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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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289部分:第四十話 揺れる大地その一


第四十話 揺れる大地その一

                  揺れる大地
 またしても車での旅を続けるアルデバラン達。キャンピングカーの中はかなりリラックスして楽しげな雰囲気のまま旅を進めていた。
「いや、イラクもな」
「中々いいか?」
 ブリットとチクがまたお茶菓子を食べながら楽しく談笑していた。
「羊美味いしな」
「なあ」
「イスラムはやっぱり羊だよ」
 ニコライも笑って話す。
「それに香辛料をたっぷりと効かしてな」
「ああ、それいいよな」
 グリーザもこれには笑顔で頷く。
「程よくな。ワインにも合うしな」
「だよなあ、本当に」
「結構いい場所だよな」
「まあそうだな」
 車を運転するモーゼスも彼等に応えてきた。ガムを噛みながら前を見ている。
「最初はどれだけ荒れ果てた場所かって思っていたな」
「ああ、まあな」
「砂漠ばかりかって思ってたぜ」
 彼等もそれを認める。実は本当にそう思っていたのだ。
「けれど実際はこれで結構」
「歴史的なものもあるしな」
「だよな」
「ここは古代より様々な国家が興亡してきた」
 アルデバランがケーキを食べながら述べてきた。チョコレートケーキである。途中でわざわざ買った洋風のケーキなのである。
 大きな手でその不釣り合いなまでに小さなケーキを食べつつ話に加わっていた。
「実に多くのな」
「バビロニアとかペルシアですよね」
「あとシュメールとかアッカドとか」
「ヒッタイトとかアッシリアもありましたよね」
「本当に多いな」
 青銅の者達はとりあえず思い出せる限りのこの一帯に興亡した国家を思い出す。確かに実に多くの国家がここで栄え滅んできているのだ。
「ローマ帝国もここに来たことがある」
「へえ、ローマもですか」
「ここまで来たことがあるんですか」
「そうだ。ビザンツ帝国の時にはペルシアと激しい攻防も繰り広げている」
 両国の争奪の地でもあったのである。チグリス=ユーフラテスの二つの川があるこの一帯はそれだけで恵みが約束され争奪の地になってきたのである。
 アルデバランはその歴史を語るのだった。その悠久の歴史を。
「そしてイスラム帝国が誕生してからもだ」
「結構以上に国家が移ってますよね」
「オスマン=トルコが支配していた時もありますし」
「それだけのものがあるのだ」
 アルデバランはまた言った。
「この国にはな」
「戦乱と争奪の場所ですか」
「そして繁栄と興亡の」
「そういうことだ。だから見るべきものも多い」
 アルデバランはまた述べた。
「ここはな」
「そうですね。何かそれを考えるとこうして車で旅をするのも」
「少し残念なような」
「それは仕方がない」
 それまでベッドで休んでいたアルゲティが起き上がって彼等に告げてきた。
「それはな」
「仕方ないんですか」
「それは」
「そうだ。俺達は観光に来ているのではないのだぞ」
 今更の言葉であったがそれでも青銅の者達は少しばかり忘れてしまっていた。
「それはわかっているな」
「あ、ああ。まあな」
「それはな」
 それを言われるといささか苦しい青銅の面々だった。額に汗が出ている。
 
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