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第一章

                 鵺
 西野瑠璃は地元である大阪市平野区の中学校に通っている、所属している部活は弓道部だ。
 小柄で身体つきは幼い。大きな黒目がちの目に黒い斜め下に垂れた眉を持っている。やや面長で黒髪をセミロングにして右の前髪にヘアピンを付けている。
 両親は共働きで家では学校の先生をしていたがもう定年を迎えている祖母と一緒にいることが多い、成績は中の上で部活では。
「初段も取れたから」
「はい、次はですね」
「もっと上を目指してね」
 顧問の先生に的の真ん中を射抜いた後で言われていた。
「八条神社での大会にも出るけれど、今度」
「その大会でもですね」
「優勝出来る位にね」
「中学二年の部で」
「それを目指してね」
「優勝は」
 瑠璃は先生、若くて凛とした美貌を見せている彼女にこう返した。
「とても」
「いけるわよ、今の調子なら」
「今の、ですか」
「そう、最近よく真ん中を射抜いてるから」
 的のそれをというのだ。
「だからね」
「この調子でいけば」
「優勝も夢じゃないわ」
「そうですか」
「あの神社の大会はね」
 八条神社のそれはというのだ。
「神事だから」
「神聖なものであって」
「そう、特別なものだけれど」
「その大会でもですね」
「やっぱり優勝出来たらそれに越したことはないでしょ」
「はい」 
 先生のその言葉にはだ、瑠璃も素直に頷くことが出来た。
「確かにそうですね」
「だからね、西野さんもよ」
「優勝をですか」
「目指してね」
「わかりました」 
 瑠璃は先生の言葉に頷いた、そして。 
 三年の先輩達もだ、瑠璃に声をかけた。
「瑠璃ちゃんならいけるから」
「頑張ってね」
「その調子でいけばね」
「本当に優勝出来るから」
「それに」
 先輩達は瑠璃にさらに言った。
「全国大会にもね」
「そちらにも出られるから」
「だから頑張ってね」
「まずはこの大会でね」
「何か凄いことになってません?」
 瑠璃は先輩達の言葉に戸惑いながら応えた。
「全国大会とか」
「何言ってるの、うちは何度も出てるのよ」
「一昨年も出たしね」
「去年は惜しかったけれど」
「今年こそはよ」
「いけるから」
「だから私もですか」
 瑠璃もとだ、先輩達に尋ねた。
「全国大会に」
「そう、頑張ってね」
「まずは神社の神事よ」
「その大会よ」
「それを頑張ってね」
「そうさせてもらいます」
 瑠璃は戸惑いながらも先輩達に応えた、そして部活を真面目にして。
 家に帰る、その時はもう夕暮れ時だった。そろそろ外が暗くなろうとしている。 
 瑠璃はその中を一人袋に入れた弓を右手に鞄を左手に持って家に帰っていた、下校の道は人の多い安全な道、学校で指定された道を通っている。 
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