聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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759部分:第百十六話 老いていぬ者その二
第百十六話 老いていぬ者その二
「中々よい場所じゃな」
「私の中にある玄室だ」
「アーレスの宮殿ではなくじゃな」
「私の中、そして貴様の中にある」
彼の中にもだというのだ。
「それがここだ」
「言った通りじゃな」
「私は神だ。言葉に偽りを含ませることはしない」
今度はその誇りも見せたのであった、
「決してな」
「誇り高いことも前も変わらぬか」
「変えるつもりもない。貴様に勝利を収めるに相応しいだけの誇りを失うことはしない」
「わしに勝つつもりだからというのか」
「貴様は神を退けた」
また先の聖戦のことを言ってみせたのである。
「それだけの相手を倒すにはだ」
「相応しいものをというのじゃな」
「そういうことだ。これでわかったな」
「神だけはあるのう。むしろ」
「むしろ?」
「こう言っては何じゃが」
こう前置きしての今の言葉であった。
「オリンポスの神々よりも誇り高いのかも知れぬな」
「我等は疎外された神」
不意にキュドイモスの言葉にあるものが宿った。
「そうだ、疎外された神なのだ」
「疎外というのじゃな」
「オリンポスの神々は我等を認めなかった」
今も尚忘れてはいないことだった。彼にとっては、いやアーレスに仕える者達にとっては決して忘れることのできない忌々しい記憶である。
それを口にしてだった。キュドイモスもその顔に苦いものを見せていたのである。そのうえでの言葉であった。
「アーレス様も我々も」
「そのこと。忘れられぬか」
「忘れる筈がない。しかしだからこそだ」
「誇りは忘れぬか」
「決してな」
まさにそうだというのであった。
「忘れることはない」
「御主達の傷は癒せぬか」
「癒すつもりはない。忘れぬ為に」
キュドイモスの目に炎が宿っていた。身動きはしないがその目に宿らせてだ。そしてそのうえで小宇宙も燃え上がらせているのだった。
「何時の日かオリンポスの玉座にアーレス様が座られる為に」
「野心ではないな」
「違うな。当然のことだ」
それは当然だというのである。
「アーレス様にとってはだ」
「天帝ゼウスとその妃ヘラの唯一の子」
「言わばオリンポスの皇子であられる筈なのだ」
このことを強く意識していた。しかしなのだ。
「だが、誰もがだ」
「アーレスを認めなかったのう」
「無念だ、これ以上までになくな」
キュドイモスははっきりと歯噛みしていた。
「それを晴らす為にもだ」
「忘れぬか」
「忘れずにだ。そして誇りも捨てることはない」
「残念なことじゃ」
ここで童虎はこうしたことを言ったのだ。
「実にのう」
「残念だと?」
「そうじゃ。そこまでの誇りを持ちながら恨みを忘れぬ」
彼が言うのはこれだった。恨みについてなのだ。
「それが残念じゃ」
「恨みは戦いを呼ぶ」
しかしキュドイモスはその恨みを肯定してみせた。この辺りにアテナに仕える者とアーレスに仕える者の違いが出ていた。それもはっきりとだ。
「ならばそれはいいことだ」
「戦いの為の戦いじゃな」
「そうだ。全てを戦いの中に置く」
語るキュドイモスの目は真剣なものだった。
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