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真田十勇士

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巻ノ六十八 義父の病その二

「海を渡れとは言わぬ」
「はい、九州までですな」
「そこで様子を見て」
「そしてですな」
「殿にお話をと」
「そうしてもらう」
 そうしてくれというのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その様にします」
「無論他の国々も巡ってきます」
「東国も」
「東国はじゃ」
 箱根から東についてはだ、幸村はこう言ったのだった。
「伊達家、そして徳川家じゃ」
「両家ですか」
「この家々をですか」
「そうじゃ、特に見てもらいたい」
 十勇士達に述べた。
「わかったな」
「確かに、両家は東国で一二を争う家です」
「徳川家は二百五十万石、伊達家も七十万石はあります」
「どちらも大きいですな」
「それ故に」
「それにじゃ」
 幸村はさらに言った。
「伊達殿はな」
「今も、ですな」
「天下を諦めてはおられない」
「俗に言われていますが」
「それ故に」
「うむ、それもじゃ」
 政宗の野心もというのだ。
「上田の父上から話があり関白様もじゃ」
「警戒されておられますか」
「伊達殿については」
「それ故に」
「見てもらいたいとのことじゃ」
 幸村にというのだ。
「だからな、御主達にもな」
「東国も巡り」
「そしてですか」
「伊達殿を見る」
「そのお動きを」
「頼む、そして徳川殿もじゃが」
 家康もというのだ。
「父上からも言われておる」
「あの方もですか」
「徳川殿についても」
「その様に」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「見ておけとな」
「若しや」
 霧隠がふとだ、察して幸村に問うた。
「徳川殿が天下を」
「いや、それはないぞ」
 清海が霧隠にすぐに言った。
「あの方はもう豊臣家の重臣、天下の執政と言っていい方じゃぞ」
「いや、重臣程下克上があるではないか」
 筧はその清海に言った。
「ましてやあの方はかつては太閤様と争われた」
「しかしあの方は律儀な方」
 望月は家康のその資質から話した。
「太閤様の天下を盗むなぞ」
「次の天下人がいないならともかく」
 こう言ったのは海野だった。
「徳川殿の天下はないであろう」
「あの方は天下を望まれていたか」
 これまでの家康はとだ、伊佐は言った。 
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