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生贄になった神

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第三章

「思いついたのだが」
「何をだ、兄者」
「何を思いついたのだ」
「この世界を創造しよう」
 これがオーディンの考えだった。
「今からな」
「創造だと」
「これからそうするのか」
「今から」
「兄者はそう考えているのか」
「そうだ、このまま味気ないままでいてはどうにもならない」
 全く以て面白くない、それ故にというのだ。
「ここはな」
「世界を創造する」
「そのことはわかったが」
 弟達は兄の言葉を受けた、だが。
 そのうえでだ、兄に問い返した。
「どうして創造するのだ」
「何もないが」
「何もないこの世界でどうして創造するのだ」
「無から創造するのか」
「これから我等の力でだ」
「そうするのか」
「いや、ある」
 兄は何もないと言う弟達にこう返した。
「既にな」
「あるというがだ」
「何処何があるのだ」
「目の前にある」
 オーディンはここでユミルの、今しがた三人で倒した巨人の身体を指し示した。
「これがな」
「ユミルの骸か」
「この骸を使ってか」
「そのうえで世界を創造する」
「そうするのか」
「そうだ、この巨大な身体を使えばだ」
 巨人の祖であるユミルのだ。
「必ず出来る、違うか」
「そうだな、確かにな」
「ユミルの身体は大きい」
 弟達も兄の言葉に頷いた、今度は完全に納得して。
「これだけの大きさならばな」
「必ず世界を創造出来る」
「このユミルの骸を使えば」
「相当な世界になるな」
「でははじめよう」
 早速とだ、オーディンはヴィリとヴェーを促してだった。ユミルの亡骸を使って世界の創造に入った。
 まず血は海や川になった。
「巨人達を流した血が海となりだ」
「そして川となる」
「世界を覆うのだ」
 そこまでのものになった、血は。
 そしてだ、身体は。
「海の中に浮かべ」
「革をその中に流せ」
「そのまま横たわってだ」
 身体自体はそれとなり。
 身体から骨、そして歯を取り出したが。
「大きな骨は山だ」
「小さな骨は岩だ」
「歯は石となれ」
 それぞれそうなった。髪の毛は。
「草だ」
「そして花だ」
「多くの髪の毛はそうなってしまうのだ」
 そうしたものになり。
 睫毛でだ、この世界を囲んでだった。
「壁だ」
「世界を守る壁だ」
「外の世界にいる者達へのな」
 彼等は遥か彼方に見ていた、そこに炎に覆われた世界があった。ユミルの前からあったかも知れないその炎の世界をだ。 
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