
この二つは主人公の女の子が普通に「良い子」だからです。
ジョジョの徐倫とルーシーを足して2で割ったカンジというと
解り易いと想います←(解るか!)
あとあげ忘れてましたが『影技(シャドウ・スキル)』という作品もそうですネ。
(主人公、エレだよな?アレ・・・・('A`))
本来戦いというのは「男の世界」なので、女の子が男のように振る舞っても
決して魅力的にはならず、寧ろ共感出来ない分野卑や粗暴さばかりが
際立ってしまいデメリットしか発生しないのですね。
(男なら範馬 勇次郎みたいにヤっちゃってもいいのですがw)
だから逆説的ですがそういう(バトルモノ)作品こそ、
女の子は普通以上に女の子らしくしないと面白くなくなってしまうのです。
(「優しさ」をちゃんと設定に組み込まないと、
みんな初期の結花子嬢のようになってしまい、
ラスボス(悪役)が主人公じゃ作品として成立しません)
萌え系や絵柄重視の作品に特に顕著にみられますが
(だからキライなんだよ・・・・('A`))
女の子のキャラは「可愛さ」以上に「優しさ」に気を配って欲しいものですネ。
それは男は絶対勝てないモノですから。
ソレでは。ノシ
 
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