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先恋

作者:マナ
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先恋〜罪〜

 
前書き
ちょっと、大丈夫かな?ってお話です!
すみませんw
宜しくお願いします! 

 
陸太はベットの上、あの日を思い出した__。

アレは、陸太が沙奈と別れ、夏休みが明けてしばらく経ったある日……____。


「陸太君、おはよう」
当時小学生の陸太には、唯一無二と言える大親友がいた。その子の名は〝柿園 春馬〟。
勉強熱心で、頭脳明晰だったが、身体が弱く、運動は不得意だった。小学校二年生位の時、喘息で発作を起こし、余りに酷いと、少し長めの入院した事もあった。身体が弱いだけでなく、重度の喘息だった。そんな春馬は、激しい運動や、精神的ショック、極度な緊張などには滅法弱かった。
「おはよ、春馬、」
「今日も体育あるんだよね、僕もいつか…みんなと体育…したいな、」
「すぐできるよ!そしたらさ、僕と一緒に中学校とかで、駅伝とか出てさ、一緒に区間賞とか何とかってやつ、取ろうね!」
陸太と春馬は、基本的な性格に余り違いはなく、春馬にとって、陸太は誰より信用出来る、親友だった。勿論、陸太にとっても…

「今日も帰りに公園行こうね!」
「うんっ、」
二人は周りから羨ましがられる事もある程の仲の良さだった。お互いにとって、お互いが自慢できる存在だった。春馬は陸太と、陸太は春馬と居る時が何より楽しかった。
「今日は公園で何する?」
「あ、そーだ、夏休みに、高校生の人と会ったんだけどさ、その人にだけ教えてる秘密の場所、春馬にだけ、教えてあげる!」
「本当?ありがと!陸太君!」

二人は本当に仲が良かった。喧嘩をしてるのなんて、誰も見たことは無かった。実際に、喧嘩をした経験なんて無かった。






学校も終わり、二人は少し早足で公園へ向かった。春馬の身体に気を遣いつつも、人が少ないうちに行きたかった事もあり、二人は駆け足で向かった。
「ハァ、ハァ…フゥーッ、春馬、大丈夫?」
「うん、大丈夫、だよ、」
春馬は発作を起こす事もなく、走れた事を嬉しく思っていたのか、ニコッと笑った。
「じゃあ、秘密の場所、行こう!」
「うん!」
二人は大人に見つからないよう、そっと、山道に入っていった。この時、山道に連れて行かなければ、あんな事にはならなかったのに…。

「陸太君、まだ?」
「疲れた?あと少しだけど…休む?」
「大丈夫!行こ!」
春馬は陸太と二人だけの秘密を持てる事を嬉しく思っていた。だからこそ、疲れはいつも程、感じなかったのかも知れない。

其れから二人が少し歩いたところに、その場所はあった。
「わぁっ!景色も綺麗だし、広いし、良いね!此処、僕と陸太君だけの場所なんだよね!」
春馬はうわぁーっと、嬉しそうに笑っていた。そんな春馬を見て、陸太もつられて笑った。

其れから、どれほど経っただろう?騒がしかった公園の声も聞こえなくなり、少し薄暗くなった。
「そろそろ帰ろっか、」
「うん、また明日も…」
「当たり前!来るよ!」
陸太と春馬は拳をぶつけ合い、クスクスと笑った。
「あ、ちょっと待って!」
何かに気付いたのか、春馬が草むらに手を伸ばした。何かを取ると、其れを陸太に差し出した。
「四つ葉のクローバー!あげる!」
「じゃあ、僕も探す!」
陸太も四つ葉のクローバーを探し出した。帰ろうとしていたはずなのに、また、時間を忘れて二人はクローバー探しに夢中になった。
「うーん…よく見えないな…」
「り、陸太君!帰らなきゃ、怒られちゃう!」
「え…?あ!本当だ!」
山の中である事もあり、視界は殆ど見えないほど暗くなっていた。
「うわぁ…迷子になりそう…」
…と、その時、ポツリと雨粒が降ってきた。二人は空を見上げ、早く帰らなければと焦りだした。雨は直ぐに激しくなり、土砂降りになった。早く帰っていれば、雨に当たることは無かったのだが…。
「えっと、あれ?何方だ?えっと…あ、こっちか!」
突然の雨で気が動転していた二人。陸太は春馬の身体の事を忘れ、全力で走り始めた。春馬も其れに続いて、出来る限りの全力で走った。


少しして、公園に出た陸太は、首を激しく横に振った。風呂上がりかとでも言う程に髪も濡れ、服もビシャビシャだった。
「春馬、だいじょ……春馬‼︎⁉︎」
春馬が居なかった。陸太はまた、山の中に戻った。走り回り、春馬を探した。
「春馬ぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

「陸太君__」


何処からか、小さな声が聞こえた。春馬だった。陸太は声の方へ走った。
「春馬‼︎‼︎」
そこへ行くと、春馬は木の枝につかまっていた。足を滑らせたらしい。此処から落ちれば、小学生の背丈骨折くらいはするだろうかという高さだ。
「春馬‼︎」
陸太は春馬に手を伸ばす。春馬も、陸太の手を掴もうとする…と、その時、
「グフッ、ゴホッ、ゲホッ、ゴホッ」
春馬が咳き込み始めた。そして、少しずつ、過呼吸になる。発作が始まった。陸太は泣きそうになりながら、必死で手を伸ばした。春馬は苦しそうにしながらも、枝につかまっていたが、ついに…………、手を滑らせてしまった。

「春馬‼︎」
陸太が春馬に声をかける。春馬は答えないどころか、動きもしない。
「春馬‼︎春馬‼︎‼︎」
春馬は動かない。…と、小さく、「コホン」と咳をした。息はある。何処かを痛めてしまったらしい。
「春馬‼︎春馬‼︎」
陸太は叫ぶ…が、春馬は動かない…と、小さな声で、一言、

「大人…呼…で」

大人を呼んで欲しい。春馬はそう言った。だが、陸太は恐くなった。大人を呼んで、その後何を言われるか…其れが恐かった。

「で…も…」
親友を失いたくない…陸太が悩んでいる時間も、春馬の命に関わっていた。
「お…と……………」

春馬の声が聞こえなくなった。
「…春…馬…?」

陸太は春馬に呼びかける…が、返事はない。気を失っただけか?其れとも…。

陸太は必死で山を下った。そばに居た見ず知らずの大人を連れて行った。その人は、救急車を呼んでくれた。春馬が搬送された後、陸太は家で一人、震えていた。

「春馬…ごめん、ごめん、ごめん……」



後日、春馬の死亡が伝えられた。
喘息の発作でショック状態に陥ったことが原因だった。もし、あの時、悩まずに走って行っていれば、何とかなったかもしれない。いや、もっと前から、最初から行っていれば……。

「ごめん…ごめんな、春馬…」


此れが原因で、陸太は同級生、一部の保護者、地域の住民から、犯罪者呼ばわり。苦しさを軽くするために、と、母の決断を元に、引越しを決めた。



______此れが、全てだ。


あの日を思い返し、陸太は後悔した。

「そうか…あの日から、何も変わって無かった…。僕と関わった人を、僕は不幸にするんだ…。瑞木さんと別れて、正解だったんだ…」


そして、心の中で決意した。


沙奈の事は、忘れると____。



 
 

 
後書き
ありがとうございます‼︎
如何だったでしょうか?
人間、後ろめたい過去の一つや二つはあるものですね、
さて、此れからどうなるのやら、
此れからも宜しくお願いします! 
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