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先恋

作者:マナ
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先恋〜プロローグ〜

 
前書き
初めまして、マナと言います。
小説初投稿並びに初心者です。下手な部分等あると思いますが、許してやってください。 

 
「今日から此処が私の…」
教師になって三年、二年間勤めていた学校から転勤が決まり、新しく勤めることになった、“大北東山高校”。その校舎を見つめ、24歳、国語教師の瑞木沙奈は小さな声で呟く。まだ教師になって時間が経っていないからか、初の転勤だからかは分からないが、異常な程の緊張と期待、不安が押し寄せる。
「だ、大丈夫、大丈夫…」
沙奈はゆっくりと、校門から中へと入った。

初めて見る学校、緊張が中々ほぐれない。如何しても息が荒く、鼓動が早くなる。どうしたものか、と沙奈は考える。ーーと、沙奈はある事に気がつく。転勤し、新しい所へ来たという事は……

「は、初めまして!瑞木沙奈と言いますっ!」
全校生徒の前での挨拶。舞台の上からたった一人。大人数の前で。慣れていないとは言え、緊張で足が震える。ゆっくりと深呼吸をする…が、何も変わらない。呼吸の荒さがマイクに伝わらぬ様、何とか呼吸を整えようとする。
「えっと…き、教科は国語を担当します!今年で三年目なのですが…」
取り敢えず、言うべきだろうかと思う事を話す。大都会ではないが、田舎でもないこの場所では、中々の生徒数。その視線全てが自分に注目しているとなると、緊張がおさまらない。
「皆さんと沢山お話出来たらと思います!」
あと一言、沙奈はゆっくりと息を吸う。
「お、お願いしましゅっ!」
最初から静かだった空間。それが今静かになった様に感じる。しまった…、沙奈は顔を赤くし、席に着く。
(噛んでしまった…)
頭の中に先程の自分の言葉が流れる。穴があるなら入りたい気分だ。
(お、お願いしましゅって何!お願いしましゅって‼︎)
今すぐ両手で顔を覆いたいが、流石に出来ない。早く此処から去りたい…と、生徒の中で笑っている人がいた。教職員にもいる。必死で笑いを隠すが、隠しきれていない顔…。
(来ていきなり醜態を晒すなんて…)
生徒は子供だ。笑っても何とも言えないだろう。それが、教職員数名にも居るのだ。俯向くしかない。恥ずかしさで押しつぶされそうだ。まだ笑っているか?見たくもないのに見てしまう…、笑っている。見るんじゃなかった…。視線を外そうとした時、ある男子生徒と目が合った。名前も知らない、声も聞いた事がないその生徒は、笑いを我慢することもなく、ましてや、周りには目もくれずに、此方を見つめていた。周りなんてどうでも良い。そう言っている様に、ただ、ジッと、此方を見ている。目が合っていることには気付いていないのか、ただ、此方を見ているだけ。ボーッとしているだけで、頭の中では笑っているのかもしれない、それでも、今こうして笑う事なく見てくれている事に救われた。
(ありがとう…)
今此処で、声に出しては言えない言葉を心の中で何度も繰り返した。嬉しさで、心が温かくなった。あの苦しみが消えた様に、無くなった。少しすると、その生徒があ…っとした顔をして、胸ポケットに入れてあったらしい眼鏡を取り出した。どうやら目が悪いらしいが、それをかけた瞬間、その子の表情が笑みに変わる。それは、周りがしている様な人を小馬鹿にした笑みでは無かった。私の緊張の解けた顔を見て、良かったとでも言ってくれる様な笑みだった。
(あ…、)
安心させてくれるその笑み、それは、悲しみも、恥ずかしさも全てを消してくれた。
(後でお礼言わなきゃ…)
何処までも温かさしか見えないその生徒に、心を優しくほぐされた事を、沙奈は感じていた。
(こんな子もいるんだなぁ…)
この日から少しずつ、その生徒に対する思いが許されない方向へと変わっていく事に、沙奈はまだ気付いていなかった。 
 

 
後書き
初めまして、この話を読んで下さり、ありがとうございました!色々とおかしな点があったのではとドキドキしております、これからもまだ話は続いていきますので、何卒、宜しくお願いします! 
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