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バーベキュー

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第一章

                 バーベキュー
 北野萌葉はこの日家族でキャンプに来ていた。夏の暑い日差しは川のせせらぎと水がもたら涼しさそして森の木陰でかなり緩められている。
 そnキャンプ場に入りだ、萌葉は笑顔で言った。
「涼しいね」
「ははは、そうだろ」
「山の中は涼しいのよ」
 笑顔で言った萌葉に彼女の両親が答えた。
「だから来たんだ」
「街は本当に暑いから」
「たまにはこうして涼しい場所に来てな」
「自然と一緒にいるのもいいのよ」
「そうなのね、何かね」
 萌葉はそのあどけない顔で両親がテントを立てているのを見ながら周りを見回した。見れば彼女の家の様な家族が周りに幾つかあってやはりテントを立てていたり弁当を食べている。
「他の人達もいるね」
「そうだぞ、ここはな」
 父の耕太が端正な逞しい顔で娘に答えた。黒髪を左右で三つ編みにして大きな目を持つあどけない顔の娘を見て。
「キャンプ場からな」
「キャンプ場って私達だけがいるんじゃないのね」
「来た人達が楽しむ場所なんだ」
「ふうん、そうなの」
「そうだ、自然の中でな」
「離れた場所にお風呂があってね」
 母の円香は自分によく似た顔立ちの娘の服を見ていた、彼女と夫はラフなシャツとジーンズだが娘は丈の短い水玉のワンピースのスカートだ。尚顔立ちは似ているが円香は髪の毛を脱色してショートにしている。
「おトイレもあるから」
「そうなの」
「おトイレに行きたくなったら一緒に行きましょう」
「ママと?」
「一人じゃ迷子になるし」
 円香は娘にさらに話した、手慣れた感じで夫と二人でテントを立てながら。
「ここは山の中だから蛇とか出るから」
「えっ、蛇出るの?」
「蜂とか百足もね」
「私全部嫌い」
 萌葉は蛇や蜂がいると聞いて恐る顔で言った。
「だって皆気持ち悪いし」
「毒もあるからよね」
「うん」
 実際にとだ、萌葉は母に答えた。
「だから」
「そうでしょ、だったらね」
「一人でいたら危ないから」
「そう、おトイレに行く時はね」
「ママと一緒になの」
「お風呂の時もよ」
「お風呂は温泉だからな」 
 耕太は娘に笑ってだ、風呂のことも話した。
「そちらも楽しめるからな」
「うん、お風呂は好きだから」
「お風呂の時もママと一緒よ」
 円香は娘にまた言った、近くの川かわのせせらぎが心地よい。テントは緑の上にあるがすぐ近くは川原で白や青の石達がある。
「いいわね」
「うん、ママと一緒よね」
「一緒じゃないとね」
 若し一人ならとだ、円香は笑顔だが声はあえて怖い感じにして言った。
「蛇や蜂に襲われたらどうしようもないわよ」
「うん、気をつけるわ」
 しっかりとした声でだ、萌葉は母親に答えた。
「そうするわね」
「そうしてね。あと帽子も忘れないで」
 ここでだ、円香は麦わら帽子を出した。そうして。
 娘の頭に帽子を被せてだ、それからまた言った。
「帽子も」
「夏だからよね」
「ちゃんと被ってね」
「おっと、そうだったわ」
 耕太も妻の言葉に気付いてだ、キャップ帽を取り出して被った。妻もそうしたのを見てからあらためて言った。
「俺達もな」
「ちゃんとしないとね」
「日射病になるからな」
「そうよね」
「萌葉に言うよりもな」
「自分達がちゃんとしないと」
 親である自分達がというのだ。
「それからだな」
「本当にね」
「さて、テントを立てたら」
「山の中見て回りましょう」
「萌葉と三人でな」
「そうしましょう」
 キャンプ場がある山の中をというのだ、そして実際にだった。 
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