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真田十勇士

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巻ノ七十 破滅のはじまりその十

「十万石程度ではな」
「はい、徳川家ならともかく」
「所詮十万石じゃ」
 その程度ならばというのだ。
「太閤様にしてみればどうということはない」
「だからですな」
「そこまではするな、しかし」
「はい、関白様はです」
 幸村は昌幸に強い声で言った、申し出る様にして。
「それがしを認めて下さいました」
「そうじゃな」
「人としてです」
「己を認めた者は見捨てたくない」
「そう思いまする」
「だからじゃな」
「はい、出来れば」 
 幸村は必死にだ、昌幸に言った。
「そう考えています」
「そう言うと思っておったわ、ではな」
「それではですか」
「何かあったら言え」
「では」
「わしがこの頭を使ってじゃ」
 そしてというのだった、昌幸は幸村に笑って話した。
「家を守る」
「そうして下さるのですか」
「何、確かに太閤様から見れば吹けば飛ぶ様な家じゃが」
 それでもというのだ。
「護ることは出来る」
「それでは」
「存分にやれ、しかし太閤様は切れる方じゃ」
 昌幸は秀吉のこともだ、幸村に話した。
「動きも非常に速い」
「だからですな」
「その動きを読みきることは難しい」
 それでというのだ。
「そうした方じゃからな」
「関白様をお護りするには」
「御主も全てを賭けて動け」
「それでは」
 幸村は父の言葉に強い声で頷いた、しかし。
 昌幸はその幸村にだ、こうも言ったのだった。
「だがそれはな」
「半々ですな」
「姫君が生まれる場合もある」
「その可能性もですな」
「半分じゃ」
 それだけあるというのだ。
「そして姫君が生まれればな」
「何もないですな」
「その姫君がどうなるか」
「それは」
「うむ、よいことになる」
 茶々が産む子が娘ならというのだ。
「徳川殿のご子息のどなたかとな」
「婚姻を結び」
「強い結びつきとなりますな」
「その場合はな、あと死産もある」
「産まれても」
「そして産まれた子もな」
 折角産まれてもというのだ。
「すぐ死ぬことも多い」
「ですな、赤子は」
「幼な子もな」
「そういえば捨丸様も」
「むしろその場合はな」 
 苦い顔での言葉だった、だがそれでもと言うのだった。 
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