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真田十勇士

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巻ノ五十八 付け城その十三

「その戦は」
「ですな」
 利家もすぐに応えた。
「真田殿の策のお陰で」
「幾位先々の城は次々と降っております」
「ならばこのまま進みますが」
「しかしです」
 ここでくこう言った景勝だった。
「中には降らぬ城もあるやも」
「そうした城があれば」
「その時は囲むなりして」
 そのうえでというのだ。
「攻めることも頭に入れておきましょう」
「ですな」
 利家もわかっている返事だった、そして。 
 あらためてだ、こう言ったのだった。
「ではその時はそれがしが」
「前田殿がですか」
「攻めまする」
 景勝に対して言った。
「お任せあれ」
「いえ、それはです」 
 景勝も静かだが負けていない返事だった。
「それがしがです」
「そう言われますか」
「上杉家の武をお見せします」
 こう言って引かない。
「お休みあれ」
「そうはいきませぬ」 
 前田はまた言った。
「それはです」
「前田殿のですか」
「我等も武をお見せしたいので」
 利家は笑みを浮かべて言う。
「是非共」
「引かれませぬか」
「はい」
 どうしてもという言葉だった。
「ここは」
「それは弱りましたな」
「ははは、ですな」
「どうしたものか」
「ではです」
「ここはです」
 兼続と奥村がここで言った。
「くじ引きかです」
「何かで決めてはどうでしょうか」
「当たればそちらにと」
「そうされては」
「ふむ」
 利家は二人の言葉を聞いて言った。
「そうじゃな」
「はい、では」
「そうしましょうぞ」
「ではな」
 頷いてだ、そしてだった。
 彼等は彼等の戦を進めていた、北陸勢は順調に進軍をしていた、だが全ての者がそうでもなかった。この戦においても。


巻ノ五十八   完


                     2016・5・22 
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