魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
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第二十三話 ホテルアグスタ 3
突如破られる静寂。
なだれ込むガジェット軍。
その裏で蠢く影が現れる……
魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。
outside
ホテル屋上で全体を見ていたシャマルのデバイスが突然光輝いた。
「クラールヴィントのセンサーに反応?シャーリー!」
シャマルは六課司令室のシャーリーを呼び出す。
「はい!きたきた、来ましたよ!ガジェット・ドローン陸戦1型、機影30、35!」
「陸戦3型、2、3、4!」
アルトも、大型ガジェットの反応を確認した。
「え?何これ……1型さらに増加!45、50!まだきます!」
驚愕するルキノ。予想以上の数のガジェットがホテルに押し寄せて来ている。
「前線各員へ、状況は広域防御戦です。ロングアーチ1の総合管制と併せて、私、シャマルが現場指揮を行います」
医務官から、古代ベルカの騎士の顔に戻るシャマル。
(守ってみせる。誰一人、失わせない!)
アスカside
警備をしていたオレ達に、シャマル先生からの連絡が入る。
「ライトニング5、了解!」
「アスカ、俺はシグナムと迎撃に出る。お前は皆と合流し、ティアナの指揮で防衛ラインを死守しろ」
「分かりました!」
オレはザフィーラさんと別れて走り出す。
「いっちょやるか!ラピ!」
《YES SET UP!》
outside
ホテルの外で警備していたティアナからシャマルに念話がくる。
『シャマル先生!アタシも状況を見たいんです。前線のモニター、もらえませんか?』
『了解、クロスミラージュに直結するわ』
「クラールヴィント、お願いね」
シャマルはセットアップし、ティアナのクロスミラージュとモニターをリンクさせる。
『シグナム、ヴィータちゃん』
シャマルは二人に合図をする。
『おう、スターズ2とライトニング2、出るぞ!』
ヴィータの念話をロングアーチが受信する。
「デバイスロック解除。グラーフアイゼン、レヴァンティン、レベル2起動承認」
シャーリーからの起動コードを受信した副隊長のデバイスが輝き始める。
「おし、グラーフアイゼン!」
「レヴァンティン!」
《《Activation!!》》
騎士甲冑を身につけたヴィータとシグナムは、ホテルの吹き抜けから空に上がった。
「新人どもの防衛ラインまでは、一機たりとも通さねぇ。速攻でぶっ潰す!」
グラーフアイゼンを握りしめるヴィータ。
「お前も案外、過保護だな」
隣を飛ぶシグナムがそう言うと、
「うるせーよ!」
不機嫌そうに言い、ヴィータはさらにスピードを上げた。
ホテル正面に陣取る六課フォワードメンバー。そこに、271部隊の隊員の一人が駆け寄ってくる。
「どうなってんだ!?はぐれガジェットの誤認から守る任務じゃなかたのか!」
「誤認だろうが狙ってこようが、やる事は同じだろ!正面はオレ達がやるから、そっちは右翼を頼むぞ!」
鬱陶しいとばかりに、アスカが隊員を追っ払う。
「準備はいいわね?じゃあ行くよ!」
ティアナの指示に従い、フォーメーションを組むアスカ達。
「ティアナ、こっちにもモニター頼む」
「分かった。いま送るから」
ティアナがクロスミラージュ経由で、フォワードメンバーに映像を送る。
そこには、大量のガジェットを圧倒する副隊長二人とザフィーラが映し出されていた。
「……いやね、強いのは知ってるけど、ね」
その戦闘を見て冷や汗をかくアスカ。
訓練の時にシグナムがよく言う「手加減はしているぞ」のセリフに嘘は無かったと言う事だ。
「副隊長とザフィーラ、すご~い!」
その鬼神の如き戦いっぷりに、スバルが感嘆するように魅入っている。
エリオ、キャロなんかは、口をアングリ開けて見ている。
「これで能力リミッター付き……」
ティアナだけが、別の意味でその戦闘を見ている。
(アタシだって!)
知らずに拳を握るティアナ。
アスカはアスカで、また別の意味でこの戦闘をとらえていた。
(この戦い方、副隊長達だけでケリをつけるつもりか)
少し困ったように眉を顰める。
(まだ補助輪が取れないとは言え、ちょっとは信用して欲しいところだね)
副隊長の、特にヴィータの戦い方を見てアスカは思った。
一機たりともホテルには近づけない、獅子奮迅の戦い。
まだまだ自分達は未熟だと言われているようだった。
「凄い……ボク達の出番、無いかも……」
エリオの呟きに、その場にいたほとんどがそう思った。が、
「バカな事言わないで!油断してんじゃないわよ!」
ティアナが怒鳴る。
「す、すいません!」
突然飛んできた怒声にビクッと身体を震わせて謝るエリオ。
「そんな言い方ないだろ!エリオだって本当に油断してる訳じゃないんだからさ!」
咄嗟にアスカがエリオとティアナの間に入った。
「ア、アスカさん、今のはボクが悪いんです!」
エリオがアスカを止める。それを見たティアナがハッと冷静になる。
「……ゴメン、少し気が立っていたかも」
苛立っていた自分に気づいたティアナがエリオに謝る。
「そんな!ティアナさん、謝らないでください!今のは…」
「はい、そこまで。お互い謝ったんだから、それでお終い。後は任務を無事に終わらせるだけだ。そうだろ?」
アスカがそういい、ティアナもエリオも頷いた。
とりあえずは治まった感じだが、アスカはティアナに対して違和感を感じた。
いつもの冷静なティアナじゃ無いように感じたのだ。
(何をピリピリしてるんだ?)
アスカはスバルを見たが、スバルも分からないと首を振った。
離れた場所からその戦闘を見ている男と少女に、通信が入る。
「ごきげんよう、騎士ゼスト、ルーテシア」
モニターが開き、機動六課が追っている次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティが映し出される。
「ごきげんよう」
感情の無い声で少女、ルーテシアが挨拶をする。
「…何のようだ」
ルーテシアとは逆に、ゼストは明らかに警戒してスカリエッティをみる。
「冷たいね。近くで状況を見ているんだろう?」
言葉とは裏腹に、スカリエッティは楽しそうに笑みを浮かべる。
「あのホテルのレリックは無さそうなんだが、実験材料として興味深い骨董が一つあるんだ。少し協力してはくれないかね?君たちなら、実に造作のない事なんだか…」
「断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めた筈だ」
ゼストが即断る。
その返答は予想できていたのか、スカリエッティはルーテシアに目を向ける。
「ルーテシアはどうだい?頼まれてはくれないかな?」
諭すように頼み込むスカリエッティ。だが、その目は笑っているのが分かる。
「……いいよ」
少し考えて、ルーテシアは承諾した。
「優しいなぁ、ありがとう。今度ぜひ、お茶とお菓子でも奢らせてくれ」
大げさに芝居がかったセリフを平然と吐くスカリエッティ。
ゼストがスカリエッティを睨むが、そんなのはどこ吹く風だ。
「君のデバイス、アクスレピオスに欲しい物のデータを送ったよ」
ルーテシアのグローブ型のブースとデバイス、アクスレピオスのクリスタルが反応する。
それを確認したルーテシアがコクンと頷く。
「うん。じゃあ、ごきげんよう、ドクター」
「ああ、ごきげんよう。吉報をまっているよ」
そこで通信が切れた。
ルーテシアは羽織っていたコートをゼストに渡す。
「いいのか?」
ゼストはやや心配そうにルーテシアを見る。
「うん。ゼストやアギトはドクターを嫌うけど、私はドクターの事、そんなに嫌いじゃないから」
「…そうか」
ルーテシアの意志を確認したゼストは、それ以上何も言わなかった。
まだ幼いとは言え、ルーテシアは自分の考えで、自分の言葉で表したのだ。
ならば、ゼストが止める理由は無い。
コートを手にしたゼストは、ルーテシアから数歩下がった。
ルーテシアは両手を広げ、アクスレピオスを構えた。
足下に魔法陣が現れ、ルーテシアの髪を揺らした。
「我は、請う…」
ルーテシアは詠唱を始めた。
「あ!」
副隊長達の戦闘を見ていたキャロが声を上げた。
「キャロ、どうしたの?」
隣でモニターを見ていたエリオがキャロに目を向ける。
「近くで、誰かが召喚を使ってる」
そこに、シャマルから連絡が入る。
『クラールヴィントのセンサーにも反応!だけど、この魔力反応って…』
「お、大きい!」
ロングアーチのシャーリーがモニターに現れた魔力範囲を見て驚く。
ホテルどころか、その一帯全域が影響範囲に入ってしまっている。
広域召喚。
これでは、どこからでも敵が這い出てきてもおかしくはない。
ルーテシアの魔法陣から、カエルの卵のようなゼリー状の物体が3本、うねりながら立ち上がってくる。
「小さき者、羽ばたく者、言の葉に応え我が命を果たせ。召喚、インゼクトツーク」
囁くように詠唱を終えるルーテシア。
ゼリーが弾け、中から大量の「虫」が羽ばたき出てきた。
「ミッション、オブジェクトコントロール……行ってらっしゃい、気をつけてね」
ルーテシアは、その虫達に指示を出した。
それを受けた虫達は、方々へ散る。
向かった先はガジェット。
大量の虫達は、その数だけのガジェットに体当たりし、融合する。
その途端、ガジェットの動きが変わった。
「な、なんだ?」
ガジェットの変化に気づいたヴィータが、咄嗟に4発の鉄球を撃ち込む。
だが、ガジェットはその鉄球全てを避けきった。
「急に動きがよくなった?」
それまでの、プログラムされた動きではない。もっと、流動的、生物的な動きになっている。
それまで地上で3型の相手をしていたシグナムが空中のヴィータと合流する。
「自動機械の動きじゃないな」
その様子は、指揮をしているシャマルにも見えている。
「有人操作に切り替わった?」
シャマルがそう思うのも無理はない。それまで単純な行動パターンだったガジェットが、複雑な動きをし始めたのだ。
当然、フォワードメンバーもそれを見ている。
「マニュアル操作?いや、違うな。それだとガジェットの数が多すぎる。多分……」
アスカはその答えを求め、キャロを見る。
「はい。さっきの召喚師の魔法…恐らく、インゼクトツーク」
「イン…何だって?」
聞き取れなかったのか、スバルが聞き返す。
「インゼクトツーク。召喚虫で、哨戒、探索が主な任務なんですが、単体での攻撃能力もあって、無機物の操作系を奪取する事もできます。ガジェットの動きがよくなったのは、多分インゼクトの仕業です」
その説明は通信を通して副隊長にも届いていた。
「ヴィータ、ラインまで下がれ。向こうに召喚師がいるなら、新人達の元に回れ込まれるかもしれん」
「ああ、分かった!」
ヴィータはすぐに防衛ラインまで下がるべく、その場を後にする。
『ザフィーラ、シグナムと合流して!』
シャマルが、別の場所で戦っているザフィーラに指示を出す。
戦力を集中した方がよいと判断したのだ。
『心得た』
周囲のガジェットを一掃し、ザフィーラは空に舞い上がった。
「やはり素晴らしい、彼女の能力は」
アジトでその戦闘を見ていたスカリエッティは満足げに頷く。
「極小の召喚虫による無機物自動操作、シュテーレゲネゲン」
別モニターのウーノが呟く。
「それも、彼女の能力のほんの一端に過ぎないがね」
モニターを見つめるスカリエッティの目が、妖しく光った。
「ブンターヴィヒト…オブジェクト11機、転送移動」
ルーテシアはさらに魔法をつなげる。
インゼクトがとり憑いたガジェット、1型10機と3型1機が魔法陣に飲み込まれる。
ティアナside
「遠隔召喚?来ます!」
最初に気づいたのはキャロだった。
アタシ達の目の前に魔法陣が現れ、その中から11機のガジェットが浮かび上がってくる。
「あれって召喚魔法陣?」
「召喚ってこんな事もできるの?」
エリオとスバルが驚く。
エリオはともかく、スバルは訓練校時代に習ったでしょ!
「優れた召喚師は、転送魔法のエキスパートでもあるんです!」
キャロがケリュケイオンを身体の前でクロスさせて構える。
「何でもいいわ!迎撃、行くわよ!」
アタシはクロスミラージュの安全装置を解除した。
「「「「おう!」」」」
まるでそれが合図だったかのように全員が答え、戦闘モードになった。
今までと同じだ。証明すればいい…自分の能力と勇気を証明して…アタシはそれで、いつだってやってきた!
クロスミラージュに込めた魔力を弾丸として放つ!
「いけぇ!」
まっすぐに魔力弾はガジェットに向かう。
だけど、AMFに阻まれてしまう。しまった!
「通常弾?どうした、ティアナ!そんなのが通用しないのは分かってんだろ!」
アスカの叫び声が聞こえてきた。
「わ、分かってるわよ、そんなのは!アスカ、バリアを前面に展開!スバルはバリアに紛れてガジェットをたたいて!」
アタシはすぐに指示を出す。
アタシを中心に、フォーメーションが動き出す。
大丈夫、落ち着け!できるから!
アタシは自分自身に言い聞かせていた。
そう、できる。必ず!
Outside
ホテルの地下駐車場。
警備員が警戒している中を、一匹の虫が侵入してきた。
大型のエレベーターに張り付き、その中をスキャンする。
その情報を、主人であるルーテシアに報告した。
「ドクターの探し物、見つけた。ガリュー、ちょっとお願いしていい?」
アクスレピオスに語りかけるルーテシア。
「邪魔な子は、インゼクト達が引きつけてくれる。荷物を確保して」
ルーテシアはアクスレピオスを天にかざす。
「うん、気をつけて行ってらっしゃい」
召喚虫にしたように、ルーテシアはアクスレピオスに話す。
それと同時に、アクスレピオスのクリスタルから”黒い光”が飛び出す。
その黒い光は、まっすぐにホテルへ向かっていった。
後書き
うーん、ちょっと文章がなってないですね…うまくならないなぁ…
いつも閲覧していただいてる方には、こんな下手な文章で申し訳なく思っています。
すみません…
さて、ようやく始まった戦闘シーンですが、長くなるので一度ここで切ります。
ティアナの焦燥感が少しずつ表面に出てきています。しかし、アスカはそれに気づいてません。
このまま、例の事件に発展するのかしないのか…それは次回という事で。
つたない文章ですが、読んでいただき、大変幸せを感じています。
これからもよろしくお願いします。
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