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Blue Rose

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第二十六話 退所その九

「永久追放にあって毎日そうした連中が来たんだから」
「そうですよね、やっぱり」
「冤罪でそうなったんだから」
 まさにというのだ。
「辛くない筈がないよ」
「この話はやっぱり冤罪ですか」
「僕は間違いないと確信しているよ」
 岡島はここでは言い切った。
「あんなおかしな話はないよ」
「その人まだ若かったんですよね」
「若し現役生活を続けていたら」
 そうなっていたならともだ、岡島は惜しみつつ話した。
「二百勝は間違いなかったね」
「そこまでの人だったんですね」
「三百勝いけたかもね」
「三百勝ですから」
「鈴木啓示さんみたいになれたよ」
 近鉄で三百十七勝を達成した大投手だ、監督としてはともかくピッチャーとしては偉大な野球人であった。
「怪我もしなかったら」
「そこまでの人だったんですね」
「二十三歳で百勝に到達出来たから」
 まさにというのだ。
「三十までにはね」
「二百勝もですね」
「夢ではなかったし」
 それだけのピッチャーだったというのだ。
「そうしたことを考えると」
「三百勝もですか」
「本当に到達出来たかも知れないよ」
「そうした人がですね」
「永久追放になったんだよ」
「その事件で」
「今は解除されたけれどね」
 しかしというのだ。
「その人の野球人生は奪われたんだ」
「そうなったんですね」
「うん、それでね」
「その人のお家にですね」
「マスコミは連日連夜押し寄せていたんだ」
「死にたい位辛かったでしょうね」
「そう思うよ、今は永久追放も解除されて平和に暮らしているけれど」
 それでもというのだ。
「死にそうになる位に辛かったと思うよ」
「そうしたことがあったんですね」
「だからね」
「僕も、ですね」
「はっきり言って我が国のマスコミはその時以上に酷いよ」
 まさにというのだ。
「何も進歩もないどころかね」
「退化しているんですか」
「劣化と言っていいかもね」
 そこまでかも知れないというのだ。
「何の倫理観も常識もないよ」
「だからですか」
「君も過去を気付かれるとね」
 その時はというのだ。
「そうなりかねないから」
「現実としてですね」
「うん、しかも連中はその無法が許されるから」
 かつてそのプロ野球選手にした様なこともである。
「報道の自由、それに情報と資金を独占して隠蔽出来るから」
「権力ですね」
「それもあるからね」
「やりたい放題なんですね」
「人を傷付けても許される数少ない職業だよ」
 マスコミこそはというのだ。 
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