役職?召喚魔術師ですがなにか?
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悩める子羊
「全く、タケルはホントに全く…」
諸君、リリが怖いです。
私の目の前で神ソーマの造った子供用の酒を飲み、グチグチと文句を言っている。
「一応責任は俺にあるわけだからさぁ、ちっとは任せてくれよ」
「別のファミリアのホームに別のファミリアが住むなんて異例ですよ!」
「いやほら、困っている人は見捨てられないと言うかね?」
「気前の良いことを口走っただけでしょう!?別に今回のことが嫌だとか思っていません。
でも、もう少し私達に話してください。同じファミリアなんですから…」
「……そう、だな。悪かったよリリ。
これからは報告することにする。だから……リリ?リリさんやぃ」
反応がない。どうやら寝てしまったようだ。
「あの、本当に良かったんですか?」
おずおずと話しかけてきたのは件の少年。
気の弱そうな性格で、人当たりは悪くはない。でもなんか危なっかしそう。
「別に気にすることはないさ。 自分でいっちゃった手前、新人の冒険者をあんな廃教会に住まわせるのは気が引ける。惨状を知っているのなら尚更な」
「そう、ですか…」
すでに知らない仲じゃないんだし、要らなくなるまで世話をするつもりだ。
ヘスティアだってヘファイストスさんの所に居たような生活はしないだろう。バイトだってしてるわけだし、追い出されるような真似はしない筈だ。
「まぁ納得出来ないなら、何かしらの成果を挙げてみたらどうだ?」
「成果…ですか?」
「おう。例えば月に部屋代を納めるとか、ダンジョン探索、もしくは店番の手伝いとか」
「でも僕、初心者ですし、逆に足を引っ張ったりとか…」
あー、どうしたって恐縮しちゃうわけか。
「それなら俺と一緒にダンジョンに行くか?
君の…えー、ベルだったな。ベルの戦闘も補助してやるし、気兼ねなくは無理としてもそこまで気を使うようなことにはならないだろ」
「え、えっと、良いんでしょうか」
「良いんだよ。
最近そういった役割が本職になりつつあるからな。大船に乗ったつもりで任せてみんさい」
「は、はい!」
うむ。いい返事だ。
「じゃあこれからよろしくな。
俺は大元剛。タケルって呼んでくれればいいぞ」
「僕はベル・クラネルです!よろしくお願いします!」
こうして、この世界の主人公と、この物語の主人公が互いに手を取り合ったのだった。
翌日。
「あれ?ベル様、どうかしました?」
「あ、リリ……うん。ちょっとね…」
夕方頃。ソーマファミリアの食堂にて、ベルが肩を落として溜め息をついているのを見つけたリリは声をかけた。
「今日は確かタケルとダンジョンに行ったと記憶してますが…何かありましたか?」
「うん…ダンジョンの探索って何だろうってね…」
「ああ……」
察した。察してしまった。
ほぼ毎日と言う程にタケルに付き合っていたのが感覚を麻痺させていたが、今思えば破天荒で常識やぶりだった。
「あれは特殊です。タケルだけがあんな感じなんです。
思えば初めてあったあの日から-ーーー」
それから二人はお互いに愚痴を言い合い、タケルに対する評価を露にするのだった。
「ぶへっくしょいぅあ!……リリだな」
自室にて、くしゃみの理由を言い当てるタケルが居た。
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