| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ六十七 関白秀次その十

「いや、よい方ですな」
「穏やかで鷹揚で」
「殿の本質も見ておられますし」
「我等も見てです」
「武士について考えておられますし」
 秀次のそうしたことを見ての言葉だ。
「器も大きな方です」
「あの方ならばです」
「次の天下人になれますな」
「太閤様の次に」
「あの方で決まりですな」
「そうじゃな、しかしな」
 ここでだ、幸村は不穏な顔になり十勇士達に言うのだった。
「拙者は先日星を見て言ったな」
「凶兆ですか」
「それですか」
「太閤様の血に赤いものが混ざった」
「星達に凶兆を見られたと」
「それが気になる」
 こう言うのだった。
「拙者はな」
「関白様についても」
「そうだというのですか」
「何か凶兆がある」
「そうやも知れぬと」
「拙者の見間違いであればよいしじゃ」
 それにとだ、こうも言った幸村だった。
「星はな、しかしあの方がこのまま天下人になられれば」
「天下は治まりますな」
「唐入りで忙しくなりますが」
「あの方が無事治められる」
「そうなりますな」
「明まで入れば」
 幸村は秀吉の唐入りが成功した場合から話した。
「明の領地まで含めて一気に政を行いじゃ」
「そして、ですか」
「天下は広く治まる」
「そうなりますか」
「太閤様はそうお考えか、大きいな」
 日の本だけを見てはいない、秀吉はそうした意味では確かに器が大きい。伊達に一介の百姓から天下人になった訳ではない。
「成功すればな」
「では失敗に終われば」
「その時はですか」
「どうなるか」
「それは」
「その時は関白様が天下を治められる」
 秀次、彼がというのだ。
「あの方ならばな」
「唐入りが失敗しても」
「そうしてもですな」
「関白様が天下を治めて下さる」
「そうなりますか」
「だから問題はない、だが」 
 不穏なもの、星から見たそれがどうしても気になりだ、幸村は十勇士達に言った。
「人の先はわからぬな」
「三年先は闇といいますし」
「どうしてもですな」
「先はわかりませぬな」
「人は」
「そうじゃ、先はじゃ」
 あくまでというのだ。
「わからぬものだからな」
「それで、ですな」
「あの方もですな」
「先はわからぬ」
「そうなのですな」
「若しあの方に何かあれば」
 その時はというのだ、むしろであるというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧