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真田十勇士

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巻ノ五十九 甲斐姫その二

「是非な」
「わしがか」
「うむ、そうしたいが」
「わかった」
 大谷もまた友の言葉に頷いて返した。
「それではな」
「何か考えがあるか」
「見よ、この城を」
 忍城をというのだ。
「三方が沼と田に囲まれておる」
「そこから攻めれば足を取られる」
 その沼や田にだ、そうなることは一目瞭然だ。
「そしてそこを攻められてじゃ」
「こちらがやられる」
「だからじゃ」
「力攻めは無理じゃ」
 石田はこのことを強く言った。
「それでわしも言うのじゃ」
「わかっておる、そして言ったが」
「三方が沼、そして田じゃな」
「田がある、即ちじゃ」
「言うまでもない、田には多くの水が必要じゃ」 
 これを知らぬ者はいない、切れ者として知られる石田ならば尚更だ。
「実際近くに水源があるが」
「川があるな」
「その川を使うぞ」
「水攻めか」
「うむ」92
 まさにそれだというのだ。
「それを考えておる」
「そうか、ではな」
「早速そうして攻めるぞ」
「堤を造ってな」
「この時用心すべきは」
 何かというとだ、大谷はその目を鋭くさせながら言うのだった。
「堤を壊されないこと」
「そうなっては終わりじゃな」
「そこに用心してな」
「堤を築いていくか」
「そして水で囲んでな」
「攻め落とすか」
「水で囲めば敵も諦める」
 忍城の北条の者達もというのだ。
「そこで降る様に言おうぞ」
「わしは無駄な殺生は嫌いじゃ」
 石田はこのこともはっきりと言った。
「何よりもな」
「そこも御主のいいところじゃ」
 またこう言った大谷だった。
「殺生を好まぬものな」
「戦は人が死ぬ」
 石田はまたしてもはっきりと言った。
「しかしじゃ」
「それでもじゃな」
「そうであっても血は出来る限り少ない方がよい」
「流れる血はじゃな」
「死ぬ者は最低限でよい」
 あくまでというのだ。
「だからな」
「この度の城攻めでもじゃな」
「降る様にする」
 攻め落とすよりもというのだ。
「そうしようぞ」
「うむ、ではな」
「水攻めでいこうぞ」
 大谷に応えてだ、そしてだった。 
 石田は大谷と共に忍城の周りに堤を築きそのうえで近くの川から水を流し込みにかかった、水攻めにする為に。
 この際石田は兵達にだ、こう命じていた。 
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