提督はBarにいる。
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EX回:9 鎮守府の秋祭り~当日編⑤~
前書き
漸くいつもの感じのシーンが出てくると思います。
改めてビス子……もといビスマルクの男装を上から下までまじまじと眺める。普段の制服も黒を基調とした制服だ。ボディラインが出やすい構造のお陰でスタイルが良いのは解っていたが、やはりスラリと伸びた脚が長いからかスカートではなく細身のタキシードでも着こなしてしまう。何ともまぁ、モデル体型ってのは羨ましい。
……え、俺は着ないのかって?俺は良くも悪くも日本人的な胴長短足だから、あんまり似合わねぇんだよ。それに堅っ苦しいのは苦手なんでね、Tシャツに短パンもしくはカーゴパンツ。その位ラフな格好の方が性に合ってる。そ れに、そんな気取った店には見えないだろ?その方が。
「な……何よ、そんなにジロジロ眺めて。どうせ似合ってないとか言いたいんでしょ!?」
ビス子(結局直さない)は頬を真っ赤にしてうっすらと目に涙を浮かべながら怒鳴っている。何だこれ、俺悪者みたいじゃん。
「いや?フツーに似合ってるだろ。お前スタイル良いから、やっぱこういうバーテンダーっぽい衣装って脚長いと似合うよなぁ。」
俺は素直な感想をビス子にぶつけると、顔が更に赤く染まり、そっぽを向くと、小声で
「…………Danke.」
と聞こえた。やっぱ性格が暁そっくり。精一杯背伸びするけど、素直になれない。けれども礼儀はしっかりしてる。だから『デカい暁』とか言われちゃうんだろうなぁ、多分だけど。あと、後ろの方で「Shit!」とか聞こえた気がするが、まぁ気にしない。
「あ、提督。来てくれたんだ!」
「おー、レーベか。お前のそれも似合うなぁ。」
見るとレーベは普段の制服である上下一体となったアレではなく、伝統的民族衣装の……ディアンドル、だったか?エプロンドレスを着て、艤装も艦上構造物を取っ払った様な形の物をトレーの代わりにしてビールを運んでいる。見るとマックスとプリンツ、それにユーことU-511も揃いのディアンドルを着て接客している。
「あ、そうだ。提督にちょっと相談なんだけど……。」
「あん?」
レーベが耳元に右手を当て、コショコショと囁いてくる。
『実は……ビール以外のドリンクメニューを考えて、ビスマルクに教えて欲しいんだ。』
聞けば、オクトーバーフェストを再現する為にビールは色々な種類を用意したのだが、どうにも売上の伸びが悪い。特に女性があまり注文してくれない、と。
「ははぁ、それで俺に白羽の矢が立ったワケだ。」
「うん。どうにかならないかな?」
そう言われては手伝わない理由はない。チラリと大淀に目配せすると、仕方ありませんねとでも言いたげに肩を竦めた。さぁて、やっちゃいますかねぇ。
取り敢えず、フードメニューとドリンクメニューを見せてもらう。
『料理のメニューは……ザワークラウトにプレッツェル、グラーシュにヴルスト(ソーセージ)等々、まぁ初めてドイツ料理を食べる人でも親しみやすそうなメニューが並んでいる。』
『ドリンクメニューは……と。ハイネケン、ビットブルガー、レーベンブロイ、シュナイダー=ヴァイセ、ラーデベルガー、ヘニンガー、ベックス、クロンバッハ、イエファー、ホルステン、エルディンガー、ドム=ケルシュ……まだまだあるが約20種類か。よくもまぁビールのみでこれだけ集めたモンだ。』
さてどうしたものか。仮にもオクトーバーフェストを名乗っているのだから、出来る事ならビールを使う方が良いだろう。女子ウケが良い物も変わり種の物も、何種類か教えた方が良いだろうな。
「お~いビス子~。こっち来~い。」
「だから、ビス子って呼ばないで、って……。」
瞬間、俺はビス子の口に人差し指を当て、黙らせる。
「折角のバーテンダーの衣装だ、それを活かして稼ぐのはどうだ?」
そう言ってニヤリと笑って見せた。
「おー、妖精さん。サンキューな。」
大淀が頼んでくれたらしい、妖精さんがカクテル作りに必要な物を一式、持ってきてくれた。俺は白い軍服を脱ぐと、軽く手を洗う。
「さてと、小規模ながらオクトーバーフェストを名乗っているんだ。ビールを使ったカクテルをお前にご教授しましょう。」
「あら、ビールはそのままが一番美味しいに決まってるじゃない。」
お前ねぇ、そういう身も蓋も無いこと言うんじゃないよ全く。まぁ良いさ、ビス子に頼まれたんじゃなくてレーベに頼まれたんだし。
まずは定番ぽいのから行くか。タンブラーにビールとジンジャーエールを半々注いで出来上がり。
「ほい、まずはシャンディガフな。」
「早っ!雑っ‼」
雑じゃあねぇよ。だってステアしたら折角の泡が消えるだろうが。使うビールは色味を考えてピルスナー系が良いだろうな。……あ、解らない人の為に解説すると、ピルスナーってのはビールの大別した種類の中の1つな。世界的に最も醸造され、そして飲まれている黄金色のビールだ。日本でビール、って言ったらまぁコレだわな。ピルスナーしか知らない人とか居るみたいだし。味としてはホップの苦味を活かしたスッキリサッパリした飲み口が特徴か。
取り敢えずビス子に試飲させる。
「ん……ビールが苦手な娘には良いかも。苦味が緩和されるし。」
そうなんだよな、ビールベースのカクテルって、基本『苦手なビールを如何に飲みやすくするか?』ってスタンスで作られてる物が多い気がする。
次も簡単な混ぜるだけの一杯。ピルスナーグラスにビールとレモネードを半々。ステアは炭酸を掻き消さないようにあくまで軽く2~3回。
「さぁ、『パナシェ』の完成だ。フランス語で混ぜ合わせた、って意味だぞ。」
「さっきのシャンディガフは生姜がビールを引き立ててたけど、こっちはレモネードと甘さとビールのほろ苦さがマッチして、ちょっとだけオトナなドリンクね。駆逐艦の娘達が好きそう。レモンのお陰で爽やかな後味だし。」
一般家庭で簡単にやるなら、アサヒのスーパードライにC.C.レモンがオススメだ。ビールが苦手な人にも是非とも飲んでみて欲しい一杯だ。
さぁ、どんどん行くぞ。タンブラーグラスにカンパリを45ml注ぎ、そこにキンキンに冷やしたビールを適量注ぐ。するとあら不思議、黄金色のビールが鮮やかなラズベリーのような赤に変わる。
「さぁ出来た、『カンパリ・ビア』だ。」
「へぇ、カンパリとビールのほろ苦さが混ざり合って、不思議な感じ。けど全然嫌じゃないわ。」
見た目にもお洒落だから、パーティなんかにも良いかもな。まだまだ、ビールを使ったカクテルはこんな物じゃないぞ。
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