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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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18話『トーナメントへ向けて』

「デジモンとか言う生物のコントロールのための実験は上手く行った様だな」

 大量のカプセルの中に入ったモンスター達……その中に入った存在……その全てがスダ・ドアカワールドに存在しているモンスター達だ。蜂や鳥、蝙蝠と言った既存の生物やゴブリンを思わせる獣人の姿こそ持っているが、どの固体も何処か機械を思わせる要素を持っている。
 それらを囲って複数のローブを着込んだ魔導師のような異形の者達が相談していた。

「高い戦闘力がある固体は自我も強く、コントロールは難しい」

「だが、意志が弱く戦闘力の低い固体も存在している」

「配下のモンスターを介してのコントロールは、個々の戦闘力の高さを考慮しても益は少ない」

 デュナスモンが聞けば躊躇無く消し炭に変えそうな会話を続けている異形の魔術師達だが、その奥に同じ様な魔導師を思わせる姿の……明らかに上位者と思われる者たちその様を伺っていた。

「……なるほど、織斑秋八に篠ノ之箒か」

 その魔導師の中の一人が部下からの報告を聞いてそう呟く。彼等の足元には背中にクナイが突き刺さった姿で下忍が倒れているが、彼らはそれを意に介していなかった。間違いなく、隠密ガンダム達からの追撃から逃れられなかったのだろう。

「この二人か。中々使えそうだな」

「奴等の近くに居るこの二人の立場は上手く利用すれば、中々使える」

「では、この女に渡すISとか言う兵器の開発に入りましょう」

「まあ、それはわれ等の専門ではないがな。……寧ろ、奴等の世界で今後のデジモンと言うモンスター共のコントロールに適した物を入手することが出来た。残念ながら今は力は失っているがな」

 一人の異形の魔導師の表情が手の中に在る黒い輪を見据えながら笑みの形に歪む。力を失っているのならば再び力を与えればいい。彼らにはその為の手段が有るのだ。








「と言う訳で、件のキャノンビーモンはオレとデュナスモンが撃破した。だけど、今後また似た様な固体が出てくるかもしれないから、気をつけてくれ」

 複数の通信機を介しての報告。……主にキラービットに寄生されたキャノンビーモンと、現実世界に出現した擬似デジタルワールドについてだ。デジモンだけでなくスダ・ドアカワールドのモンスターまで出現する空間なのだから、警戒すると言う以外の選択肢はあるわけが無い。
 まあ、究極体でも上位のデュナスモンの力ならば、完全体のキャノンビーモン相手になら負けるほうが難しい。完全体が絶対に究極体に勝て無いと言うことは無いが、キャノンビーモン達の持っていた勝利する要素が不意打ちで襲ってきたブレイドクワガーモンに当たる。

「擬似デジタルワールドが街中に出現した場合、其処に閉じ込められた人達やデジモン達をモンスター達から救助、みんなも発見した場合の対処を頼みたい」

 デュノア社の事で一度G-アームズのメンバーがコマンドガンダムを除いてキャプテンガンダム達遊撃隊に合流しているため、一時的にだがDEMの本社の守りが手薄になっている。その為に武者ガンダム達や騎士ガンダム達の警戒は強まっているが……敵の攻撃に対する対応も機動力に優れたG-アームズが居ない事で遅れが出てしまうのも避けられない。

 巻き込む気は無いのだが、敵がデジモンまで利用している以上和人達だけでなく太一達の協力も必須だと判断していた。太一達もデジモンをそんな風に利用している奴らは許せない、と快諾してくれていた。

「続いて、此処最近の奇妙な事件について幾つかの報告をお願いします」

「では、私から」

 そう言って立ち上がって報告するのは騎士ガンダムの仲間の一人である『アルガス騎士団』の一人『法術師ニュー』だ。

「四季から報告があった町、我々の世界とは違う術式の魔法が使われた形跡が有りました」

 最後に此処最近では無く百年以上前に、と付け加える。流石に其処まで詳しい調査は法術師ニュー単独では無理だった様子だ。共に其方に向かった『剣士ゼータ』と『闘士ダブルゼータ』は其方の調査には向いていない。

 先日、一夏と一緒に遊びに行った先で聞いた彼の中学時代の友人が旅先で体験した話があるので気になったので調べて貰ったのだ。

「この世界にも魔法に属する力が存在していたのは驚きましたが、詳しい事は分かりませんでした。そして、もう一つ……秋葉原と言う場所で出た行方不明者についてですが……」

 つづいて法術師ニューの次の報告に入る。

「ふぅ……」

 通信が消えると四季は一度息を吐く。モニター越しで気心の知れた相手ばかりとは言え大勢の前でこんな風に話すのは熟れていないのだ。

「お疲れ様」

「ああ、ありがとう」

 詩乃から差し出されたお茶で喉を潤す。そもそもこの擬似デジタル空間を発見してしまったために彼女とのデートがお流れになってしまったのだから、その辺は悔やむ事しかできない。








(さて、隠密ガンダム達との連絡も無事に終ったな)

 ……どうも、先日の下忍の侵入に警戒して隠密ガンダム達が本格的にIS学園の中に幾つか拠点を作っていたりする。……四季が人目を気にしながら先ほどまで滞在していたのも其処である。

 完成したガンダム忍軍IS学園出張所、その全貌は忍者達しか知らなかったりする。……まあ、流石に学園の建物の中には本格的には作っていないそうだが。

 学園の景観のために植えられた木に偽装した入口を持った地下室(和室)の一つが四季が隠密ガンダム達との学園内での連絡に使う部屋となっている。他にも隠密ガンダム達が作った隠れ家は存在しているが、他の物は四季も知らなかったりする。

 流石に簡単に見つかる所には無いだろうが、其処を拠点に活動している以上、敵の暗躍を食い止める事が出来るだろう。寧ろ全ての拠点に機械が置かれていないので逆に見つかりにくいだろう。


『何故こんな所で教官など!』

『……やれやれ』


 そんな事を思いながら歩いているとラウラの怒鳴り声と千冬の呆れた様な声が聞こえた。

 慌てて隠れると何故か近くには同じ様に隠れている一夏の姿もあった。……流石に四季の行動で隠密ガンダム達の隠れ家が見つかるとは限らないが、思わず隠れてしまった。

「やっ、一兄」

「四季、なんでお前まで?」

「……つい」

 小声でそんな会話を交わす二人だが、直ぐに其方……千冬とラウラの方に視線を向けて聞き耳を立てる。

「あの声はラウラと千冬姉……だよな?」

「ああ、此処から見ただけでも良く分かる」

 流石にズボンタイプの制服を着た小柄な銀髪の少女など一人位しか居ないだろう。そんな会話を除いているとふと千冬の経歴を思い出す。

(確か一時期ドイツで教官をしていたって聞いたな……)

 だからでは無いだろうが、どうも千冬は教師と言うより『教官』と言うほうが相応しい。……本当に。

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

「この様な極東の地でなんの役目が有ると言うのですか!? お願いです教官、我がドイツで再びご指導を! 此処では貴女の能力の半分も活かされません!」

 千冬を説得しているラウラの言葉が熱を増していく。

「大会に出場さえしていれば二連覇は確実、世界最強の称号『モンド・グロッソ』の称号を持つ人間はこの世に教官ただ一人のはずなのです!」

(世界最強ね)

 ラウラの言葉に四季は疑問を浮べる。飽く迄IS乗りの中での世界最強でしかないと思っている四季にとっては、まだまだ狭い認識でしかないと思う。
 まあ、『この世界』と言う基準ではガンダム達は除外されるが、それでもデジタルワールドと繋がっている以上、最強と名乗るには其方の『最強』も超える必要が有るかもしれない。

(だけど……)

 悔しいが四季の剣はまだ千冬には届いていない。現行で最強の武器を使った上での最強の人間と言うのならば、それはあながち間違いではないとも認めている。

(本当の意味で、詩乃の為の勇者になるには届かせるしかないだろうな)

 己が剣で詩乃を傷つけるもの全てを叩く。その為の『世界最強』の称号など単なる手段でしかない。

(なるほど、ラウラのやつ、千冬姉の強さに直接触れてるからこそ、あんなに心酔しているのか)

 一方で一夏は彼女が何故千冬に心酔しているのかを知って納得していた。

「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません。意識が弱く、危機感に疎く。ISをファッションか何かと勘違いしている。その様な程度の低い者に教官が時間を割かれるなど……」

 ラウラの言葉に僅かに怒りを覚える。そもそも、ISは兵器では無く、その目的は宇宙開発のために有った筈……。ラウラの言葉を借りるならば彼女も『ISを兵器と勘違いしている』と言うべきだろう。

「其処までにしておけよ、小娘」

 ドスの効いた静かな声で千冬はラウラを一括する。

「少し見ない間に偉くなったな? 十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

「わ、私は……」

「さて授業が始まるな。さっさと教室に戻れよ」

 更に何か言い縋ろうとするラウラの言葉を斬り捨ててそう告げる。それ以上何か言い多層にしていたラウラだったが、走り去っていく。

(ラウラの言う通り、第二回IS世界大会も千冬姉の優勝は絶対視されていた……)

 一夏は千冬とラウラの会話で第二回IS世界大会の日の事を思い出す。

「なあ、四季……聞いてくれないか?」

「いや、話を聞いても良いけど、授業までの時間は良いのか?」

「と、兎に角聞いてくれ……。千冬姉が二連覇を果たせなかった理由は、何者かに誘拐されたオレを助けるために決勝を棄権したからなんだ」

「……あー、そう言えばそんな事も有ったな」

 一夏の言葉にふとそう思う。……ぶっちゃけ、四季も同じ時期に誘拐されそうになった。ドイツと日本で同時にそんな事を起せるのだから、相応の組織だったのだろう。なお、秋八は一夏と一緒に開催地となったドイツに居たのだが、上手く逃れたらしい。
 ……言葉通り千冬に助けられた一夏に対して、ギルモンで誘拐犯を撃破していたりする。成熟期……デジモンが単独で戦える上で最も弱い段階とは言っても、戦車並みの火力がある。……撃退された誘拐犯達が哀れでならない。

「ああ。世界最強の称号を捨ててまで助けに来てくれたあの日の千冬姉の姿はオレは今でも忘れられない……。凛々しく、力強く、そして美しかったその姿を……」

「愛されてるな、一兄は」

 一夏の言葉に内心で『オレと違って』と付け加える。同時に思い出すのは誘拐犯から自力で逃れた時に己に刻まれた『呪い』の事。
 四季は知らない……それは秋八が望んでいた『力』だった事を。彼の知らない最後にして最強の『Z』の力であると。

「千冬姉がドイツでISの指導をしたのもこの時ドイツに借りができたからで、ラウラはその時、千冬姉に指導を受けたんだと思う」

 確かにドイツの軍人のラウラと当時日本の国家代表だった千冬の接点と言えばそれ位だろう。だが、ラウラはその事で一夏を敵視しているが、同時にそれは……一夏が誘拐されなければラウラは千冬との間に接点さえ生まれなかっただろう。

「心酔する千冬姉がオレのせいで栄光を失ったから、ラウラはオレの事を敵視しているんだな」

「いや、秋八の事も敵視しているみたいだけど、そっちは何でだろうな?」

「さあ」

 ふと、秋八を敵視している事に対して疑問に思う一夏と四季の二人だが、それは考えても仕方ないと諦める事にする。

(……それが一兄を敵視している理由だって言うのは分かった。けどな……ラウラ・ボーデヴィッヒ。もし一兄が誘拐されなかったら……織斑千冬とお前は出会うことすらなかった。……それは分かっているのか?)

 彼女の言葉に四季はそう思ってしまう。そんな中一夏は溜息を吐く。

「でもな……称号なんか無くったって、千冬姉は最高の姉さんだよ」

「最高……ね」

 四季は冷ややかな視線を一夏へと向ける。四季にとっての千冬は既に姉では無い……何時から姉と思わなくなったのか……そんな事は既にどうでも良い。

「そろそろ授業の時間が近い。オレはもう行く」

「お、おい、四季」

 立去ろうとする四季を呼び止めようとするが、四季はそれに構わず立ち去っていく。

(……オレにとっては、きっと秋八にとっても千冬姉は最高の姉さんだ。……お前はそうじゃないのかよ、四季)

(……オレにとっては既に姉ですらない相手だよ……一兄)

 互いの考えはお互いに知らず。

(……詩乃、なんか……どうしようもなく会いたくなったな)

 彼女に触れたい、髪を撫でたい、温もりを感じたい。どうしようもなくそう思ってしまう。









 DEMのアリーナではトーナメントに向けての特訓に勤しんでいる四季の姿が有った。仮にもDEMの名を背負った企業代表である以上は一、二回戦で破れるなどと言う無様は曝せない。

 ……今の四季が操っているのはもう一つのヴレイブ……Hi-νガンダム・ヴレイブの全身にあたる機体『νガンダム・ヴレイブ』の強化型である『νガンダム・ヴレイブ+』。両腕に装備している武装はνガンダム・ヴレイブを使っていた頃に愛用していた万能武器と銘打たれている武装である『マーキュリー・レヴ』。

「ふっ!」

 レールガンと一体化した大型ブレードを一閃し、最後に残った訓練用のドローンを撃墜する。今回は訓練と言うよりもマーキュリー・レヴの外付け様の追加武装である大型ブレードとビームスピアのテストである。
 その為に態々古い機体の旧ヴレイブ、改めヴレイブ+を運用しているわけである。マーキュリー・レヴは高性能な武装でコストも高い反面、性能は高い。

「……悪くないな、これは」

 大型ブレードとビームスピアを眺めながら四季はそう呟く。元々のνガンダム・ヴレイブはフィン・ファンネルを装備から外してある代わりに本体の基本性能は高い。
 更にブレードアンテナを新型の物に交換し、各部のパーツを新しい物に変えてνガンダム・ヴレイブ+へと改修し性能は大幅に上がっているが、それでもHi-νガンダム・ヴレイブの方が高性能な辺り、その優秀さが伺えるだろう。

 テストを終えると四季はヴレイブ+を解除する。ヴレイブの予備機として何時使うか分からないので、時々テストするに越した事は無い。
 偶には昔使っていた機体を使うのも悪くないと思いながら、戻ろうとすると。

「お疲れ様」

 後ろから詩乃から声をかけられる。その声に気付いて振り返るが……彼女の表情を見て凍り付いてしまう。

「あ、あの……詩乃さん?」

「どうしたの?」

「ナニヲ怒ッテイラッシャルノデショウカ?」

 笑顔を浮べながら怒るという器用な真似をしている詩乃を見て思わず片言になってしまう四季だった。

「アスナと空から聞いたんだけど……」

「えっと……」

 何の事かと思って疑問に思うが、あの二人の友人がIS学園に通っていても不思議では無いだろう。

「『学年別トーナメントの優勝者は男性操縦者の誰かと交際できる』ってどう言う事?」

「え゛?」

 当然ながら何時の間にか広がっている噂話だが、四季も出所が分からなくて困っている話でもある。
 噂の原因は秋八と箒なのだが、そんな事は四季は知る由もない。

「い、いや……オレも何時の間にか広がっていて詳しい事は……」

「勝って」

「はい?」

「そのトーナメント、絶対に優勝しないと許さないわよ」

「えっと……」

 微かに震える声で言い切る言葉に彼女の中の不安の感情を正しく理解する。

「分かった。詩乃の為に優勝してみせる」

 DEMの名だけでは無く、詩乃の願いまで背負った以上……四季に優勝以外はありえない。

「勝利の栄光を(詩乃)に捧げる」

 騎士ガンダムの影響か……ちょっと気障な台詞で彼女に優勝する事を誓うのだった。








「「…………」」

 翌日……IS学園の教室で何とも言えない表情を浮べている四季とラウラの姿があった。先日、トーナメントで決着をつけると言う約束を交わした訳だが……目の前の張り紙には、『緊急告知』の見出しと共に『タッグトーナメント』に変更になった旨が書かれていた。

「一対一じゃなくなったな」

「ふん、そんな物は関係ない」

「……だけど組んだ相手によって戦況は大きく変わるな。関係ないとは言えある程度取り決めをしておいた方が良いんじゃないのか? オレやセシリアの武装は正しく理解すればお前との相性は最悪なんだか」

「ぐっ……お前だったのか、わが国のISの機密を他国の人間にベラベラと喋ったのは!?」

「DEMの情報網を舐めるな。……大体、オレはBIT兵器が有効になる一例としてあげただけだけど……悪かった」

「悪かったで済むかぁー!?」

 『うがー』と吼えるラウラに微笑ましい物を見る目が集まる中、四季は思わず視線を逸らす。ラウラとシャルロットが転校してくる前、秋八が居ない時に一夏達の訓練に参加した時にBIT兵器が有効な相手の一例としてドイツの第三世代機『シュヴァルツェア・レーゲン』の能力と武装を含めてベラベラと喋っていたりする。……システムの持っている弱点まで含めて、だ。

 先日、鈴とセシリア二人を相手に一戦交えた際に……完全に把握されている期待性能な上に、弱点もしっかりと突いてくる二人に原典と呼ばれた世界とは違い返り討ちにされたらしい。

 自分の国の最新鋭の第三世代機の性能をベラベラと喋った挙げ句、どうやって知ったのかも分からない相手に、混乱と同時に怒りで叫んでいた。
 企業スパイと言う訳ではないが、結構ガンダム忍軍を初めとしたスパイ能力の高いメンバーが活動してくれた結果だった。

「それが、DEMクォリティだぜ」

「そんなんで納得できるかぁー!!!」

 叫び疲れて肩で息をしているラウラを他所に張り紙へと視線を戻す。

「何々、『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦を行なうため、二人組での参加を必須とする』か。……セシリア辺りと組めばラウラ対策は確実に出来るか」

「ちょっと待て、即座に私の攻略法を思い浮かべるな」

 フィン・ファンネル&ブルー・ティアーズとフィン・ファンネル使いながら自由に動きまわれる四季による一斉攻撃の図。
 想像図の様に代表候補生と言う事で実力も高い彼女と組めば高い確率で優勝までいけることか出来るだろう。何気に今の四季は詩乃との約束で優勝を狙っている。その為に一番の強敵に対する対抗策を練るのは当然のこと。だが、問題はセシリアが四季へと持っている好意だ。

(……待てよ、そうなると一兄は誰と組むんだ?)

 ふと、そんな事を疑問に思う。一夏のタッグパートナーは鈴だとは思っていたがそうなると問題はシャルロットだ。
 ……今のところ学園で『シャルル・デュノア』の正体が『シャルット・デュノア』だと知っているのは一夏と四季の二人……二人は知らないことだが、秋八も知っていたりするが、それはそれ……。下手に四季と一夏以外の生徒とタッグを組むと彼女の正体がバレてしまう危険が有る。

 そんな訳でシャルロットの問題を考えると一夏か四季は必然的に彼女と組む事になる。……シャルロットの事は一夏に押し付けるとしても。

(誰と組むべきか……)

 ふと、ルールを見ているととある一文に目が止まる。流石にトーナメント当日までにパートナーが決まらないから不戦敗と言うのは問題と言う事で、一定期間までパートナーが決まらないと『抽選』が行なわれるらしい。

「だったら……お互い抽選でパートナーを決めるって言うのはどうだ?」

「ふんっ! 条件は同じと言う事か……舐められた物だな」

「正々堂々と同じ条件で決着をつけると言う事だけど……どうだ?」

「そんな物邪魔をしなければそれで良い、貴様が誰と組もうと私が一人で倒してやる」

 そんな形で話は纏った。余談だが四季と組もうとしていた一組の生徒達は二人の話しにがっかりとしていたそうだ。……こうして、この時は話は纏ったのだが、



 抽選当日……

 抽選の結果を見てポカーンとしている二人……四季とラウラの二人。

「何でこうなった?」

「運が良いのか? いや、この場合……悪い……のか?」

 二人としてはそう言うしかない結果が出てしまった。傍から見れば運が良いだろう……二人の引いたカードは抽選のカードの中では、間違いなく一番の当たりクジなのだから。

「なんでよりにもよってお前が当たるんだぁ!?」

「運、だろ?」

 対戦相手として決めていた相手がパートナーになってしまったと言うのが最大の問題点だったりする。


 『五峰 四季』、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』……現時点で一年生最強のタッグここに結成。


 当の本人達は納得できない相手だったが。

 二人のタッグを見た瞬間、大半の生徒が優勝の目論見が潰えて肩を落しているのだが……それはそれ。『一夏くんとの交際が』『四季君と付き合うチャンスが』『秋八さま~』とか言っている生徒の他に居るのは、純粋に恋愛に興味がなく優勝を狙っていた生徒達だろう。
 専用機持ちがパートナーになれば優勝も狙えたのだろうが、一年の専用機持ちは全員が全員専用機持ち同士でタッグを組んでいるので、殆ど一年の優勝は絞られた訳だ。

 だが、この二人に限って言えば、はっきり言って運の悪いのか良いのか分からない二人だった。 
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