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Blue Rose

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第二十六話 退所その十三

「むしろです」
「この二人も来てくれて」
「嬉しいです」
「これまでよく頑張ったね」
 岡島は優しい笑顔で優花に言った、彼もそうした顔になっていた。
「女の子になることにも訓練にも」
「どちらにも」
「うん、よくね」
 頑張ったというのだ。
「そして明日からはね」
「僕は外の世界で生きるんですね」
「そうだよ、ここで頑張れたから」
 だからこそともだ、岡島は優花に話した。
「これからもね」
「外の世界でも」
「生きていってね」
「じゃあ今から」
 看護士も言ってきた。
「お祝いしましょう」
「四人でね、ただね」
 岡島はここで苦笑いになってこんなことも言った。
「ここでで男は僕だけだね」
「あっ、そうですね」
「黒一点だね」
 女性達の中に男が一人だけということだ、逆の場合は紅一点となりこちらの方がよく使われる表現だろうか。
「これは」
「男の人は岡島さんだけなので」
「そうだよ、けれどそれもいいかもね」
「それはどうしてですか?」
「周りは美人だけだからだよ」
 だからだとだ、岡島は今度は明るく笑って言った。
「それでだよ」
「美人って」
「そう、君も含めてね」
 優花にも言うのだった。
「美人に囲まれているからね」
「またそんな冗談を」
「冗談じゃないよ、皆奇麗だよ」
 優花も副所長も看護士もというのだ。
「三人共ね」
「そう言っても何も出ないわよ」
 副所長は言う岡島に笑ってこう言った。
「お給料も上がらないわよ」
「別にそれはいいですから」
「そうなの」
「はい、本音を言っただけで」
「本音でお世辞かしら」
「本当のことを言ってるだけですよ」
 岡島は副所長にも笑って言う。
「それだけですよ」
「そうなの?」
「そうです」
「やれやれね、けれどね」
「今は、ですね」
「楽しくやりましょう」
 岡島は今度は優花を見て言った。
「これから」
「そうね、蓮見さんの門出を祝って」
 副所長も優花を見た、それは看護士もでだ。
 四人で乾杯してそうして楽しく飲み食いをしてお喋りをした。優花はそうして自分の新しい門出を祝ってもらった。
 そして次の日退所となったが岡島に笑顔で言われた。
「笑顔でね」
「はい、ここをですね」
「出てね」
 そしてというのだ。
「笑顔のままでね」
「アパートに入ってそして」
「学校にも行くんだよ」
「いつも笑顔で、ですね」
「笑う門には福来たるというけれど」
「それは本当のことですよね」
「そうだよ、本当にね」
 実際にというのだ。
「笑顔だとそれだけでね」
「幸運を招き寄せるんですね」
「だから何時でも、特にこうした時はね」
「笑顔で、ですね」
「行くんだよ」
 こう優花に言うのだった。
「新しい場所にね」
「わかりました、そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
「今まで有り難うございました、そして」
「また何時でもね」
「来させてもらいます」
 岡島に満面の笑顔で言った。
「また」
「その時もね」
「はい、笑顔ですね」
「それで来てね」
「わかりました、じゃあ」
「またね」
「はい、これまで有り難うございました」
 優花は明るい笑顔で療養所を後にした、そしてそのまま新しい生活に入った。彼女にとって第二の生活が今本格的にはじまった。


第二十六話   完


                         2016・6・20 
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