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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#33
  星魔の絶戦 千変VS星の白金~PHANTOM BLOOD NIGTMARE XV~


星 魔(せいま)絶 戦(ぜっせん) “千 変(せんぺん)”VS『星 の 白 金(スタープラチナ)』】





【1】



「オッッッッッッッッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ――――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!」
「ウオオオオオオオオラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ――――――――――――――――――ッッッッッッッ!!!!!!!」
 現世と紅世、二人の男の叫びが空間で()ち合った。
 同時に刳り出されていた二つの拳、スタンドの星拳と暴魔の獣拳。
 のっけから最大出力(フルパワー)。互いの拳がソレを刳り出した者の胸元で爆裂する。
「ぐぅッ!?」
「ぬうぅ!!」
 衝撃で弾け飛ぶ二つの躯、両者共に相手を凌駕する絶対の自信の下
交錯した一合は舞台ごと叩き割って相剋。
 黒いダークスーツの男、紅世の王 “千変” シュドナイは
コンクリートを抉りながら大地を踏み締め、
指先もコンクリートを削りながら衝撃を()なす。
 しかしもう一方の男、勇壮なる 『スタンド使い』 空条 承太郎、は、
(止、止まらねぇ――ッッ!! オレの方が先に当たった筈!!
にも関わらずこの威力ッッ!!)
高速で流れる風景、スタンドごと三つのビルを突き破り
力のベクトルが下方に向かったことにより街路に着弾、
地にメリ込む形でようやく止まる。
「がはぁッッ!!」
 スタンドへのダメージにより吐血する本体、血霧に染まる粉塵と残骸。
 即座に巡らす、スタンドの超視覚。
500メートル先の路上でサングラスをかけた男が、
口元から紫色の炎を漏らしながら不敵な笑みを浮かべていた。
(マジか……! 『流 星 爆 裂 弾(スターブレイカー)』 の直撃受けて立ってやがる……! 
威力もブレず、カウンター気味に入ったってのに……!)
 薄ら寒い戦慄が、無頼の貴公子の背を震わせた。
 なんとなれば今まで忘れていたような、初めての異能戦を想起させる感覚だった。
 しかしソレを “今” 感じるというコトは、それがそのまま男の圧倒的な力量を示す。
 今まで培った戦闘経験、成長したスタンドパワー、それが何の優位にも働かない。
「チッ!」 
 かつてシャナがやったように、街路のあらゆるモノを足場にして
稲妻状の軌跡を描き承太郎は男に迫った。
 学生服をはためかす風が酷寒を孕む、
身を切るのはなく心を切る、異形の冷風だった。  
「――ッ!」
 着地の勢いそのままに、路面を砕いて躍りかかるスタープラチナ。
 口元の紫炎を手の甲で拭った男の腕が、即座に虎と獅子の形状に変貌し、
元の体積を無視してくねり伸びながら迎撃する。
 ガギィッッ!! 構えた右拳を解除、防御体勢に移行するしかなかった。
 両腕を広げて獣の喉元を掴み、立ち往生の体勢(カタチ)となるスタープラチナ。
 男との射程は5メートル以上あるにも関わらず、
近距離パワー型スタンドの剛腕がミリミリと圧搾されていく。
『スタンド使い』 と “紅世の徒” の異能偏差(いのうへんさ)
後者は 「距離」 の法則に捕らわれない。
「ぐ……!ううぅ……ッ!」
 頑強な歯を剥き出しにして堪えるスタンド同様、承太郎も口中を軋らせる。
 ガチガチガキガキと狂暴に牙をカチ合わせる魔獣の頭部から発生する圧力の累積に
両腕が痛みを伴って痺れ始め、耐えきれなくなった足下が罅割れ埋没していく。
 対照的に黒ずくめの男は余裕の表情、双眸の見えないサングラス越しに
ジラリと承太郎を睨め付ける。
「フッ、貴様のコトは知っているぞ…… 『星の白金』
イヤ、 “星 躔 琉 撃(せいてんりゅうげき)殲 滅 者(せんめつしゃ)” と云うべきか?」
「勝手な通り名、付けてんじゃあねぇ……!」
 徐々に徐々に縮まってくる両腕に歯噛みしながら承太郎は言葉を絞り出す。
「アノ “狩人” フリアグネ、更には顕現した “蹂躙の爪牙” すら
討ち果たした地上最強の 『ミステス』
“炎髪灼眼” を片割れに、随分と戦果をあげているようだな?」
「興味ねぇよンなもん……! 
テメーら人喰いのバケモンがチョーシこいてやがるから
ヤキいれてやっただけさ……!」
 スタンドが圧力に縛られているので承太郎も動けない、
しかし無理に平静を装い黒き視線を睨み返す。
「フッ、大した気勢だ、たかが人間風情が
この “千変” シュドナイを前にしてよくも」
「 “たかが” なんて 「人間」 はいねえんだよッッ!!」」
 怒気、そう呼ぶには苛烈過ぎる精神の迸りが空間を劈いた。
 そう、紅世の徒(コイツ等)の一番ムカつく所は、赦せない所は、
頼みもしないのに勝手にこの世界へやってきて、
散々人の生命と生活を喰い潰し、
その事を気にも留めない驕り高ぶった態度だ。
 一人の人間として、男として、余りにも当然な承太郎の怒り、
それを嘲笑うようにシュドナイの変貌した両腕から、顎のみ、
剥き出しの牙が黒く伸長しスタープラチナの右脇窩と左脇腹に()い付く。
「ぐっ!」
 即座に反映されるスタンド法則、極薄のインナー越しに繁吹(しぶ)く鮮血。
 戦況の優位は明らか、このまま緩んだ膂力に乗じて
上体を喰い千切ってやろうと男の口が残虐に歪む。
 苦痛を孕み、断続的に噴き出る血、だが咬束したシュドナイの側に違和感、
「――ッ!」
喰い込んだ牙が、合致せず徐々に押し戻される。
「ぐっ……おぉぉ……ッ!」
 予期せぬ事態にシュドナイの視界が反転、文字通りの反転、
得体の知れない力に全身を引っこ抜かれ、
そこから横向きに高速で吹き飛ばされる。
 ガブギッ! と、スタンドのボディに喰い込んだ牙の大部分が殺ぎ落ち、
先に飛ばされたシュドナイ本体を追いかけ空中で大きく(たわ)んだ。
 変換された力、瞬発的な円運動、キレ、タイミング共に
ヴィルヘルミナを蒼白させるに充分な投擲技。
 流星の 「流法(モード)」 『流 星 群 漣 綸(スター・スパイラル)廻 流(カイル)
 海上で見せた縦回転とは違う「横回転」、
さながら螺旋を巻く飛竜の如くシュドナイの躯は大気の乱流に呑み込まれ
巨大な風穴を開けながらビル5つを貫き、
最後に倒壊した残骸の下敷きになってようやく止まった。
「フッ――!」
 ソコから距離300メートルの位置、鋭気一閃、
硬直して引き締めたスタンドのボディを更に収縮させ、
その高圧力で喰い込んだ牙が傷口から噴出される。
 エリザベスが “波紋” で行った身体強化とは
また系統の違う原初的な(わざ)だが、
スタープラチナ程のパワーを有するスタンドなら、
その強度を鋼鉄並に化しめるコトは充分に可能。
尚かつ弾性に富むボディは敵の刃や牙に絡み付き、
その殺傷力を著しく減衰せしめる。
 訓練時、シャナが纏った黒衣、 “夜笠” を
硬質化させていた事にヒントを得て開発された業であるが、
その効果は顕著、生まれ持ったパワー、スピード、精密性に
胡座(あぐら)をかかず弛まぬ研鑽に拠って生み出された新境地。
 現在(いま)遠方にて新たなる 『剣技』 を炸裂させた少女と同様、
“この二人” は戦えば戦うほどに 「成長」 していく。
 一方が抜きんでれば他方がそれを追いかけるといった具合に、
相乗効果を発揮しながら更なる “高み” へと駆け昇っていく。
 これもまた 『運命』
 相性、恋情、そういったモノより深い、真実(ほんとう)(つながり)
 鋭く研ぎ澄ましたスタンドの両眼が倒壊したビル、瓦礫の山を捉えた。
 捻じ曲がったコイル鉄筋を剥き出しにしたコンクリートを爆散させて、
無傷の男が破れたダークスーツに罅割れたサングラスをギラつかせて姿を現す。
 しかしその惨憺足る風貌はものの数秒で不気味に濁った紫色の炎に修復される。
 火の粉ではない、自在法でもない、有り余る無尽蔵なパワーを
無造作に放出し事に充てる純粋な再生力。
 余計な策や小細工を一切遣わない、
自身に与えられた生来の力のみで勝負する。
 初めて出てきた、正統派の紅世の戦士。
――トクン、
 さながら、アラストールとでも対峙しているかのような
(機会があれば一度手合わせ願いたかったが)
身体の全細胞が弛緩する緊迫が承太郎を包んだ。
――トクン、トクン。
 しかしソレを呼び水として、頭の中を白く染める高揚が指先、足の先まで沁み渡る。
――ドクンッ!
 一際強く、鼓動が脈打った。
 同時にマグマのように熱くなった血が全身を駆け巡った。
“嘗ての自分”
 シャナと、花京院と出逢う前の、
ままならない世の中の不正や矛盾にただ苛立ち、
そのスベテを叩き潰すかのように 「強者」 を求め、
夜の街で暴れ狂っていた狂 騒(きょうそう)の時。
 警察も手を焼く武装暴走団をたった一人で壊滅させたアノ時。
 路上最強と呼ばれる伝説的ストリートファイターとノールールでヤり合ったソノ時。
 己を筆頭として、子供にまで麻薬を流す非合法の新興組織を集団で殲滅したカノ時。
 それら狂熱の日々と同じ、否、それ以上の血の滾りが承太郎の裡で眼を醒ました。
 少女との(つながり) 、母親への深愛、仲間との友情。
 それらはスベテ、今日の “彼” を形創るのに欠く事の出来ない重大な要素だ。
 しかし!
 空条 承太郎とは、それ以前に一人の 『男』 とはッ!
決して与えられ “対応する者” のみに在らず!!
 心の深奥で常に強者を追い求め、骨身を削り敵を凌駕し、
今の自己(おのれ)を超克して往く者。
 その存在が、承太郎の前に現れた、顕れて、しまった。
 絶大なる力を持つ紅世の王、及び
仮装舞踏会(バルマスケ)』 『三 柱 臣(トリニティー)』 『将軍』
“千変” シュドナイ。
 かつての自分とは相反し、ここ数ヶ月間の承太郎の戦いは
「挑む者」 としてではなく「護る者」 としての闘いで在った。
 彼自身も次第次第にソレに慣れ、
護り抜いた少女の笑顔や平和な人々の様子を
穏やかな気持ちで見つめていた。
 しかしもう一人の自分は、否、どうしようもない真実(ほんとう)の自分は、
穏やかな温もりの中で懸命に叫んでいた。
 (たたか) え、(たたか) え、(たたか) え!
 誰の為でもなく自分の為に、あらゆる強者を駆逐して
誰も追いついてこれない絶対の領域まで翔け上がれ!
 ソレが 『男の世界』
 生温(なまぬる)安寧(あんねい)に、自己(おのれ)(ゆだ)ねるな!
「オ……オォォ……」
 心の隅で何かがつかえたように、くぐもった声が承太郎の口唇から漏れた。
 しかし 『光』 が。
“敢えて” 苦難の道を往く者だけに視える 『光』 が、
その存在を掻き消した。





『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ
ォォォォォ――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!』



 極限の咆吼、共に爆裂するスタンドパワー、同時に周囲のアスファルトが
グワッ! と大きな亀裂を伴って吹き飛ばされる。
 その莫大な輝きは、遠間に位置するシュドナイにも明確に映った。
 



『オッッッッッッッッッッラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァ――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!』




 虹彩を無くした双眸で、飢えた獣のように地を大陥没させて
シュドナイへと翔び掛かるスタープラチナ、否、無頼の貴公子!
 存在を消失した深紅の少女、この別離(わかれ)が刹那なのか永遠なのか、
それは誰にも解らない、 『神』 ですら理解らない。
 ただ血の白熱(たぎり)渇望(かわき)のもと、男は()える。
 真の戦斗(たたかい)の幕が、灰燼と化して開かれる!


←TOBE CONTINUED…

 
 

 
後書き
はいどうもこんにちは。
承太郎版、『男の世界』の話です。
○タレには永遠に無縁な世界、近づくことも許されない領域です。
まぁあくまで『バトルモノ』として描く以上、
このような強さに対する「飢え」や戦いに対する「渇き」のようなモノは
欠くべからぬ要素であり、ソレが出来ないならスベテ「戦いごっこ」に
なってしまうので作品を描くべきではないと考えます。
だから「シャナの前でいいかっこしたい」とかいうフザけた理由で
戦いの世界に首ツッんでくるヤツは言語道断、
全ての格闘技(たたかい)に携わる人達に対する「侮辱」です。
(某「伊達 英二」が似たようなコト言ってましたが
ソレは彼だからこそ許されるのであり、
格闘経験は疎か殴り合いのケンカもしたことない
○タレが真似をしてはいけません)
ソレでは。ノシ

 
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