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真田十勇士

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巻ノ六十二 小田原開城その一

                 巻ノ六十二  小田原開城
 秀吉は家康を本陣に呼びまずは宴を開いた、そこには徳川家の主な将帥達もいて酒や肴を振舞われていた。
 秀吉は家康にまずは昔話をしていた、いつもの陽気な猿面で話していた。
「朝倉家との戦は大変でしたな」
「いや、全く」
 家康も笑顔で応える。
「あの時は」
「九死に一生でしたな」
「全く以て」
 こう秀吉に返す。
「後の姉川での戦もです」
「いやいや、あの戦は」
 姉川の合戦についてはだ、秀吉は家康に言った。
「徳川殿あってです」
「勝ったと」
「そうですぞ、我等なぞです」
 織田家の軍勢はというのだ。
「所詮そこにいただけで」
「力になっていないと」
「浅井殿に押されていました」 
 実際にそうだった、織田家の軍勢は総員一丸となって向かってくる浅井家の軍勢に押しまくられていたのだ。
「ですから」
「我等があってと」
「そうです」
 家康に確かな声で言う。
「まさに」
「あの戦では」
「あの時も然りで」
「武田家との戦でも」
「色々とありました」
「あの戦からも」
 長篠、正確には設楽ヶ原の戦の後もだ。家康は信長と共に武田勝頼と戦ったがこの戦では勝利を収めた。しかしだったのだ。
「武田家とはです」
「いや、死闘続きでありましたな」
「はい」
 家康は秀吉に答えた。
「何かと」
「そうでしたな」
「何度死線を越えたか」
 それこそというのだ。
「わかりませぬ」
「それ位にですな」
「色々ありました、しかし」
「それでもですな」
「この者達が随分と働いてくれて」
 四天王達を見ての言葉だ、その彼等がいてというのだ。
「助かりました」
「徳川殿の宝ですな」
 秀吉もその四天王達を見て盃を手に笑みを浮かべた。
「まさに」
「はい、それがしの第一の宝です」
「家臣の者達こそが」
「家臣達と民がです」
 自身の領地のというのだ。
「それがしの宝です、そして」
「土地もですな」
「そうです、これからも家臣と民達の為に」
 まさにと言う家康だった、秀吉の目を見つつ言うが心の中では彼の考えを察していてそのうえでその言葉を出させまいとしていりう。
「粉骨していきます」
「そうですか、では」
 だが秀吉はそ家康に笑みのままでだ、こう告げたのだった。
「この度の戦で、ですが」
「この度の」
「そうです、北条家は降るとか」
「それがしの陣に実は人が来まして」
 氏直からであることはだ、家康は言わなかった。秀吉は既に知っていることはお互いに知っているからである。 
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