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宇宙戦艦ヤマト2199 元爆撃機乗りの副長 4
『くっ、なんであんなミサイルだらけでバランスの悪いファルコンを振り切れないの!?』
「まあ、腕の差って奴だな。腕の良い奴の飛び方ってのは教本通りで読みやすいからな。だから、こんなことも出来る」
増槽を切り離す準備をして、教本には載っていないドッグファイト中の宙返りを行い始めるタイミングで切り離す。
『えっ、きゃああああ!?』
切り離した増槽にゼロが衝突し爆散する。画面が暗くなりシュミレーションが終了する。
「やっぱりあれを食らったか。玲、気にするな。オレも篠原もあれを食らって負けてる」
「副長の得意技の一つだからね。まあ、あの爆装ファルコンでゼロに食いつくってだけで異常だから」
「……はい」
「最新鋭の機体に長くて2年しか乗っていないひよっこに、あらゆる機体に10年以上乗って色々なことをやってきたベテランパイロットが負けてたまるかよ。『禿鷹』の二つ名は伊達じゃないんだよ」
「それ、半分スラングですよね?」
「機体が重いから戦場にたどり着くのが遅くて、露払いが終わった頃に戦場にたどり着いて対艦攻撃ばっかやって戦果を上げてついた二つ名だからな。文句を言ってきたやつは全部シュミレーションで伸してきた」
「ひでぇ」
「篠原君、重力下設定で爆装してないファルコンでサシでやりたいって?」
「なんでもありません!!」
くくくっ、大分参ってるみたいだな。ピッタリとケツについて離れずに振り回され続けたのが。さてと、とりあえずはデータを引っこ抜いてっと。
「山本君、今回のオレのデータだ。参考にはならないと思うが、見ておいて損はないと思うよ」
「ありがとうございます」
「おう。それじゃあ、加藤君、またあとで」
「副長はどちらへ?」
「解析室の方にな。そろそろあの回収したアンドロイドのデータがまとまった頃だろうから」
「ああ、あれですか。オレはどっちかって言うと銃のほうが気になりましたけどね。なんすか、あれ?拳銃型はT型で握り込むようにして引くのと、ライフルの方はチェンバー部分を押し込んで撃つとか」
「地球のとは大分違うよな」
「威力は大して変わらないみたいですけどね。艦の性能はあれだけ違ったってのに、なんでか分かります?」
「簡単だ。ガミラス共は肉体的な能力に関してはオレたちと大して変わらないんだよ。少数の相手にロケットランチャーを乱射するようなオーバーキルの必要はないだろう?」
「そりゃあ、そうっすね」
「艦の性能の違いはそれだけ奴らが宇宙に進出している証拠だ。地球みたいに色々な星に攻め込んでいるんだろうな。どう考えても慣れていやがる。艦隊運用も地球より洗練されていやがった。ただ、機械的な動きも多いからな。生身の兵士は少ないんじゃないか?それを補うアンドロイドってところだろう」
「そんなもんなんすかね?」
「それを知るために解析を頼んでるんだよ」
「技師長、ガミラスのアンドロイド、めんどいからガミロイドでいいか。解析の方はどうだ?」
「色々と分かっています。詳しいことはいつものように資料にまとめてから補佐を付けます。とりあえず、これを地球の技術で再現することは不可能です。そして、一番重要なところは単純なプログラムの多重処理によって動くアーキテクチャで構成されていることです。これは地球の人工知能と基本的には同じです。つまり、ガミラスは同じ数学・物理学を有しているということです」
「まあ、何となくは想像付いてたがな。あいつらの航空機、運用の違いとデザインの好みの違いだけで地球の航空力学に沿って作られてたし。電文で会話できているからコミュニケーションも可能。拳銃やライフルから肉体的にも似ている。嫌だねぇ、非常に知りたくなかった」
「やはり副長もそう思われますか?」
「現実逃避しようぜ、技師長。ロマンを求めて起源の方に目を反らそうぜ。ほぼ二択の答えしかないけど」
「どちらに賭けますか」
「似たような環境下によって似たような進化が起こった方に」
「では私は同じ起源から個々に分かれてしまった方で」
オレと技師長の賭けに解析室にいた技術科の者たちが嫌そうな顔をしている。
「あの、副長、技師長、どちらの方が確率が高いのでしょうか」
「実際にガミラス人を見たことがないからなんとも言えないな。気分的にはオレの案の方が良いんだけどな」
「技師長の方でしたら?」
「地球の歴史にある人種による戦争と何ら変わらんな。規模がでかいけど」
その答えに技術科の者たちの顔が更に歪んだ。
「これより、メ2号作戦の概要を説明を始めます。この作戦はガミラス基地の壊滅を目的としています。冥王星はガミラスの環境改造により海まで存在するようになった準惑星です」
古代君がそう言って床のモニターに冥王星の地図と赤い光点が表示される。なんだ、これ?
「これは冥王星の地図とその地表に観測された熱量を表す光点だ。このいずれかがガミラスの基地だと思われています」
「技師長、そんなのがあったのか?」
「副長はご存じなかったので?」
「知らんな。メ号作戦の時に説明されてたかもしれんが、艦隊決戦で死ぬ気満々だったからな。で、特定はされてないのか?」
「はい。残りは惑星環境改造プラントだと思われます」
「ふ~ん、もうちょっと地図を拡大できないか?」
「少しお待ち下さい。こちらが最大ですね」
新しく表示された地図はなんとか地形が読み取れる程度に拡大された地図が表示される。
「ふむふむ。戦術長、このあとの説明に技師長はいるか?」
「えっ?いえ、大丈夫ですが」
「なら技師長、ちょっと来てくれ。作戦内容はオレが知っているからちょっと付き合ってくれ」
「艦長?」
「うむ、何か考えがあるのだな副長」
「せめて優先順位ぐらいは付けたほうが良いでしょう。出撃までには技師長と割り出します」
「よかろう。技師長、頼むよ」
「了解しました」
というわけで技師長とともに作戦室の端の方で特定を行う。
「技師長。人的資源を優先してコスト度外視で簡単に遊星爆弾を作るとしたら、どうやるのが一番楽だ?」
「そうですね、艦に巨大なレーザー砲を搭載し、可燃性のガスか、水分を含んでいるアステロイドを爆発、または蒸発させて地球への軌道コースに乗せます。ですが、専用の艦を作る必要があります。それがあるとは思えないですね。また、エネルギーの供給も難しそうです」
「エネルギー源が必要か。なら基地に併設するように固定砲台ならどうだ?」
「固定砲台の場合、遊星爆弾を作るのが難しいのです。わかりやすく言うと超ロングレンジ攻撃ですから。様々な計算を行い、弾道コースに乗せれるアステロイドを探し、そのアステロイドが水か可燃ガスを含んでいなければならないのですから」
「なるほど。射角が取れないのか。じゃあ、どうやって奴らは遊星爆弾を作っているんだ?」
「それは、分かりません。ですが、技術者から言わせればこれが一番の最適のはずです」
「そうか。エネルギー量はこれらのどの地点の熱量から推測されるエネルギー量でも足りるのか?」
「いえ、これらだと無理でしょう」
そう言って13個のうち5個が消える。
「残り8か。他にレーザー砲を使用したとして欠点は?」
「排熱でしょうか?高出力であればあるだけ熱量も大きくなります。それに砲身が耐えれなければ失敗作と言ってもいいでしょう」
「となると冷却にも工夫がいるな。となると水冷式か?」
「レーザーをですか?」
「別に沈めなくても近くに大量の水があるならそれで冷やすだけだからな。それで更に絞り込むとどうなる」
「少々お待ちを。こちらです」
残り2つとなるが、どちらも熱量が微妙に小さいな。何かを取り間違えている。
「もう一度全てを表示してくれ。出来ればフィルター毎に色を変えて。あと、海を表示して」
色を付けてもらった地図を凝視する。絶対に違和感があるはずだ。そして見つける。地形の問題で一番熱量が少ない場所の近くに空いている空間を。大型クレーターで一部が湾になっている。どうやっているのかは分からないが、ここが基地を作るなら最適な場所だ。技術屋じゃ分からない軍人の考えだからこそ導き出される答えだ。これで本命、対抗、大穴が決まったな。あとは、どうやって固定砲台の射角を取っているかだが。う~ん、レーザーか。レーザー、レイ、光線、光、光?光か!?
「技師長、レーザーってことは光線なんだよな」
「ええ、そうですが」
「ってことわだ。減衰するだろうが反射させることが出来るってことだよな」
オレの言葉に真田君が驚きの表情を見せて興奮する。
「それは盲点でした!!それなら確かに固定砲台でも可能です。中継用の機材を用意すれば減衰率にもよりますが、理論的にはどの場所へも精密狙撃が可能となります!!」
「やはりか!!となると、オレはこの位置がかなり臭いと思う。十分な土地があり、海も側にある。絶好の場所なはずなのに何も無いのが実に臭い。軍事的に見ても冥王星の裏ということは地球から艦隊が来てもいきなり攻撃を受けることもない。だが、熱量が感知できない」
「何らかのフィールドで覆っているのでしょう。ですが、物理的にはフィールドを超えれるはずです。物理的に干渉するなら何らかのエネルギーが観測されますから」
「よし、ならば此処が本命だ。対抗として一番熱量が高い場所、大穴で一番熱量が少ない部分の3編隊でどうにかするか」
「ヤマトはどうします?」
「当初の予定通り囮になるのだが、派手にやる。本来なら艦隊戦をやるのだが、オレなら波動砲を恐れてやらない。そしてこのレーザー砲で潰そうと考える。そこで、まともに受けてやろう。外側の装甲が破られるのを前提にして冥王星に強行、そのまま偽装撃沈まで持っていく。撃沈ポイントは此処だな」
「基地からは大分離れていますね」
「だが三式弾の射程内だ。それにここなら最低でも3機の中継機が必要になるはずだ」
「なるほど。では、この案で?」
「古代君の案は艦隊決戦中に基地を爆撃するという案だからな。両方で推し進める。艦長、意見具申!!」
ちょうど説明が終わった辺りだったのか、タイミングが良かったな。
「うむ、優先順位が決まったのかね?」
「それもありますが、おそらく遊星爆弾の精製方法が判明、また、それを利用したガミラス側が行うであろう作戦、それに対するメ2号作戦の修正案です」
「本当かね!?」
「100%とは言いませんが、7割から8割の確率です。とりあえず、ひとつずつ説明をさせていただきます。技師長」
「はい」
先程技師長と話したことを説明していく。
「なるほど。確かに可能性は高い。リスクも高いがそれを減らすことは?」
「船外服着用の上で乗組員の大半をバイタルパートへ移動。隔壁の全閉鎖に、開発が遅れてフソウに搭載できなかった特殊装置を使います」
「特殊装置?」
「空気を液体にしてタンクに詰める装置です。エア抜きは有効ではありますが、資源の消費が半端ではないので。これを使ってバイタルパート以外の空気は回収しておきます。あとは、いつもどおりのお祈りですね。同じ場所に被弾したり、レーザーが予想より強力だったらお陀仏ですね。ヤマトのリスクを減らすなら航空隊のみでの作戦行動です。その場合、全力でこの本命に爆撃をかけます。まあ、消耗は激しいでしょうが」
「分かった。では、副長の修正案を採用する。副長は飛ぶのかね?」
「飛びたい所ですが、時間がかかりすぎるので今回はお預けですね。全体指揮を取ります。南部君、君が戦闘指揮を執れ」
「はい」
「作戦開始前までに船外服着用を厳守。着用してなかったのが原因で死んだら笑いものにしてやるから覚悟しておけと全乗員に通達」
「副長は本気で笑いものにする気ですからちゃんと通達して厳守させるように」
「航空隊の編成は加藤君に任せる。無事に全員帰ってこいよ」
「コスモファルコンの展開完了しました。これより敵基地発見まで無線封鎖します」
「総員船外服の着用を確認。バイタルパートへの移動、完了しました」
「波動防壁展開。最大出力ですので時間は30分程度です」
「エアコンデンサー稼働終了。バイタルパート以外のエアを回収しました」
「レーダーに敵の反応、ありません。冥王星軌道上にデブリ多数確認。やはり副長の予想通り、敵はレーザーを反射させれるようです」
「砲手もバイタルパートに移動させろ。冥王星に降りるまで撃つ機会はないな。一発は覚悟しろ。情報長、逆算は任せたぞ」
「了解です。ところで副長、その木組みはなんですか?」
「神棚みたいなものだな。少しでもお祈りの効力を上げとかねえとな。頼みますから一発は耐えさせてください」
「波動エンジンは外れてくれると嬉しいです」
瀬川君と二人で二礼二拍手一礼をしておく。
「よしっと、お供えは秘蔵の15年物のワインとチーズだな」
「私も秘蔵の天然物の干しブドウですね」
「よくそんなものが残ってますね。家の親父でも入手が難しそうなのに」
南部君がそんなことを言っているが、南部重工の社長なら裏でこっそり在庫を抱え込んでいるはずだ。
「探せば結構あるものだ。生き残ったら一口ずつにはなるだろうが振る舞ってやる。生きる理由さえあれば死なずに済むこともある」
「楽しみにしてますよ」
「おう、楽しみにしていろ。さて、総員戦闘配置に付け!!」
緩んでいた空気が引き締まる。訓練の成果は十分に出ているな。
「島、ここからが腕の見せ所だ。大まかな指示を出すからそれに従え。あまりに酷いようなら細かく指示を出す」
「了解」
「まずは第ニ船速。いつでも第一船速を出せる準備をしておけ。森、アクティブソナーを打て」
「はい。アクティブソナー打ちます」
「速度そのまま。まっすぐ冥王星に向かえ。森、新見、そろそろ動きがあるはずだ。反応を逃すな」
「「了解」」
それから20秒ほどで動き始める。
「レーダーに乱れがあります。敵の反射用の衛星だと思われます」
「データを収集始めます」
「総員、何かに掴まってろ!!派手に揺れるぞ!!」
艦内放送に怒鳴りながらワインが割れないようにしっかりと抱きかかえ、瀬川君がつまみが飛び散らないようにしっかりと抱きかかえる。。第2艦橋の全員が身構えたと同時にヤマトが大きく揺れる。
「被害状況知らせ!!」
「右舷展望台に被弾。波動防壁、損耗率39%。火災はすぐに鎮火しました!!」
「10時の方向からの被弾を確認しました」
「逆算に成功。位置は、本命のクレーターに隣接する湾内です!!」
「よし。予想よりも威力が低い。島、第1船速、普通に考えた場合の死角に入り込め。真田、波動防壁を集中型で運用するぞ。少しだけ抜かれるように調整しろ。新見、アナライザー、逆算である程度の被弾箇所を搾り出せ。正確さより速さを優先しろ」
「「「了解」」」
「もう一度揺れるぞ。ちゃんと掴まっていろ」
そしてしばらくした後に2射目が左舷後部に着弾するも被害は軽微だったが、うまい具合に黒煙が吹き出している。
「島、舵が効かないような演技をしながら冥王星の海に突っ込め!!真田、波動防壁を艦首に集中、氷を砕いてそのまま海中に没する。偽装撃沈用意!!最後にもう一回派手に揺れるぞ!!」
「え、演技!?」
「姿勢制御バーニアを少しだけ吹かせてロールさせろ!!大気圏内突入は垂直に。突入しながらロールを止めるように姿勢制御バーニアを吹かしながら底部バーニアを吹かせて60度ぐらいで海に突っ込め!!」
「ちょっ!?ええっ!?」
「波動防壁があるんだ、多少の無茶はできる!!
「ええい、了解!!」
モニターを見ながら島がちゃんと演技を出来ているかを確認する。駄目だな、多少嘘くさい。まあ気づかれないとは思うが、細かい制御を出来るように真田に相談だな。そんなことを考えているうちに冥王星の地表がはっきりと見えてきて、本日一番の揺れを感じる。
「爆雷、断続投下!!」
「投下します!!」
これで爆沈したようにみえるだろうが、念には念を入れて待ち構える。
「上空に反射衛星が起動した形跡は?」
「今のところありません」
「警戒を続けろ。今のうちにダメコンと負傷者の治療を急げ!!それから砲雷班を中心に手が空いている者を集めろ」
「何をなさるのですか?」
「人力で三式弾を後部に運ぶ。浮上後は一気に砲撃を叩き込む必要があるんでな。何発か湾内にも叩き込む必要がある。」
「手ですか?」
「いくら最新鋭艦だろうと最後に物を言うのはマンパワーだ。こういう強引な運用も時には必要なんでな。瀬川君、こっちは任せた」
瀬川君にワインを手渡して席を譲る。
「はい」
「南部君、君も人力での装填を見ておけ。行くぞ」
「了解」
第2艦橋から南部君と共に飛び出す。艦内放送で砲雷班と手漉きの航海科の者が弾薬庫に集まる。
「これより、三式弾を後部砲塔に運び込む。砲雷班は知っての通り、後部砲塔には弾薬庫を設置するスペースがなかったために三式弾を使えない。だが、スペック上は前部砲塔と変わらない以上、人力で装填することによって運用は可能だ。この後のガミラス基地への攻撃は時間との勝負でもある。少しでも勝率を上げるために諸君の奮闘に期待する。3人1組となってカートに三式弾を積んで運べ。信管はセットしていないが手荒に扱うなよ」
「「「「「「了解」」」」」」
「よし、運べ!!」
南部君と航海科の一人を捕まえて三式弾を第3主砲へと運ぶ。他の者も付いてきたところで人力での装填を確認する。時間がかかりすぎるな。
「副長、意見具申。慣性制御で砲塔内だけ重力を減らしてはどうでしょうか?半分になるだけでも大分楽になると思うのですが」
「なるほど。良い意見だ。真田君に確認してみよう」
確認してみたところいけるそうなのでやってもらうことにする。
「とりあえず、主砲副砲両方に30発ずつ運び込め。南部君、ここは任せる。オレは艦内の状況を調べてくる。終わったら装填員を残して持ち場に戻れ」
「分かりました。お気をつけて」
まず最初に向かうのは被害が小さいが黒煙を吹いていた左舷後部だ。
「榎本班長、被害はどんな感じだ?」
「これは副長。回路の一部がショートを起こしたみたいで。それが絶縁体に燃え移って煙が出たみたいです。それの修理も終わった所です。それにしても船外服を着ていて正解でした。宇宙船で溺れ死ぬ奴が出そうになりましたから」
「溺死ってことか?酸素がなくなって死ぬ方じゃなくて」
「そうですよ。いつもの癖でダメコンに飛び出して着水時の衝撃で機材に挟まれたんですよ。そこに水が流れ込んできて。船外服を着てなけりゃ溺死してましたね」
「そいつは運が良かったな。修理の方は問題ないんだな?」
「へい、エンケラドゥスで満載したんで問題ありません。時間の方はどれぐらいで?」
「それじゃあ、とりあえずの応急処置で良い。ロングレンジ戦に耐えれる程度でいい。本格的な修理は後だ。予定では後、2時間ほどで古代君達が爆撃する予定だ」
「了解しました。突貫作業でやります。おい、塞ぎ終わったらポンプを持って来い、排水だ排水。2時間で戦闘できる状態にまでなんとか持っていくぞ!!細かい整備はその後だ!!」
「頼むよ、榎本班長」
「任されました」
次に向かうのは医務室だ。廊下にはそこそこの人数が待たされているが、重傷者はそれほど見受けられない。
「原田君、こっちはどんな感じだ?」
「あっ、永井副長。重傷者の大半は骨折です。重体者は今のところ確認されていません。人数的には100人程度の重軽傷者だと思います」
「10%程度か。2時間後にはガミラス基地の攻略を再開するけど大丈夫か?」
「その頃には骨折している人以外は復帰できると思います」
「分かった。頑張ってくれ」
よしよし、想定よりは楽観できる状況だな。あとは古代君達の報告を待つだけだな。
ゼロの操縦桿を握りながら、出撃前に行われた副長の対地上基地爆撃講座を思い出す。
『対地攻撃を行った場合、怖いのは機銃だ。弾幕を張られると特にキツイ。だが、これらにミサイルを撃ち込むのは無駄が多い。こっちの機銃でも破壊できるからな。次に基地には制空権を確保するための防空隊が存在する。これも脅威であるが弱点もある。まずは滑走路を探せ。滑走路を破壊すればそれだけで防空隊の発進は防げる。無茶をすれば飛べるが、それほど数は多くないだろう。滑走路がない場合、地下からの発進口が存在する。確認次第ミサイルを叩き込め。次に狙うべき物だが、遮蔽フィールドの発生装置だ。このタイプの発生装置は2通り考えられる。一つは基地の中央に高い建造物がある。この場合は先端部分から破壊していく。おそらくだが、複数の機能を持っていることも考えられる。もう一つは基地を外周部に複数の塔が立っているタイプだ。この場合、何処にでも良いからミサイルを叩き込め。倒れさえすればいいが、出来ればエネルギー反応が大きい部分が根本以外にあればそこに叩き込め。機能不全にするにはエネルギー源を絶つのが一番だ。遮蔽フィールドが解除され次第、ヤマトに報告。三式弾を撃ち込みまくって壊滅させる。対艦爆撃講座は次回以降だな。今回は強制だが次回からは自主参加だ興味があるやつだけでいいからな。まあ、聞いてたほうが生還率は上がるだろうがな』
あの人は、一体どこまで先が見えるのだろうか。基地の特定から攻撃方法までも読み切り、それに対応する手段も編み出す。あんな人が居ても兄さんを生きて連れ帰ることができなかった。それだけの差があった。だけど、今なら。
「いや、ダメだ。今は私情を挟まずに任務を達成することだけを考えるんだ。うん、あれは?オーロラか?なぜ、こんな所に。いや、あれか!?無線封鎖解除、こちらアルファ1、目的地が見えた。あのオーロラが遮蔽フィールドと思われる。全機急降下、続け!!」
オーロラに突入すると計器が異常な数値を示し、機体が派手に揺れる。だが、それもすぐに収まり、前方にガミラスの基地を発見する。そして基地の周囲を囲むように6本の塔が立っている。
「こちらアルファ1、チャーリー1以下は滑走路と機銃を攻撃せよ。アルファ2はオレと共に遮蔽フィールドの発生装置だ」
『『『『了解』』』』
副長の教え通り塔へと向かい、エネルギー反応のある半ばにある球体部分にミサイルを撃ち込む。S.I.Dが完全に機能を停止したことを報告してくるのを流しながら2本目、3本目へとミサイルを撃ち込む。山本君も同じように塔を破壊し、全て破壊すると、オーロラが消え去った。
「こちら、アルファ1。ヤマト、聞こえますか」
『こちらヤマト、どうぞ』
「敵基地を発見。本命のクレーターです」
『了解。これより対地攻撃を始めます。少し離れた位置で着弾観測を願います』
「アルファ1、了解。全機、現空域から離脱せよ。巻き込まれるぞ!!」
全機が空域から離脱すると同時に三式弾がガミラス基地に着弾する。その後もミサイルなどが着弾してガミラス基地が吹き飛んでいく。あっけない。そう思ってしまう。これならガミラスに此処まで押されるのが異常だと思えてしまう。もやもやと不信感が募る。
『ヤマトよりアルファ1、敵基地から離脱する艦は見えますか?』
「いえ、最初の三式弾がドッグらしき場所に着弾するのを確認しています。おそらくは全滅です」
『了解、全機帰投してください』
「了解。全機帰投する」
この感情をどう処理すればいいんだ。悩みを抱えたままヤマトへ帰投する。
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