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Three Roses

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第二十三話 野心その六

「私はそう考えていますが」
「しかし天に二日は不要でして」
 そしてとだ、大司教はマリーにこの言葉を出した。
「マリー様がそう思われていても」
「お姉様がですか」
「どう考えておられるかです」 
 問題、それはというのだ。
「日輪は二つもいらないですから」
「まあ月なら構いませんが」
 デューダー卿の言葉だ、彼らしく明るい口調での言葉だった。
「太陽は二つはいらないですが」
「月はですね」
「はい、逆に必要です」
 こちらはというのだ。
「マイラ様に玉座を譲られ」
「私は、ですね」
「月になられてはどうでしょうか」
「そのうえで」
「はい、マリー様も玉座をお求めでないのなら」
「それなら尚更」
「はい、月になられては」
 こう勧めるのだった。
「その様に」
「この国の」
「そうされてはどうでしょうか」
 こう言って勧めるのだった。
「ここは」
「そうですね」
 考える顔になってだ、マリーも応えた。
「私はそれが相応しいかも知れません」
「マイラ様は太子のお話は聞かれます」
 最後にキャスリング卿が言った。
「頑なな態度はそのままでも」
「それでも」
「太子がおられますので」
「それで、ですね」
「あの方のお耳にマリー様のお考えを何処となく入れる」
「そうしていきますか」
「そう考えますが」
 直接語ることは憚れた、何しろ彼はマイラの夫だ。今やこの国の旧教徒達の実質的な領袖にさえなっている。だから新教徒の彼等は容易に会うことが出来ないのだ。
 しかしだ、噂やそうした形でというのだ。
「どうでしょうか」
「いいですね、では」
「はい、そしてあの方は噂を聞かれれば」
「その真偽を確かめられる」
「そうした方なので」
 そのうえで動くかどうかを決める、太子はそうした人物だ。
「そうしましょう」
「それでは」
 マリーはキャスリング卿の言葉にも頷いた、こうしたことを話していってだった。彼女自身のあり方についても考えていた。
 玉座についてはだ、マリーはとかくだった。
「特に望みません」
「国と民の幸せが適うなら」
「それならば」
「よいと」
「そうしたお考えですね」
「そうです」
 こう言ってだった、マリーは彼女の側近達に彼女の考えを噂として太子側に流させた。この噂はマリ-達の予想通りにだった。
 太子は聞くとすぐに情報の真偽を確かめた、そして。
 その情報が事実だとわかりだ、彼の側近達だけでなくオズバルト公とグレゴリー司教も呼んでそのうえで話をした。
「巷の噂だが」
「マリー王女は王位を望んでおられない」
「マイラ王女にとお考えである」
「この噂はですね」
「真実なのですね」
「詳しく調べさせたが」
 オズバルト公と司教にだ、太子は彼の側近達に目をやりつつ答えた。
「真実だった」
「そうですか、では」
「我々は特に何もせずともですね」
「いいですね」
「構いませんね」
「そうだ、こちらは手出しをせずともだ」
 マリーに対してだ。 
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