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朝の騒動

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第一章

                 朝の騒動
 森石剣には困ったところがある、それは別に高校の勉強のことでもスポーツのことでもない。そうしたところはそこそこいけている。
 ではその困ったことは何か、彼自身に母の京子が怒った顔でよく言った。
「朝は早く起きなさい」
「無理だよ」
 剣はその白い面長の顔でむっとなって答えた。頬のところが特にシャープで唇はピンクで横には小さめで肉厚がある。眉は太いが毛の量は少なめだ、目は切れ長な感じで奥二重の優しいもので髪の毛は黒くショートヘアにしている。背は一七八程ですらりとしている。
 その彼がだ、自分にそっくりの顔だが髪の毛はロングヘアの母に言うのだ。
「だって僕朝苦手だから」
「それでっていうのね」
「朝はね」 
 どうしてもというのだ。
「中々ね」
「起きられないっていうのね」
「そうだよ、それ母さんと父さんが一番知ってるよね」
「親子だからね」
「そう、だったらね」
 それならというのだ。
「もうわかってるでしょ」
「ええ、子供の頃からね」
 それこそとだ、京子も答えはした。
「伊達にあんたを起こしてないわよ」
「僕寝覚めは悪いんだよ」
 また言う剣だった、それも悪びれず。
「誰でも欠点はあるじゃない」
「欠点があってもね」
 それでもと返す母だった。
「克服するものでしょ」
「無理なものは無理だよ」
「目覚まし時計一体何個置いてるのよ」
「一ダース位かな」 
 あっさりとした返事だった。
「今は」
「呆れたわ」
 話を聞いた母のコメントだ。
「正直」
「目覚ましが多くて」
「一ダースも一気に音が鳴っても起きないことによ」
「実際に起きられないから仕方ないじゃないか」
「というか何でそこまで寝起きが悪いのよ」
「起きられないんだよ」
「いつも十二時には寝ているのに」
 剣は夜更かしはしない、遅くてもその時間にはいつも寝ている。だから健康的な生活をしていることは確かだ。
 しかしだ、それでもなのだ。
「起きられないのよ」
「十時に寝ても同じだよ」
「寝起きは悪いわね」
「子供の頃からね」
 ここでは悪びれず言った剣だった。
「そうだよ」
「呆れるわね」
「呆れても起きられないから」
「そんなのじゃ将来苦労するわよ」
「将来漫画家とユーチューバーとまとめサイト管理人全部やるからいいよ」
 つまり寝起きが関係ない仕事に就くというのだ。
「全然平気だよ」
「どれか一つにしたら?」
「全部したら食い扶持に困りそうにもないから」
「生活のことは考えているのね」
「これでも真面目なつもりだよ」
 少なくともニートになるつもりはないのだ、剣にしても。
「だからね」
「寝起きの関係のないお仕事をするのね」
「そう、安心してね」
「安心しないわよ、とにかくね」
「ちゃんと起きろっていうんだね」
「何百回でも言うわよ」
「言っても起きられないけれどね」
 自分でも悪い意味で達観して諦めている剣だった、そして一ダースの目覚ましと母の怒鳴り声でも中々起きない朝を過ごしていた。 
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