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IS 輝き続ける光

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二人の専用機

4月後半戦、桜の花弁も散ってしまった頃だろうか。男性IS操縦者こと霧雨 閃輝は本来居たくもない外の世界で学業に勤しんでいた、彼のストッパーとなっている咲夜と友人となり補助をしてくれるセシリアが居なければ既に外の世界の大半は滅んでいるかもしれない。あらゆる速さを司るという常識を逸した力を宿している彼がその気になれば瞬時に世界を滅ぼせる。まあそんな事したら閻魔様に説教されるではすまないのでしないが。

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」

今日も今日とて開始される教師よりも軍の教官の方が似合っているだろうと言いたくなる指導方法をしている織斑 千冬のIS実習授業。

「おっ……霧雨、十六夜、オルコット。試しに飛行して見せろ」

指名されたのはこのクラスで専用機持ちとなっている専属操縦士と代表候補生の三人、これには女子たちには興味が搔き立てられる、閃輝と咲夜の専用機を見られると思ったからだ。女子たちの目論見であったクラス代表決定戦が出来なかったからここで見れると思ったのだろう。

3人は専用機を展開した。蒼いフレームが基調とされているセシリアの専用機"ブルー・ティアーズ"、IS学園の生徒としては見慣れている良く見られるISの形をしている。機械の腕や足を装着しやや地面から浮いている状態だが閃輝と咲夜の物は常軌を逸していた。

「なん、だそれは……!?」
「俺達の専用機ですけど何か」
「それがだと!?」

教師である千冬も驚きを隠せなかった、IS操縦士として技術を競い合う大会まで出たがこのような異質な物は始めて見た。身体を守る装甲は一切無い所か機械的な要素が一切無い。防具的な意味では肩に金属の防具が閃輝が身に付けている。だがそれでも異常。

閃輝は全身を包みこむような真っ黒なボディスーツ、腰には剣と思われる物を持っているがそれだけだった。咲夜の方はもっと信じられない、戦闘が出来るように仕立てられたメイド服と言われたそのまま納得してしまうような物だった。

「俺の専用機『黒檀』のコンセプトは"極限にまで人間の動きを阻害せずに高機動を実現する"、その結果です。結構気に入ってます」
「私の『銀刃』は"様々な状況に対処出来るメイドの如き汎用対処能力"ですわ」
「どちらも美しいですわ、ですが閃輝さん。少々スタイルがハッキリ出過ぎでは?」
「そうか?」

全身に張り付くようにピッチリとした黒スーツは着用者である閃輝のボディラインをハッキリと映し出している。鍛えられた筋肉にしっかりと割れた腹筋は非常に逞しく色気を醸し出している。思春期な乙女達にはそれは刺激が強い。箒は直視出来ないのか顔を真っ赤にしながら手で顔を隠しているが指の隙間からちらちらと見ている。

「(これが本当にISなのか……!?矢張り無理矢理にでも……防御性に何がありすぎるだろう!?絶対防御に頼りすぎだ)ま、まあ良い飛べ」

言われて直ぐにセシリアは飛び上がった、流石代表候補生と言わしめる反応速度と上昇速度だがそれ以上に閃輝と咲夜の反応速度が早かった。"飛べ"という命令が出た瞬間には空へと飛び上がり空を飛行している。それは人間が出来る反応速度なのかという次元の早さ、これも能力が関係している為に早まっている。

「あらあら流石に御早いですわ、私程度では相手にもなりませんわね」
「この程度朝飯前よ」
「この位出来ないと、対処出来ないような主が居たからな」

操縦者間でしか通じないプライベートチャンネルで話しかけてくるセシリア、恐らく出るであろう幻想郷の事を気遣っての行動。それを受け取りつつ咲夜が仕える主を引き合いに出す閃輝。

「そんなに恐ろしい方なのですか?」
「いえお嬢様は素晴らしい方よ、唯お子ちゃまで負けず嫌いで扱い易いだけの吸血鬼よ」
「吸血鬼ですの、それはそれは。吸血鬼の従者は大変と聞きますのに、凄いですわ」
「っていうか咲夜さん一応レミリアの従者なんだからそんな事言っちゃ駄目でしょ」
「いいのよ偶には羽目を外さなきゃ。この前だって妹様にプリン食べられたって理由だけで紅魔館を半壊させたんだから」
「おいおいんな事あったんかい」

忠誠を誓っている割に発言があれなのは仕様である。幾ら忠誠を誓っていようと主人の行動が可笑しかったら呆れるような物なら呆れるし幻滅もする。それすらしなかったらそれは忠誠ではなく洗脳と同じである。そして指定された高さまで上がるとそこから急降下及び急停止を指示される、目標は地面から10センチの所での停止。

「では私は先に行かせていただきますね」

一足先に降下して行くセシリア、一気に降下し目標である10センチでピッタリ停止する。それを見届けると二人は改めて彼女が代表候補生である事を思い知らされた。

「んじゃ」
「一緒に行きましょう」

同時に空気を蹴るように加速し一気に急降下して行く、そのスピードは最早流星に見間違うほど。クラス中の生徒は身を瞑り千冬も思わず衝撃に備えたが衝撃なんて一切訪れずやってきたのは肌を撫でるような風のみだった。

「お見事ですわ。矢張りこういう物は思いっきりやるに限るのですね」
「唯目標だけを設定されただけだからだな、それに従うだけじゃ面白く無い」
「こういった風にやるのも人生を楽しむ秘訣よ」

閉ざされた視覚、そこへ入ってくる声は緩やかで穏やかな物。ゆっくりと目をあけて見るとそこには平然と逆さになりつつ会話をしている閃輝と咲夜の姿があった。しかも目標と指定した10センチにピッタリと位置しながら。

「お、お前達は何をやっているんだ?!」
「何ってアンタが指示したから急降下からの急停止やったんだよ」
「そんな事もお忘れになったんですか?」
「し、指示に従っていればあのような事をして良いと思っているのか!!?」
「「何か問題がありますか」」

平然と顔色を変えずに言い放つ二人に背筋が寒くなるのを感じる千冬、幾ら自分とてあんな速度で急停止などしたら目標ピッタリに出来る自信は余りない、全盛期の頃なら兎も角今は難しいだろう。

「……他の生徒の見本にならんだろうが…」
「寧ろ見本にする生徒の方に問題があると思いますけどねそれは。それにそう言う事はしっかりと前もって伝えましょうよ、それだったらこんな事しませんよ」
「それに先生おっしゃいましたよね、私の言葉にはYESかはいで答えろって。それに従ってまでです」

そこまで言われると何も言えなくなってしまうのか千冬は口を閉ざした。閃輝と咲夜はしてやったと笑顔だった。その後の授業はISの指導役だったので楽なものだった。

「き、霧雨……」
「篠ノ之か、さあ乗れ」
「は、はい……」

閃輝が指導役である班になった箒だが閃輝の姿を直視出来なかったからかミスを連発したのは余談である。 
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