IS《インフィニット・ストラトス》~鉄と血と華と~
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第一話 彼の名は――
「此処が『IS学園』……か」
IS学園と呼ばれる学園の校門にて、少年がふうと声をあげて荷物を下ろす。
「……随分とでかいんだな」
後は迎えを待つだけ。ふと少年は数日前の事を脳裏に過らせる。
※
何処かの、アリーナのような施設にそれは居た。白く、頭部には黄色のアンテナと緑の双眼。無機質なそれは片手に身の丈はある鉄の塊を肩に携えてその時を待つ。
「……来たか」
振り向くと、手足に緑の装甲を見にまとい、バイザーを付けた女性が。
彼女が纏っているのは『インフィニット・ストラトス』。他の如何なる兵器を寄せ付けない絶対防御、経験を重ねる事で自己進化するコア……世界の軍事的事情を大きく覆した、兵器の頂点に立つマルチパワードスーツであり、まさに最高峰の兵器である……が。欠点の“女性しか扱えない”という点を除けばであるが。この特徴故に、女尊男卑の風潮が広まり世界のバランスも大きく変えることになってしまったのが現状だ。
だが、ここにいる存在もその特徴を覆してしまうのであるのだが。
「……」
緑のIS『ラファール・リヴァイヴ』を正面に捉え、深く腰を落とす白きIS。
「……」
女性は何もない所からアサルトライフルを取りだし白きISに向けて引き金を引く。
「ッ……」
前のめりになり、背、腰、脚にそれぞれあるバーニアを吹かし避けつつ移動する。照準を定め、幾ら撃とうとも白きISには当たらず接近を許してしまい
「ふっ」
懐に入りメイスを突き上げる。
「チッ、浅いか」
思わず舌を打つ。メイスはアサルトライフルを持つ腕に当たり、装甲は潰れたまらず女性は後ろへ下がろうとするが
「逃がすわけないだろ」
首を鷲掴みにし、地面に叩き伏せるとメイスを胴目掛け叩き付ける。何度も何度も、緑の破片が散らばり、女性が抵抗する様を見せなくても。
暫く叩き続けると、何処からか
「ミーくんストーップ!」
そんな声と共に白きISは動きを止め、回りの景色が様々な機械が並ぶ部屋へと変わっていく。さんざん叩きのめした女性の姿は無く、代わりにあるのはボロボロに大破した無人の機械人形だけだ。
ふとバタバタと足音を立てながら、こちらに来る束の姿が目に写り
「どうしたの、束?」
「どうしたもないよー!あーあ、折角の束さんのスペシャル訓練機がめちゃめちゃ」
「うん、あんまり強くなかったからもっと強いのお願い」
白きIS『バルバトス』は待機状態という形態になり、乗り手の姿が露になる。黒い髪に束より低い背の少年だ。
「ミーくんこれで何機め?」
「2機から先は数えてない」
「数えるの止めるの早すぎっ!?直すのは束さんなんだからもうちょいねー……」
「ごめん、でも束がこうして機体を用意してくれてるお陰で俺は訓練ができるんだ、頼れるのは束しかいないから」
その言葉に、彼女の頭についている機械のウサギ耳がピーンと張る。
「そう言われたら仕方ないなぁ~こうなったら束さんが人肌脱いで、ミーくんの為に頑張っちゃうからね!」
「うん、お願い」
「そういえばミーくん」
「?」
はいっと手渡されたのはIS学園入学許可書と書かれた書類だ。
「なにこれ?」
「書類だよ、書類、IS学園の」
ああ、と少年は呟き
「それで?俺は『どちら』として行けばいいの?」
「今回は『三日月・オーガス』で戸籍を作っといたから!」
「そっか」
待機状態のバルバトスをポケットに仕舞いこみ
「そっちの方が呼ばれ慣れてるからいいけどね」
※
入学式は2日後、少年こと三日月・オーガスは束からの指示で先に学園の寮で生活をすることになったのだ。
「寮か……美味しいもの食べれるといいな」
思い出すのは束が作り上げてきた料理というなの廃棄物、何故ISに関する技術力は天才なのに料理は壊滅的にダメなのかと考えたのだが、そもそも世界のバランスを変えたISを産み出したのは他でもない『篠ノ之 束』本人だからだ、ISに関して強いのは当然のこと。料理がからきしなのは、技術が全てISに傾いてるからだろうと三日月は結論付ける。
「……まだかな、迎え」
※
「三日月・オーガス、か……」
IS学園の職員室にて、その名前が書かれた書類を目を通す教師『織斑 千冬』はやや眉間に皺を寄せる。
入学式が2日後と迫った最中、先日昔からの友人、腐れ縁とも言える束から突然
“いきなりだけど、入学手続きしてほしい子がいるんだ!書類は送っておくから後はよろしく!会ったらきっとビックリするからその子について何か気になったら束さんに連絡ちょうだい!待ってるよ!”
と捲し立てられるように言われ頭痛がしたのは別の話だ。再び書類に目を向けるが、どうもおかしい。顔写真が張っていないのだ。これではどんな人物が来るのかは分かったものではない、ただ千冬が束から聞いたのは今日指定の時間に、校門の前に来てほしいとのことだ。そこで束の言う人物が待っていると。彼女は時計を見るとそろそろ指定の時刻になりそうであった。
「……いくか、さてはてどのような奴が居ることやら」
※
校門に到着してから数分後、三日月は校門の脇にある壁によっかかりながらチョコレートを食べていた。束に言われた時間はもう少しの筈だが、と思った矢先に声がかかる。
「お前が束の言っていた奴か」
スーツを着た黒髪の女性が三日月の側に居た。荷物を手に取り、その女性の目の前に立ち
「そうだけど、あんたがここの先生?」
「ああ、そう……だ……」
女性は目を見開き
「そん、な……まさか……」
三日月の顔を見て驚き、体を震わす。
「三夏……なのか……?」
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