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真田十勇士

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巻ノ六十五 大納言の病その十二

「どうしてもな」
「難しいですか」
「うむ」
 大谷に正直に述べた。
「どうしてもな」
「ですか」
「しかしじゃ、わしも利休殿には恩があるしじゃ」
「天下の為にですか」
「必要な方と思っておる」
 それ故にというのだ。
「申し上げようぞ」
「では」
「うむ、しかし時期が悪いのう」
 家康は袖の中で腕を組んだままだった、嘆息する様にして述べた。
「大納言殿が隠れられてすぐであったからな」
「だからですな」
「今の関白様は普段と違うしな」
「だからこそですか」
「話は慎重にせねばな」
「ですか、言葉を選びつつ」
「進めようぞ、だが」
 それでもと言う家康だった。
「それでもな」
「難しいですか」
「わしはそう思う、利休殿はお救いしたいが」
 本心から言う、だがそれでもというのだ。
「難しいな」
「左様ですか」
「どうにもな」
 こう言う家康だった、そして実際にだった。
 家康は石田、大谷と共に秀吉の説得にあたったがだ。秀吉はその家康に対して非常に難しい顔で言うのだった。
「徳川殿のお考えはわかったがな」
「では」
「いや、やはりじゃ」
「利休殿にですか」
「頭を下げてもらわぬとじゃ」 
 秀吉としてはというのだ。
「認められぬ」
「それでは」
「徳川殿からも言ってくれるか」
 利休、彼にというのだ。
「是非な」
「利休殿に頭を下げよと」
「わしにな」
「そうですか、ですが利休殿は」
「わしに頭を下げぬというのか」
「あの方も誇りがあります」
 家康は秀吉に畏まって述べた。
「ですから」
「天下人であるわしにか」
「それがしが思うにです」
 ここで家康はこの場における彼の秘策を秀吉に出した、その秘策は一体どういったものであったかというと。
「茶をです」
「茶をか」
「飲まれてはどうでしょうか」
「利休とか」
「はい、そうされてはどうでしょうか」
 こう提案するのだった。
「ここは」
「そしてか」
「はい」
 まさにというのだ。
「お話をされては」
「わしに頭を下げずにか」
「そこはお話をされてです」
 その中でというのだ。 
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