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干物女

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第五章

「それでね」
「交際してからもなの」
「その交際をどんどん進めていく」
「そうするのね」
「そうした本も読んでるから」
 恋愛関連の本もというのだ。
「やってやるわよ」
「勉強までしてるのね」
「これはもう本物ね」
「普通交際するまでなのに」
「それからも考えてるなんて」
「だって交際してすぐに別れたりしたら」
 それこそというのだ。
「意味がないでしょ」
「まあそれはね」
「本当にその通りだけれど」
「けれどこの前までミス帰宅部で干物だったのに」
「全然違うじゃない」
 そのことについて思うクラスメイト達だった、とにかくだった。
 亜衣実は一変した、恋愛研究家と言ってもいいまでにファッションからデート、そして恋愛のことまで調べていってだった。勇斗を見ていた。
 毎日毎日百貨店の屋上に行ってだ、そのうえで。
 彼も見た、物陰に隠れて見ているつもりでもだ。
 その亜衣実にだ、ある日の放課後友人達は呆れて言った。
「隠れてないわよ」
「それ出来てないわよ」
「あんた今かなり目立ってるから」
「こっそりにはなってないわよ」
「あれっ、皆どうしているの?」
 クラスメイト達が後ろや横にいるのを見てだ、亜衣実は彼女達に顔を向けて尋ねた。
「今ここに」
「あんたが心配だから来てみたのよ」
「またここに来てるんじゃないかって」
「最近毎日ここに来てるみたいだし」
「それで今日かもって思って来てみたら」
「やっぱりじゃない」 
 まさにというのだ。
「いるし」
「その見方もうストーカーだから」
「止めなさい、こっそり見られてないから」
「そうしたこともね」
「私小さいし」
 自分の小柄さも理解していて言う。
「だからって思ってたけれど」
「小さくても着こなし目立ってるわよ」
「メイクもしてアクセサリーも付けてるし」
「髪型もセットしてるしね」
「全部が前と違うから」
「干物女だった頃と」
 見ればまさに別人だった、干物というか原石がダイアになった、そこまでの違いがあった。
 その見違えた亜衣実にだ、友人達は言うのだ。
「変わったから」
「目立ってるからね」
「隠れられてないわよ」
「私達が見てもわかるし」
「もうバレバレ」
「探偵は絶対に無理よ」
「探偵になる気はないから」
 亜衣実にしてもそこは言う。
「なりたいのはね」
「紀里谷さんの恋人」
「それになりたいっていうのね」
「そうよ」
 あくまで、というのだ。
「探偵には興味ないから」
「やれやれね、けれどね」
「こうして見てどうするのよ」
「かえって怪しくてドン引きよ」
「ガチストーカーにしか見えないから」
「実は今からね」 
 ここでだ、亜衣実は懐からあるものを出した。見ればそれは。
 一通の封をしてある手紙だった。クラスメイト達はその手紙を見てすぐに察した。
「ラブレター?」
「ピンクの封までしてるけれど」
「それを今からなの」
「紀里谷さんに渡すのね」
「そのつもり、けれどね」 
 亜衣実は死にそうな顔になった、そのうえでクラスメイト達にこう言った。 
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