真田十勇士
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巻ノ六十八 義父の病その十
「明日の朝な」
「共に」
「あれに会うのも久し振りじゃ」
娘にというのだ。
「考えてみればな」
「はい、実はです」
「わしが病でなければか」
「そうでなければです」
「会わしてくれていたか」
「申し訳ありませぬ、その機会を見失いました」
病の話に衝撃を受けてだ。
「それで」
「あれは昔から早寝でな」
「そして早起きですな」
「そうであるからな」
「もう今宵はです」
「寝ておるな」
「既に」
こう大谷に答えた幸村だった。
「そうかと」
「わかった、ではな」
「朝にですな」
「会おう」
「そして、ですな」
「明日の朝娘にも会い」
そしてと言うのだった。
「そのうえでじゃ」
「関白様にですな」
「参上する」
秀次の下にというのだ。
「そしてお話をしたい」
「では」
「明日じゃ」
娘、幸村の妻でもある彼女にそうすることはというのだ。
「そうする」
「畏まりました」
「その様にな、しかし御主は」
「今度は一体」
「飲むのう」
幸村の酒量を見ての言葉だ、共に飲みつつ。
「焼酎は強いが」
「はい、酒は強くて」
「それでか」
「これ位はいつもです」
「そうか、しかしな」
「酒は、ですな」
「過ぎぬ様にな」
その飲む量はというのだ。
「それはわかっておると思うが」
「酒は過ぎぬものですな」
「過ぎれば毒になる」
「だからこそ」
「そうじゃ、酒を節制するのもな」
「大事ですか」
「酒の毒で死ぬなぞ虚しいだけじゃ」
そうした死だというのだ。
「だからな」
「酒は程々に」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「酒は程々じゃ」
「ですか」
「しかしじゃな」
「はい、酒については」
苦笑いになりだ、幸村は義父に応えた。
「どうしても」
「そうであろうな」
「美味く好きで」
「止められぬか」
「どうしても」
「そうであろうな、しかしな」
それでも言う大谷だった。
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