提督はBarにいる。
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EX回14 鎮守府の秋祭り~会食編①~
前書き
はい、皆さんお待ちかね、飯テロのコーナーはっじまっるよ
「ハッハッハ、いや~スマンスマン。どうにもコッチが早とちりだったなぁ。」
鎮守府の本館の中を、艦娘を引き連れてゾロゾロと歩く二人の提督。一人は豪快に笑いながらもう一人の方の提督の肩をバシバシと叩いている。……って、まぁこれは俺なんだが。
「ハハハ……、まぁこれも良い経験ですよ。」
苦笑いしながらその提督……名前何だっけ?聞き忘れた。まぁ良いや、その新米提督君は赦してくれた。なんでも、南方の鎮守府への演習に二式大艇で移動中、落雷?のような物を受けて不時着水、近くの鎮守府に助けを求めようとしたら偶々ウチが近所だったらしい。
「しかしまぁ、すげぇ偶然もあるモンだ。俺の演習相手と全く同じ編成とは。」
そのせいもあって、余計に勘違いしてしまった。いやぁ、確認って大事だね。今、そのお詫びも込めてだがご飯をご馳走しようと移動中だ。そして何故だか、演習に参加したメンバー全員と、「スクープです!」と鼻息荒く青葉がくっついて来た。新米君の艦娘が付いてくるなら解るが、何故お前らまで。
「提督のご飯が食べられると聞いて、逃すワケには参りません‼」
「お腹空きました!」
おいW赤城さんや、一航戦の誇りはどうした、まさか「誇りで飯が食えるんですかねェ……?」とか言い出すんじゃあるまいな。そして金剛には両軍の比叡が互いのお姉様をチェンジして、ほっぺスリスリしている。
「はぅあ~、更に改装したお姉さまも凛々しくて素敵ですぅ~♪」
「コッチのお姉様も昔を思い出すようで素晴らしいですぅ~♪」
「と、言う事は……?」
「つまり……?」
「「お姉様は最高‼」」
なんかW比叡が金剛を通じて友情結んでガッチリ握手しちゃってるし。それを見たW金剛も、比叡はドコでも変わりませんネーwなんて、微笑ましい会話交わしちゃってるし。もう、なんなのコレ。
「す、すいません…ウチの娘達が……。」
そう言って見慣れない重巡艦娘(祥高さんと言うらしい)が頭を下げてきた。
「あぁ、いやいや。喧しいのはウチもいつもの事さ。ただ、同一の艦娘でも似ている所や似ていない所があるモンだと思ってね。」
まぁ、それが人間の『個性』ってものさね。っと、漸く着いたな。
「ここは……執務室?」
それを聞いた瞬間、新米君の方の赤城が膝から崩れ落ちた。まぁ、腹ペコ状態の大食艦でお馴染みの赤城が聞いたら普通はそうなるわな、ご飯が遠退いたと思って。ここが普通なら、な。
「さぁ、入った入った。」
全員が入っても余裕がある程、広くスペースの取られた執務室。新米君の艦娘達は全員が全員、怪訝そうな顔をしているな、新米君も含めて。
「は~い、その辺の壁とか家具とか触らないようにな。」
あ、ポチっとな。するとあら不思議、壁の資料棚はピストンによって酒瓶の満載された棚に変わり、テーブルとソファが床の開口部からせりあがってくる。そして提督の座る実務机周辺は、システムキッチンとバーカウンターに早変わり。
「さぁ、『Bar Admiral』へようこそお客様。ここからは俺は提督じゃあない。この店のマスターだ。」
新米君の所は全員、開いた口が塞がらないって感じだな。まぁそれが普通の反応だよ。ウチの艦娘達は馴れたもので、思い思いに座りたい席に着いた。そして我に帰った新米君達も、少し慌てた様子で席に着く。
「さてさて、ウチの店にはメニューらしいメニューがない。頼まれた物で作れる範囲の物は作るってのが俺のポリシーだ。さぁ、まずは何か景気付けに飲むかい?」
そう言うと新米君は困ったように、おずおずとこう切り出してきた。
「あの~、非常にありがたい申し出なんですが、実は俺、酒は飲まないんです。」
「あらら、もしかして下戸?」
「いえ、決してそういうワケでは……。」
何かワケありっぽい雰囲気だな。もう少し突っ込んでみるか?
「まぁ、ウチはご飯物も作れるから安心してよ。何かワケありかい?」
ここは敢えてオブラートに包まずド直球。すると、
「実は俺、願掛けに酒断ちしてるんです。俺の部下であるこの娘達が沈まないように、って。恥ずかしいからあんまり人には言わないんですが……。」
かぁ~、泣かせるねぇ。良い話だ。オジサン感動しちゃったよ。それに比べてウチの奴等と来たら……(泣)。
「よしわかった、俺が今から最高の飯をご馳走するよ!さぁ、何でも好きな物を頼んでくれぃ。」
じゃあ、とばかりに奥の方に座ったウチの艦娘達からカクテルやらボトルやらの注文が飛ぶ。だぁから、お前ら少しは遠慮しなさいっての。
「さて、新米君のトコのお嬢様方は何を?」
「上司である提督が飲まないのに、部下である私達が飲むワケには参りません。」
そう言ったのは新米君のトコの日向。わぁお、この奥ゆかしさ。奥のテーブルで早速ビール髭を作ってる同一人物に聞かせてやりたい台詞。ならば、と俺はノンアルコールのカクテルを作り、残り全員に配る。俺も秘蔵の山崎を開けてグラスに注ぐ。
「何はともあれ妙な出会いだったが、こんな貴重な経験も無いだろう。さぁ、互いの鎮守府の発展と活躍を願って乾杯しよう。乾杯‼」
さぁ、楽しい一夜の始まりだ。
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