特権階級
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第三章
「祖父ちゃんが言うたからな」
「そやからか」
「その言葉信じてか」
「あの国がどんな国か見る」
「そうするねんな」
「そや、マスコミとか先生はええ国やっていうけどな」
それでもというのだ。
「僕祖父ちゃんに言われたからや」
「それでか」
「あの国についてはええ国とはか」
「まだ言わんか」
「そやねんな」
「そうするわ」
実際にという返事だった。
「僕はそうするわ」
「そうか、偉い学者さんとか皆言うけどな」
「あの国はええ国やって」
「主席様の下凄い発展してるって」
「階級も何もないええ国やってな」
「地上の楽園やて」
「そう言うけどな、先生とかは」
それでもとだ、賢章の言葉は変わらない。
「僕祖父ちゃんの言うこと信じるわ」
「陸軍将校やった祖父ちゃんか」
「士官学校出てた」
「先生は軍隊あかんいうけどな」
それでもとだ、賢章は祖父自身についても言及した。
「祖父ちゃん立派や」
「その祖父ちゃんの言うことやからか」
「ここは信じてか」
「あの国も見る」
「今は何も言わんねんな」
「そうするわ」
実際にと言ってだ、そしてだった。
彼はその国について見続けた、そうして話も聞いているうちにだ。
あることに気付いた、それは。
「あの国階級あるんか?共産主義にも」
「共産主義やのにか?」
「階級あるんか?」
「共産主義って階級ないやろ」
「皆平等な社会やろ」
「そう言われてるけどな」
それでもとだ、高校生になった彼は高校のクラスで友人達に言った。
「何か官僚とか士官が偉くてな」
「農民とか労働者はか」
「その下におるっちゅうんか」
「何かプロレタリアよりもや」
俗にそう言われる彼等よりもというのだ。
「党ばっかり出んか?」
「共産党のか」
「党員とかか」
「そういう人が偉くてや」
党員がなる官僚や高級軍人達がというのだ。
「労働者とかより上におらんか?」
「そうか?」
「別にそうは思わんけどな」
「パレードとかにお百姓さんとか労働者とか出て来るし」
「あのマークかてな」
共産主義のヴォストークだ、ソ連の国旗にもなっている鎌と鎚だ。言うまでもなく鎌は農民で鎚は労働者を象徴している。
「ちゃんとあるし」
「やっぱり共産主義って平等やろ」
「誰もがな」
「そうした国やろ」
「けどな、その割にはや」
また言った賢章だった。
「書記長ばっかり出るやろ」
「そういえばそうか?」
「前川の言う通り」
「そうかもな」
「言われてみれば」
「特にあの国な」
菅野が絶賛していたその国はというのだ。
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