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レインボークラウン

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第三百九十五話

              第三百九十五話  炭酸は
 赤音は自分の家の冷蔵庫の中にビールを見た、それで台所で夕食の用意をしていた母にこう尋ねた。
「ビールお父さんが飲むの?」
「そうよ」
 その通りだとだ、母も答える。
「お父さん好きだから」
「そうなのね」
「ええ、飲んだら駄目よ」
「飲まないわよ」 
 すぐにだ、赤音は母に言った。
「泡じゃない、ビールって」
「赤音は昔から泡出る飲みもの好きじゃないわね」
「どうもね」
 微妙な顔になって母に答えた。
「そっちはなの」
「好きじゃなくて」
「そう、それでね」 
 だからだというのだ。
「別にいいわ」
「飲めてもなの」
「ビールはね」
「サイダーとかコーラもよね」
「何かお口の中でしゅわしゅわした感触が」
 それがというのだ。
「お好み焼きとかたこ焼きとかと一緒じゃないと」
「飲まないのね」
「ええ、逆にお好み焼きとかだとね」
「サイダーとかコーラなのね」
「そういうのじゃないと」
「嫌なのね」
「どうもね」
 こう母に話した。
「私としては」
「こだわりっていうか組み合わせね」
「何かそういうのと合わない?」 
 サイダーやコーラといった炭酸飲料はというのだ、赤音は母に結構真剣な顔で尋ねた。
「どうも」
「それはね」
「お母さんもそう思うわね」
「お母さんもお好み焼きとかにはビールだから」
 それでというのだ。
「そっちね」
「そうよね」
「けれどあんたはまた極端ね」
「だって普段炭酸飲料飲んでも」
 お好み焼きやたこ焼きを食べる時は別として、というのだ。
「シュワシュワした感触だけでね」
「好きじゃないのね」46
「どうもね」
「そうした嗜好ってことね」
 母も赤音の言葉に頷いた、とにかく赤音は冷蔵庫の中のビールに興味を示さなかった。目には見えていてもだ。


第三百九十五話   完


                       2016・11・18 
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