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裏仕事

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第二章

「わし等の仕事は裏や」
「はい、それでですな」
「見付かるな」
「絶対にですな」
「裏に徹するんや」
 絶対にという返事だった。
「脅すなり何なりしてもええけどな」
「それでも表には出ん」
「わし等の流儀でいきますか」
「ここは」
「そうしますか」
「そや、監督もうそう考えてる」
 言ってはいないが言うまでもないことだった、その筋の人間としてだ。
「ほなな」
「はい、わかってます」
「わし等もこっちの世界で飯食ってます」
「ほなそれならです」
「絶対に表に出ません」
「わし等の仕事してます」
「金はもろてる」
 監督、そして球団からだ。
「大学の監督に高校の恩師、それにや」
「親も親戚もですね」
「あちこち抱き込みますか」
「金使って」
「そうしていきますか」
「あのチームの手が来たらや」
 その時のこともだ、親分達は言う。
「ええな」
「はい、その時は」
「是非共ですな」
「わし等が近か寄せん」
「そうしますか」
「そや、そうするからな」 
 是非にという返事だった、そして。  
 親分達はさらにだ、こう言ったのだった。
「あっちが同業者出してもや」
「そっちにもですか」
「向かいますか」
「そっちの話はもうあらかた監督が話つけてくれてるけれどな」
 彼自身がというのだ、他ならぬ。
「それでもや、若し出て来てもな」
「その時は勝負ですか」
「それも覚悟しますか」
「最悪出入りも考えとく」
 この世界では付きもののそれもというのだ。
「ええな、今度の仕事は大きいで」
「わかりました」
「ほな絶対に成功させます」
 若頭も若い衆達も応えてだ、そしてだった。
 彼等も動きだした、大学の監督や親や親戚、高校の恩師達に対して何もかもだった。手を回してだった。
 彼等に金を渡してだ、その選手にもだ。
 大学の監督や親を通じて監督自身も選手と会ってだ、そして。 
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