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ライブラリー=ラブ

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第七章

「ああ、夜空じゃないか」
「あれっ、あんたも図書館に来たの」
「本を探しててな」
 それでとだ、打ち合わせ通りに返した。
「それで来たんだよ」
「そうなのね、それで本は見付かった?」
「これな」
 プーシキンについて書かれた本を出して言った。
「この本を探してたんだよ」
「あっ、それは」
 寿美礼は慎が差し出したその本を見て声をあげた。
「プーシキンの」
「寿美礼が好きな作家さんよね」
「そうなの」
 寿美礼は真礼に答えた。
「ロシア文学の中でもね」
「そうよね、それであんたも」
 何気なくを装って慎に顔を向けて彼に問うた。
「この人に興味あるの」
「ああ、それで探してるんだけれどな」
「今からこの本読むの?」
「この図書館でな」
「じゃあ席空いてるから」
 真礼は寿美礼の向かい側の席をだ、慎に指し示した。無論席についても真礼が考えてそれで指し示したのだ。
「そこに座って読んだら?」
「そうしていいか?」
「いいわよ、寿美礼もそれでいいわよね」
「ええ、ただこの人もロシアに興味あるの」
 寿美礼は慎を横目で見ながら真礼に顔を向けて尋ねた。
「そうなの」
「そうみたいね、じゃあロシアの話もする?」
「こうしたお話って興味ある人少ないし」
 世間やドラマや漫画や遊びの話ではないからだ、文学の話になるとどうしてもその相手が限られるというのだ。
「だからね」
「じゃあ好都合だし」
「うん、それじゃあ」 
 こうしてだった、寿美礼は自分から最初は敬語でやがて同級生ということで普通の喋り方になってだった。
 慎と話をした、慎は真礼の仲介を受けつつ寿美礼と話した。
 この時から寿美礼と話をする様になってだ、共にいる時間を過ごし。
 真礼のアドバイスを受けて余ったからだの適当な理由をつけて寿美礼の好きなものを彼女にプレゼントする様にもなった。
 そしてだ、やはり頃合になったと見てだった。
 真礼は慎を屋上に呼んでだ、彼に告げた。
「今日は図書館で二人だけにしてあげるから」
「今日か」
「あんた達だけで話して、そしてね」
「そのうえでか」
「まだ告白は早いけれど」
 それでもというのだ。
「二人だけで話をしなさい、はじめてね」
「わかった、じゃあな」
「あの娘あんたのことは悪く思ってないから」
「本当にか?」
「演劇部の部活の時とかに私が話を振ってあんたのことも聞いてるけれど」 
 その時にというのだ。
「悪いことは絶対に言ってないというかね」
「いいことをか」
「言ってるから」
 だからだというのだ。
「悪いとは思われてないわ」
「それは何よりだな」
「いい感じで進んでいってるわ、だからね」
「このままだな」
「親密になっていくのよ」
 ベンチに座ったうえで自分の前でフェンスに背をもたれかけさせて立っている慎に強い声で言った。 
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