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天使のエンブレム

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第七章

 普段は何でもない帰り道でもだ、必死になっていた。
「燃料がもうです」
「ああ、この状況だとな」
「心配ですね」
「こんなのだとな」
 キートンは蒼白の顔でブルーに応えた。
「まずいな」
「そうですね」
「やっぱり不時着か」
「基地はもうすぐですが」
「何とかならないか」
 かなり真剣にだ、キートンは言った。
「この状況は」
「こうなったらあれですね」
「あれ?何だ?」
「天使ですよ」
 こうキートンに言うのだった。
「機首に描いた」
「ああ、あれか」
「はい、天使のご加護を願いましょう」
「そうだったな、俺達には天使様がついていたな」
「だからです」
 それで、というのだ。
「ここは天使様にお祈りしましょう」
「それしかないな」
「こんな状況ですと」
「本当にそうだな」
「ああ、それじゃあな」
「ここは」
「ああ、皆いいな」
 キートンはブルーの言葉を聞いてあらためてだった、全ての搭乗員達に言った。
「祈るぞ」
「はい、天使に」
「そうしてですね」
「ご加護得ますか」
「そうしますか」
「そうするぞ」 
 ここはそうしてというのだ。
「絶対に全員生きて基地に帰りたいだろ」
「出来れば怪我もなく」
「これが最後の出撃ですからね」
「生きてアメリカに帰りたいですよ」
「もうこれで」
「それならな」
 この状況に至ったからにはというのだ。
「もう最後の最後だ」
「天使にお願いですね」
「そういうことですね」
「全員で祈れ、何かにしがみついたうえでな」
 機長として安全面への配慮も忘れていない。
「いいな」
「了解です」
「俺達全員で祈ります」
「俺も祈る」
 操縦しつつというのだ。
「基地が見えてきたんだ」
「はい、後は滑走路に入って」
「着陸だけですね」
「いいか、本当にあと少しなんだ」
 エンジンは二つも停まり年力も残り少ないがだ。
「天使様にお願いだ」
「わかりました」
 ブルーも他の搭乗員達もだ、誰もがだった。
 機首の天使に祈った、キートンも操縦しつつ祈り。
 滑走路に入った、中隊長機に事情を話していたので着陸は最優先させてもらっていた。
 管制塔からの誘導を受けてだ、そのうえで。
 何とか着陸コースに入り、それから。
 何とかだ、足を出してだった。
 着陸に入った、だが。
 ここでだ、その足がだった。
 一つグラリときた、しかし。
 キートンも他の搭乗員達も必死に祈った、そのお陰か。 
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