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B級武偵の奮闘記-ストラグル-

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1部
1章
  第1話 武偵殺し

「助けに来たよ。三劔颯汰(みつるぎそうた)君」

ここは神奈川県の南方、太平洋に浮かぶ人工島高波島(たかなみじま)。半径3kmとさほど大きくないこの島の中で俺は事件に巻き込まれた

住良木奏(すめらぎかなで)と名乗った少女の突然の出現に驚くと同時に、何故自分の名を知っているのかと疑問に思ったが考える余地はなかった。

「立って三劔君。今ここでアイツを捕まえるわよ」

アイツを" 捕まえる"だって?誰だか分かって言ってるのか?相手は「武偵殺し」だぞ!?

「お前、本気でアイツを捕まえる気なのか?」

即答だった。

「目の前に凶悪犯がいるのにそれを見過ごしていいわけないじゃない」
「それに相手は今足を失ってる。これほどのチャンスはないわ」

確かに住良木の言う通りだった。車が使えない以上逃げられない。仮にあのドライバーが動かせたとしてもこちらの車がそれを防ぐ。

完全にこちらの方が有利な状況だった。

ダレイオスに目をやるといかにも いつまでゴチャゴチャ話してんだとでも言わんばかりの顔をしていた。

彼に逃げるという考えはないようだ。

「やるしか…ないのか」

という俺の呟きを戦闘開始の合図と捉えたのか真剣な顔をし

「よし、行くよ!」

この言葉が吐かれた瞬間、彼女と共に動き始めた。


颯汰達は左右に別れて攻撃を開始したがダレイオスはそれを悠々と躱し、受け流していく。並大抵の戦闘では身につかないと思われるその動きに翻弄されていた。

ダレイオスは困惑した。颯汰は危険度Sランクに指定されていたのだ。

『 温い』

そう呟いてしまうくらいに颯汰の腕はSランクには遠すぎたのだ。

…B、良くてAか…女の方は筋がいい多分Aだな。

相手の力量を測っていたダレイオスだが妙な違和感を感じていた。Sランクというのがどうにも腑に落ちない。

彼奴(あやつ)、何を隠している

そう感じ取ったダレイオスは本気を出そうとしないソウタに半ば怒り混じりに問いただした

「貴様、何を出し惜しみしている。」

勿論颯汰は全力だ。だが、隠しているかいないかと聞かれれば「隠している」

しかし「ソレ」は使えない。正確に言うと使いたくない

それでも使わなければならない。それは颯汰も理解している。だが、 使いたくないという心が邪魔をする。

アレを使うしかないのか。他に方法はないのか。これを使ったらまた…

そんなことを考えながら横目に彼女の顔を見た

奏はそんな颯汰の心情を知って知らずか優しく微笑み

「大丈夫、誰も死んだりしない。私が死なせない、だから使って」

この言葉が最後の一押しになるように颯汰の心の靄は晴れた

俺は誰も死なせない、もうあんな思いはしたくない。死なせないために、この力を使う!

「住良木!暫く時間を稼いでくれ!」

颯汰の言葉を聞いた奏は一言「了解!」と一言だけ残し飛び出した。

俺は懐からアンカライトナイフを取り出し、目の前に構え、唱えた

「我、戦いし者。戦う為の力を求めん。我、護りし者。護る為の力を求めん。我、悪を討つ者。悪を祓う力を求めん。我、力を受け継ぎし者、その力を用いて事を成す。我が血脈よ、その血を解放し我に力を与え給え!」

空気が変わった。
傍から見れば厨二臭い台詞を吐いただけに見えただろう。

だが、その場に居たものは違った。颯汰から溢れ出る殺気にも似たような気配が感じられる程だ。

そんな颯汰を見てダレイオスは歓喜していた。ようやく本気が見られる、そんな喜びを隠す事なく叫んだ。

「いいぞ、もっと楽しませろ!貴様の全力をぶつけて来い!」

1人で熱くなるダレイオスとは対称に颯汰は落ち着いていた。既に颯汰の目にはダレイオスは映っていない。ただ一点を除いて。


一瞬だった。颯汰がこれまでとは比べ物にならない速度で走り出し、ダレイオスの肩へ向けナイフを突き出した。その咄嗟の出来事にダレイオスの動きが遅れることになった。

しかし、それが勝敗を分けることになった。

そのナイフは肩を一直線に貫き、利き手をやられたダレイオスは銃を落とし、地に伏せていた。

「これが…Sランクの理由か…納得だ、少し油断が過ぎたようだな…」

そして最後にこう言った

「貴様は狙われている…ある組織にな…まあ近いうちに知ることになるだろう…せいぜいくたばらない事だな…」

そう言い残し彼は意識を失った。
そんなダレイオスを見たワゴン車の運転手はパンクした車でその場から逃げようとした。

しかし遅かった。こちらの車だけでなく、武偵省と警察の増援が到着しその場で拘束された。同時にダレイオスも拘束され、武偵殺し事件は幕を閉じたのであった。

事情聴取が終わり解放された颯汰は奏を探したがもうその場には居なかった。まるで風の様な少女だと思った。

「彼女は一体何者だったんだ」

自分の事を知っている、名前だけでなく「力」についても。それが気になっていた。

「でもなんだろう。何か大事なことを忘れている気がする…あっ」

颯汰は思い出したかのように、

「遅刻だぁぁー!!」

と大きな声で叫んだ。

それを聞き少し先に居た奏はクスッと笑いながら、

「またね、三劔颯汰君」

と言い残し車の窓を閉めた。 
 

 
後書き
お久しぶりです。ランドルフです。
諸事情が積み重なりたったこれだけの文を書くのに8ヶ月もかかってしまいました。
これからは投稿ペース上げられるように努力したいと思いますので今後も「ストラグル」を宜しく御願いします 
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