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真田十勇士

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巻ノ五十八 付け城その十一

「伊達政宗殿のこととはな」
「用心すべき御仁だと」
「後で文を書く」
 その秀吉宛にというのだ。
「そうしよう」
「それがよいですな」
 奥村も利家に応えて言う。
「拙者も直江殿のお話を聞きますと」
「危ういと思うな」
「独眼竜といいますが」
 奥村は政宗のその仇名も言った。
「その隻眼で恐るべきものを見ていますな」
「天下をじゃな」
「そう感じました」
「だからじゃな」
「降ってもです」
「そこで終わりではないな」
「機があればです」
 まさにだ、その時はというのだ。
「動くでしょう」
「そうじゃな、ではな」
「はい、あの御仁はです」
「降っても備えが必要じゃな」
「殿か徳川殿か」
 奥村は鋭い目になって主に語った。
「蒲生殿か」
「忠三郎か」
 利家はその蒲生氏郷の名を聞いて彼を常に呼ぶ名で言った。
「あの者位か」
「はい、そう思います」
「そうか、ではな」
「はい、間違ってもです」
 それこそというのだ。
「油断してはなりません」
「では関白殿にお話しよう」
「是非共」
「その様にな、そして関東じゃが」
 今彼等が攻めている場所のこともだ、利家は話した。
「思った以上に順調じゃ」
「確かに。このままいくと」
 景勝も言う。
「半年も経たずに」
「戦は終わりますな」
「そうなるかと」
「思ったもよりも楽か、しかし」
「北条家にもです」
 景勝は懸念を抱いた利家に言った。
「骨のある者はいます」
「ですな」
「忍城はです」 
 この城のことを言うのだった。
「特にです」
「その甲斐姫がいるという」
「あの城はそうそう陥ちぬかと」
 こう利家に言うのだった。
「相当な御仁に相当な兵を付けぬ限り」
「あの城は確か」
 利家はここで兼続を見て言った。
「佐吉と桂松が攻めることになっておる」
「佐吉殿ですか」
 実は兼続は石田と深い付き合いがある、親友同士と言っていいまでに仲がいい。お互いによく知った間柄である。
「佐吉殿は戦もです」
「うむ、出来る」
 利家もこう言う。
「戦のことをよくわかっておる」
「特に銭と兵糧のことが」
「桂松もな、二人共な」
「はい、しかも勇も備えています」
「決して柔弱の徒ではない」
 利家は強く言い切った。 
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