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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第21話 三人だけの戦争

Side マリュー・ラミアス

マリュー
「ロストしたのはどこなの?
無線は?」

ミリアリア
「駄目です!応答ありません。」

トノムラ
「レーダーも攪乱酷く、戦闘空域を離脱したところまでしか…。」

マリュー
「…」

ナタル
「MIAと認定されますか?」

サイ
「何です、それ?」

トノムラ
「ミッシング・イン・アクション、戦闘中行方不明…。
まぁ確認してないけど…、戦死でしょってことだな。」

サイ、ミリアリア
「え!?」

ミリアリア
「ミスリルからの中継が入ってます。
繋ぎますか?」

マリュー
「お願い。」

光輝
『今、こちらの座標を送った。』

マリュー
「無事なの?」

光輝
『無事だ、心配ない。
こちらの状況を説明する。
先ず敵母艦はミスリルで確保済みだ。
帰投直前に敵の輸送機を発見し威嚇(いかく)したところ、
モビルスーツをパージした。そのモビルスーツがイージスであった。
ミスリルの情報では計4機の輸送機がジブラルタル基地から飛び立っている。
コースと機数から推測すると略奪された4機がカーペンタリア基地に、
輸送されている途中と推察する。
アークエンジェルを狙っている可能性もある。
こちらはザフト兵に接触して目的を探る。
こちらの支援はミスリルに任せて、
アークエンジェルは中継地点でミスリルからの補給を受けられたし。
明朝には合流予定、こちらの安否は2時間おきにミスリル艦を経由して連絡を行う。』

マリュー
「分かったわ。カガリさんを頼むわよ。」

光輝
『了解。』

マリュー
「…ハァ。
聞いての通りよ。本艦は予定通りに中継地点に向かいます。」

ナタル
「コウキ殿の懸念は最もだと思います。
本艦がこのまま進めば、補給の後に敵と接触する可能性があります。
アークエンジェルでは敵の潜水艦に追いつかれます。」

マリュー
「私もその意見と同じ考えだけど、コウキさんの真意は別にあると思うの…。」

フラガ
「クルーゼ隊か、厄介だなぁ。
しかし、中継地点て洋上だろ。潜水艦からの補給か?」

マリュー
「問題はそこにあると思うの。
もし潜水艦からの補給ならオーブ領海の外とはいえ、
こんな近海を通らずにアラスカに直接向かうと思う。
可能性としてはミスリルの補給基地がオーブにあるか、
戦闘時にオーブに逃げ込む込むか?
どちらにしても、私達が考えることは敵も予想しているわ。
コウキさんの作戦は今まで敵の裏を巧みに突いている。」

フラガ
「あいつの考えは俺達には読めない。
普通の心理学者でもきっと読めないと思うぞ。」

ナタル
「コウキ殿は無駄な事はしません。
私達に出来るのは信じる事です。」

マリュー
(あれ?ナタルはこんな性格ではなかったわよね)

フラガ
(コウキの信仰主教か)

マリューとフラガは目で会話する。

マリュー
(ハルバートン提督、アークエンジェルはアラスカに向かっている筈ですよね)

マリューは遠き月いるハルバートン提督に問いかけるのであった。

キサカ
「…ハァ。」
(カガリは人の言う事を聞かなかったけれど、コウキの言う事は素直に聞く。
ウズミ様、お嬢様が遠くへ感じられます)

Sideout



Side アスラン・ザラ

アスラン
(地球軍の兵士?まさかさっきのパイロットか?)

光輝がアスランの背後から襲う。
アスランがカガリに気を取られている隙に近付いたのだ。

アスラン
「あ!」

アスランが気付いた時には銃を蹴り飛ばされた後だった。
アスランからは光輝の顔がバイザーで隠されて見えない。
アスランは一歩で光輝から離れて、屈んで靴から折り畳み式の短剣を取り出す。
その間、光輝は手を出さない。それどころかアスランを挑発するように手招きをする。

アスラン
「バカにしてー!?」

アスランは容赦なく光輝を襲う。
光輝は相手を指導するように、急所に触れただけで攻撃をしない。
何回となくそんな攻防続く。

アスラン
「ハァ…ハァ…ハァ…」

アスランは息を整える為に一端、距離を置く。

アスラン
「くっそー!」

アスランはスピードを乗せて、短剣を鋭く突いた。

アスラン
「ぐっ!」

アスランが気付いた時は砂浜で、夕暮れの空を見上げていた。
光輝はヘルメットを脱ぐ。

光輝
「はい、お疲れ様。それとお久ー。
クライン邸で会って以来だね。
カガリもういいぞ!こっちに来て!」

光輝が右手を大きく振ってカガリを呼ぶ。
アスランは光輝の左手の指先に挟まれている短剣を見て気付いた。
短剣を受け止められ、投げられた事に。

アスラン
「…ハァ。」

光輝は短剣を蹴り飛ばした銃の所に放り投げた。
短剣は弧を描いて銃の引き金の枠にスッポリと入った。
カガリは崖を降りて来て、ヘルメットを脱いで光輝の元へ走り寄る。

カガリ
「ハァハァ…。
いつ見ても凄いね。
あの相手に触れるのキラ相手にやっている奴だよね。」

アスラン
「キラ…?」

光輝
「紹介するよ。
アスラン、ほら起き上がって。」

光輝はアスランに右手を差し出し、引っ張り上げる。

光輝
「こっちがカガリ。
そして彼はキラの幼馴染のアスランだ。
キラが言うには生真面目で優しいそうだ。
私はそれにプラスして女性との付き合いが下手で、
曲がった事が嫌い、技術系が得意で人付き合いも苦手。」

アスラン
「…」

光輝
「当たったみたいだな。」

カガリ
「さすが心理学者!」

光輝
「それに輸送機のコースからして、
ジブラルタルからカーペンタリア基地へ移動中、
クルーゼ隊の目標は…、いやクルーゼ隊長はオペレーション・スピットブレイクの準備で、
赤服だけでアークエンジェルの追撃かな?」

アスラン
「何でそれを…」

光輝
「そうなると追撃メンバーは、アスランとニコル、イザーク、デイアッカの4人だ。」

アスラン
「…」

光輝
「押し黙ると言う事は、当たりだな。
ミゲル達の報告書を読んでいるだろう。
心理学者に嘘は付けないよ。
それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんでいなければならないよ。
まあ聞きたい事は聞けたし、スコールが降る前に移動しよう。
あっと、その前に…」

光輝は銃と短剣を拾って岩陰に隠れた。
次に姿を現した時はEX-ギア(エクスギア)を装着して、背中に大きなリュックサックを担いでいた。

光輝
「お待たー、因みにこれはザフトで飛行ユニットって呼ばれているみたいだけど。
エクスギアと呼ぶんだ。この様に重い荷物を持てるパワードスーツ兼用だ。
EX-ギア(エクスギア)は、モビルアーマー擬きの脱出装置と連動してEX-ギア(エクスギア)・システムと呼ぶんだ。
モビルアーマー擬きは、正式名はVF-25 メサイア、通称はバルキリーって呼ぶんだよ。
今度プラントに戻ったら訂正しておいてね。」

カガリ
「あぁ、教えていいの?」

光輝
「こちらも情報貰ったからお返しだよ。
でもね只より高い物はないよ。
今プラントではザフト軍の情報部やプラントの技術者が騒いでいるよ。
特に遺伝学者達が私の論文で大騒ぎだよ。」

カガリ
「何で?」

光輝
「プラントでは特に第3世代の出生率が低いんだよ。
プラントでは婚姻統制までしても解決しなかったんだよ。
原因は簡単なのさ、生物多様性が原因だからね。
簡単にいうと地球の生物は沢山の種類がいるだろう。
何故、子供が親の遺伝子を完全にコピーしないのか疑問だろ。」

アスラン
「その論文読みました。正確には論文の解説書です。
全く同じであれば、環境の変化や病気などで同一の種族が絶滅するんでしたよね。」

光輝
「そう簡単に言うとね。
そうやって、地球の生物は自然と共生して生き残ったんだ。
コーディネイターは生物の摂理を曲げて生まれたんだ。
本来多様性を必要とする生物を同じ様にしたんだ。
世界の国々で近親婚を禁止しているのは、子供が障害を持つリスクが増えるからだよ。
生物は本来、自分とは異なる遺伝子に惹かれ合うようになっているんだ。
もしナチュラルとコーディネイターが結婚していたら、
こんな問題は起きなかっただろうね。
私の論文では、その原因と一時的な解決策を提示しているんだ。」

カガリ
「コウキは凄いね。
医者の資格まで持っていて、プラントの遺伝学者より凄いんだ。」

光輝
「今やプラントの有名人さ。
だから血眼になって、私の出生の秘密やミスリルの事を調べているんだ。
お蔭でプラントに遊び(侵入)にいっても気づいていないんだよ。
灯台下暗しだね。」

アスラン
「僕もまさかプラントで合うとは思ってませんでした。…ハァ。」

カガリ
「あははは…。」

光輝
「それより、キャンプの目的地に着いたよ。洞窟の中で雨宿りだ。
おっと、スコールが振り出したね。ギリギリセーフ。
それじゃあ、スコールの間にキャンプの準備をしよう。
雨は10分ぐらいで止むから、魚が活性化する夕まづめになる。
そしたらみんなで魚を釣ろう。今晩の夕食だよ。」

アスラン
「夕食なら携帯食があります。」

光輝
「ダメダメ、携帯食は非常の時に取って置かないと。
Nジャマーで無線は届き難いんだ。
輸送機のパイロットが正確な位置を報告していれば、明日の朝には助けが来る。
人間は思い込みして、口頭で伝えると聞いた方が勘違いする場合がある。
地球上には似た名前の地名が多いんだ。
経度や緯度も0.1度違っていたら、約10kmも違うんだ。
コーディネイターは頭がいい分、ナチュラルより間違い易い。
君は赤服だ。年上の一般兵に嫉妬され易い。
情報を改ざんして、困らせてやろうと思う事もある。
アークエンジェルの追撃戦でもイザークあたりが主張したんじゃないか?
彼の母親は評議員だから、プライドが高そうだ。」

アスラン
「あははは…。
まるで見ていたみたいですね。
情報源はミゲル達ですね。」

光輝
「当たりだ。
ヘリオポリスで捕虜解放を24時間にした訳さ。
捕虜を尋問しないで差し入れとかしたら、緊張も取れる。
地球軍の面会もさせなかったから、余計に緊張が緩む。
軍人は機密を話さないように徹底されているから、
機密に話題を振らないように気を付ければ、愚痴なんか直ぐに話すよ。
彼らは好待遇に驚いていたんじゃないか?」

アスラン
「僕にそんな話をしていいんですか?」

光輝
「構わないさ、この情報を聞けばザフト軍の情報部は忙しくなる。
一方で忙しくなれば、本来得ることが出来た情報が得れなくなる。
技術者もバルキリーの検証で忙しいだろう。
本来なら開発出来た技術が遅れるのさ。
最初からバルキリーの人型形態、バトロイドを見せなかったのも、
モビルアーマーに思わせて置けば、混乱に拍車をかけられる。
地球軍のモビルアーマーに思わせて、相手を油断させる作戦だ。」

カガリ
「ひどいなお前。」

アスラン
「あははは…。
僕も同意見だよ。」

光輝
「カガリがナチュラルなのも、アスランがコーディネイターなのも、
当の自分にはどうすることもできない、ただの事実でしかない。
ナチュラルとコーディネイター感情は同じものだよ。
一つそれが証明出来た。
スコールが上がったので釣りにいこう。
二人とも釣りは初めてだろう。
二つ目の証明だ。二人に釣りの楽しさを教えて上げよう。」

Sideout



Side ニコル・アマルフィ

ニコル
「イザーク!アスランの消息…」

イザーク
「ザラ隊の諸君!さて、栄えある我が隊の、初任務の内容を伝える。
それは…、これ以上ないと言うほど重大な、隊長の捜索である!」

ディアッカ
「うははは、ははは…」

ニコル
「うっ…。」

イザーク
「ま、輸送機がパージしちまったんじゃしょうがないが、本部もいろいろと忙しいってことでね。
自分達の隊長は、自分達で探せとさ。」

ディアッカ
「やれやれ、なかなかさい先のいいスタートだねぇ。」

イザーク
「とは言っても、もう日が落ちる。捜索は明日かな。」

ニコル
「そんな!」

ディアッカ
「イージスに乗ってるんだ。落ちたって言ったって、そう心配することはないさ。
大気圏、落ちたってわけでもないし。」

イザーク
「ま、そう言うことだ。今日は宿舎でお休み。
明日になれば母艦の準備も終わるってことだから。それからだな。」

ニコル
「うっ…。」

Sideout



Side アスラン・ザラ

カガリ
「また掛かった!」

アスラン
「あっこっちもだ。」

光輝
「魚釣りは古い歴史がある。そして趣味やスポーツに昇華された。
音楽など人間は文化を作り出した。遊びも文化だと思う。
心が豊かになり、そして文化が花開く。
喜怒哀楽といった感情に、ナチュラルとコーディネイターの違いはない。
それじゃ二人とも、疑似餌の代わりに釣った小魚をエサにして、大物を狙おう。
滅多な事では切れないぞ。
糸はモビルアーマーで使われている炭素繊維だし、
針はモビルスーツの装甲素材と同じものだ。」

二人は何方からともなく目を合わせた。

カガリ、アスラン
「うっはっはっは…!」

カガリ
「糸にモビルアーマー…、お前ばかだろう!」

アスラン
「針にモビルスーツ…、作った技術者も考えていない…くすっ。」

二人は余程、ツボに入ったのか、笑いが止まらない。

光輝
「二人とも笑ってないで、日が沈んだら釣れなくなるぞ。
遠くに投げ入れて、ゆっくりとリールを巻くんだ。
大物を釣り上げたら腕によりをかけて料理をしてやるぞ!」

カガリ
「アスランに負けない大物を釣るぞ!」

アスラン
「僕も負けないぞ!」

光輝
「釣りは運の要素が大きい。
どんなに上手い釣り人でも釣れない時は釣れないものさ。」

カガリ
「あっ大きいぞ!」

アスラン
「こっちもだ。」

二人してリールを巻き上げる。
流石に大物であって、カガリは体を海に引っ張られる。
そこは光輝が手を貸した。

アスラン
「やった、大物だ!」

カガリ
「うっ、重い。…ハァ…ハァ…」

光輝
「カガリ、そのまま魚を手前に寄せるんだ。
私が網で掬い上げる。
よっし、大物ゲットだぜ。」

光輝はアスランとカガリにハイタッチする。
カガリはアスランにハイタッチした。

カガリ
「…ハァ…ハァ…。
釣れた。」

光輝
「カガリ、よく頑張ったなぁ。
偉いぞ、記念に魚拓を取ろうか。」

カガリ
「魚拓?」

光輝
「魚拓は、魚に墨を塗って、紙に写し取るんだ。
写真だと比較対象がないと大きさが分かりずらい。
まぁ、百聞は一見に如かずと言うだろう。見ていれば分かる。」

光輝はアスランとカガリの魚の魚拓を取った。

光輝
「これからは料理人の仕事だ。」

光輝は魚を海水で洗い流すと、その場で活け締めにする。
3人で釣った魚をキャンプ地に運ぶ。

アスラン
「何か手伝いましょうか?」

光輝
「男子たる者厨房に入るべからず。
は冗談だが、二人とも自炊した事ないじゃないか?」

アスラン、カガリ
(ギク。)

光輝
「この温室栽培ども!
ここはプロの料理人に任せて、そこの空いたテーブルで、
さっきの魚拓に目とサインを入れ、日付も入れるんだ。それで完成だ。
乾かす時は洞窟の中で、広げて置くといい。風も吹き込まない。」

カガリ
「プロなのか?」

光輝
「管理栄養士の資格も持っている。
ミスリルのレーション開発も監修を手伝っている。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「さっきコウキさんからの定時連絡があったわ。
アークエンジェルの追撃は、クルーゼ隊ですって。」

フラガ
「クルーゼが…。」

マリュー
「あぁ、それがチョット違うみたい。
隊長は地球に降りて来ているみただけれど。
追撃はクルーゼ隊の赤服(エリート)の4人だけらしいの。
イージス、デュエル、バスター、ブリッツの強奪された4機。」

フラガ
「この(ふね)には疫病神が乗っているに違いない。」

マリュー
「あははは…。
でも現場海域に留まらなくて正解よ。
中継地点まではこちらが先に着きそうね。
それとカガリさんが大物の魚を釣り上げたそうよ。」

フラガ
「何やってんだ、あいつらは。」

キサカ
「…ハァ…」

Sideout



Side アスラン・ザラ

その頃、無人島では3人が戦っていた。

カガリ
「うっ旨いぞー!」

アスラン
「美味しい!」

カガリ
「…うまぃ…バクッ…」

アスラン
「…ぉいしぃ…ガツッ…」

光輝
「次出来たぞ、ホイ。」

カガリ
「アスラン、その魚オレが釣った奴だ、先に取るな!」

アスラン
「さっきの魚の丸焼き、先に取っただろう!」

カガリ
「いいじゃないか。それぐらい。」

アスラン
「カガリは地球に住んでいるんだ。いつでも食えるだろ。」

光輝
「メインディッシュ。
白身魚のムニエル~トマトソース~、ミスリル風だ。」

カガリ
「うわっ、旨そう。」

アスラン
「高級レストランみたいだ。」

カガリ
「…うまぃ…バクッ…」

アスラン
「…ぉいしぃ…ガツッ…」

光輝
「二人とも食べながら、聞いてくれ。」
今回の料理は料理の歴史順に並べてみた。
魚の丸焼きは粗野な料理だが美味しい。
ただ人間はそれに満足せずに、新しい調理法を考え新しいレシピを作り上げていった。
コーディネイターが優秀でも一人では一から作りえない偉業だ。
多くの人が長い年月をかけて、受け継いでいったものだ。
文化や技術はそうして先人から次の世代へ受け継がれていくものだ。

最後はデザートとコーヒーだ。」

アスラン
「ええ!デザートとまであるですか?」

光輝
「材料は現地調達出来ないから、レーションで済まない。」

Sideout



Side アスラン・ザラ

光輝
「捜索隊は明日の朝になるだろう。電波状態が悪い。今夜はここで夜明かしになる。」

カガリ
「電波の状態が悪いのは、お前達のせいじゃないか。」

アスラン
「…先に核攻撃を仕掛けたのは地球軍だ。」

光輝
「その話は後。洞窟の中で眠る、準備をする。」

アスラン
「洞窟の中に薪を運びます。」

光輝
「素人はこれだ。狭い洞窟の中で火を焚くと、酸欠の恐れがある。
暖は私の寝袋を使うといい。」

アスラン
「それでは、貴方が?」

光輝
「心配ないよ。」

光輝達は寝袋を持って、洞窟の中に入る。
光輝はLEDランプを洞窟の奥の真ん中に置く。
光輝はアルミ箔のシートをコートの様に着て、岩壁のもたれかかる。

アスラン
「僕がそっちで寝ます。」

光輝
「君は正規のサバイバル訓練を受けてないじゃないか。
私は砂漠や熱帯雨林、南極などでサバイバル訓練をしている。
人間はその本能に、警戒の為の反覚醒睡眠を持っている。
私が座って眠るのは、熟睡しない為だ。
動物には環境適応性がある。寒いところ、暑いところに住めるのはその為だ。
プラントは一定温度で、宇宙服には断熱素材と温度調節機能がある。
それが心配なのだ、環境適応性が退化して、失われるのじゃないかと。
ザフト軍は宇宙で戦った後、プラントで一定期間休むだろう。
無重力で生活していると、筋肉が衰える為だ。
地球軍も同様にして、月面基地に勤務すると一定期間、地球に戻る。
人間には一定のストレスが必要だ。
コーディネイターは地球を離れて、暮さない方が良いと思っている。
まあ、それを進化と呼ぶのか、退化と呼ぶのかは後の歴史家が判断するだろうね。」

カガリ
「オレはそんな事まで考えていなかった。」

アスラン
「僕も、いやプラントに住んでいる誰もが。」

光輝
「人類の歴史は自然との共生で成り立っている。
それはさておいて、先のナチュラルとコーディネイターどちらが悪いかだが。
私は両方だと思う。プラント理事国はプラントを作り、資源ノルマを課した。
それに離反する、プラントに核攻撃をした。明らかにプラントが被害者だ。
血のバレンタインで農業コロニーだったユニウス7で、24万人以上の民間人が亡くなった。
そこには子供たちも含まれる。アスランの母も亡くなっている。」

カガリ
「そうなのか?」

アスラン
「俺の母はユニウス7(セブン)に居た。」

カガリ
「…」

光輝
「それに対してプラントはニュートロンジャマーを地球に打ち込んだ。
Nジャマーは直接人を殺していない。
しかしアフリカでは120万の人々が飢餓で苦しんでいる。
ザフト軍はヘリオポリスを攻撃した。」

カガリ
「オレもあの時、あそこにいた。」

アスラン
「モルゲンレーテが開発した地球軍のモビルスーツ。それだけ奪えればよかったはずだった。」

カガリ
「何を今更!どう言おうがコロニーを攻撃したのは事実だろうが。」

アスラン
「中立だと言っておきながら、オーブがヘリオポリスであんなものを造っていたのも事実だ!」

光輝
「アスラン、そこに誤解がある。オーブではなく、オーブのサハク家の独断だ。
クルーゼ隊長には伝えてある。
君は理事会でストライクのパイロットがコーディネイターだとは報告してないね。
ミスリルの事も同様だ。
政府は不都合な真実を隠蔽して、ナチュラルが、コーディネイターが悪いと決め付けている。
アスラン、ヘリオポリスの攻撃の際、隊長から民間人は殺してはいけないと、訓辞を受けてないね。
宇宙コロニーは密閉空間だ。民間人に逃げ場はない。
最悪コロニー崩壊のリスクもあった。君達はそこまで考えて戦っていない。」

アスラン
「そっそれは…。」

光輝
「政府による情報のすり替えが行わている。
政府は民衆に正しい情報を伝えていない。
誤解しないで欲しい。ナチュラルとコーディネイターは関係ない。
戦っているのは政府であって、政府がコントロールしている軍なのだよ。
一般兵はそれぞれ国を守るため、戦っている。
何と戦うべきなのか難しい。ラクス・クライン嬢はそれを知っている。
彼女は平和の歌を歌う事で、彼女なりの戦いをしているんだ。」

アスラン
「…」

カガリ
「…」

光輝
「この戦争で多くの罪なき人々が死んでいる。
その禍根は戦争終結しても残る。
君達、若い世代に引き継がれている。」


~~アスラン回想~~

ラクス
「何と戦わねばならないのか、 戦争は難しいですわね。」

~~回想終了~~


光輝
「君達の戦いは、この戦争では終わらない。
ゆっくり時間をかけて考えるといい。
明日の朝は早い。今はゆっくりと眠るがいいよ。」

Sideout



Side カガリ・ユラ・アスハ

ニコル
「ア…ラン…アスラン…こえますか…応答…がいます…」

アスラン
「ニコルか?」

ニコル
「アスラン!よか…た…今電波から位置を…」

カガリ
「どうした?」

アスラン
「無線が回復した!」

カガリ
「え!…え?」

光輝
「アスラン、良かったな。仲間が助けに来たようだね。
カガリ、私達もアークエンジェルに戻ろうか?」

アスラン
「貴方達は僕を置いて、先に戻れたのじゃないのですか?」

光輝
「夜間飛行は危ないからね。
それに君達ともゆっくり話がしたかった。
君達はこの戦争が始まって以来、心の底から笑っていないのじゃないか?
キラ君はオーブで降ろす。
彼がどの様な選択をしようとな。
今度、会う時は戦場だ。生き延びろよ少年。」

アスラン
「貴方は変わった人だ。あははは…。」

光輝
「カガリ、行くぞ。」

カガリ
「あぁ。…じゃ。」

アスラン
「お前、地球軍じゃないんだな?」

カガリ
「違うー!」

アスラン
(…軍人でもないくせに、みんな…)

光輝とカガリはアスランと別れ、バルキリーへ向かった。

光輝
「楽しめたか、それに現状が少しは理解出来たか?」

カガリ
「うん、ありがとう。
私達の為に時間を取って貰って。」

光輝
「アスランとも話がしたかった。
アスランの輸送機が何故単独飛行してたか分かるか?
航法機材のトラブルだ。ミスリルがやった。
これを知ったらアスランは怒るかな?」

カガリ
「えっ!わははは…。
やっぱりお前ひどい奴だな。」

Sideout

 
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