提督はBarにいる。
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アニメオタクは止まらない。
まずはラム酒。クセも強く、色味も独特であまりカクテルには適さない酒ではあるが、今回作るカクテルには色味はあまり影響しない。
次にコアントロー。フランス産のオレンジリキュールで、その強烈とも言える位の強い香りとまろやかな甘さが特徴のホワイトキュラソー(無色透明のキュラソー)。良質のビターとスイート、2種類のオレンジの果皮や花、葉に極秘の成分を加え、スピリッツに漬け込んで香りを移した物を更に蒸留。そこにシロップやスパイスで味を調整して作られる。口当たりは良いがアルコール度数は40°と中々にキツい。呑むときには要注意だ。
そして最後にレモンジュース。市販の物を使っても良いが、ウチではその場で絞ったフレッシュを使う。半分に切ったレモンを絞り器で絞り、全てをシェイカーに。
比率はラムが2、コアントローが1、レモンジュースが1。全てが入った所で氷と共にシェイク。シャカシャカと小気味良くシェイクしていると、夕張がクスクスと笑う。
「提督ってば、ホントにそれっぽいねw」
「やかましいわ。」
カクテルグラスを準備し、シェイクした中身を注ぐ。すると中からは白濁したカクテルが姿を現す。コアントローの特性として、氷等で冷やされると無色透明から白へと姿を変える。それがホワイトキュラソーと呼ばれる所以だ。
「ハイよ、注文のカクテルだ。」
「んじゃ、いただきます‼」
静かにカクテルグラスを傾ける。
「甘くて美味しい‼ねぇねぇ、コレなんてカクテル!?」
「コレか?コレはXYZ。アルファベット最後の3文字から取って『これ以上の物はない』とか、『究極のカクテル』なんて意味を持たされてる1杯だ。」
「そしてその符号と言えば……‼」
「「シティーハンター‼」」
二人の声が同時に作品を叫ぶ。
「でもなんで、XYZが冴羽遼の呼び出し符号なんです?」
XYZを呑みながら、夕張が俺に尋ねてくる。
「確か、XYZの後は無いだろ?だから、後が無い位追い詰められてる、助けてくれって意味だったと思うぞ。」
俺も自分の分を作ろうと、シェイカーを振るう。カクテル好きなら大概知っていると思うが、XYZのレシピは実は、メインの酒を変えるだけでカクテルが何種類も作れる万能レシピなのだ。
ラムをブランデーにすればサイドカー。
ウォッカにすればバラライカ。
ドライジンならホワイトレディ。
ウィスキーならウィスキー・サイドカー。
焼酎なら焼酎・サイドカー。
更に少しレシピは変わるが、ホワイトラムにコアントローを半分にし、その分グレナディン・シロップを加えるとビューティフルと呼ばれるカクテルになる。このように、汎用性の高いレシピである所も、夕張に似合うと思って提供した理由だったりする。
「ぷはぁ~。甘くておいひぃからぁ、ついつい呑んでゃいましたぁ~…」
1杯目を飲み初めて30分。普段甘めのカクテルなど呑まない夕張が調子に乗って飲みまくってヘベレケになっている。その数、8杯。XYZ以外にも、バリエーションのカクテルも飲んでいるからチャンポンだ。悪酔いしないハズがない。
「こんばんは。……おや、先客がいたのか。」
「よ、響。今日もウォッカか?」
やって来たのは駆逐艦・響。その幼い見た目とは裏腹に、鎮守府でも五本の指に入る酒豪だ。前世でロシアに渡った影響だろうか。
「いや、今日は私もカクテルを貰おう。……バラライカ。でも、カクテルグラスでなく、タンブラーでね。」
ホラこれだ。呑む量が違う。
「しかし夕張さんとアニメ談義しながら呑むなんて、司令官も中々オタクなんだね。」
「まぁな。第六駆逐隊の奴等もアニメ見るのか?」
「まぁね。特に暁が魔法少女モノにはまってね。この間夕張さんにDVDを借りたと言っていたよ。」
クスリ、と小馬鹿にしたような、しかしそれが愛らしいと言いたげに静かに笑う響。
「因みに響、なんてアニメを借りたか解るか?」
しばらく唸った後、
「確か……まどマギとか言ってたような……。」
「響、悪い事は言わない。暁を止めてやれ。」
暁にまどマギなんて見せたらトラウマ待ったなしだろうに、まったく。そのトラウマを生産しようとした張本人は今、カウンターに突っ伏してスヤスヤと寝息を立てている。いい気なモンだぜ。
「冴羽みたいに襲っちまうぞ?」
なんて、冗談めかして言いながら、俺もXYZを煽った。
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