Blue Rose
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第二十三話 完全にその六
「相当に強い心でないと出来ないことだから」
「そうですよね、やっぱり」
「一生のことよ」
「一生向かわないといけないことですね」
「隠すことも大変だけれど」
「それ以上にですね」
「むしろ遥かにね」
隠すことよりもというのだ。
「大変なことだと思うわ」
「僕が元男の子だったということを公表することは」
「貴女はその事実、世間の目と一生向かわないといけないのよ」
「そう考えると」
「隠す場合は事実をそうすればいいだけよ」
「けれど公表すると」
「事実、そして世間と向かい合うことになるわ」
その両方と、というのだ。
「そしてそのことをいつも意識していないといけないから」
「隠すよりもですか」
「ずっと辛いと思うわ」
「だからですか」
「公にしろとはね」
その道はというのだ。
「私は言えないわ」
「その方がずっと辛いから」
「そうよ、だからね」
「僕は出来るだけですか」
「公表してあらゆることに向かい合えるだけの強さがないとね」
「しない方がいいんですね」
「そう思うわ」
優花のその澄んだ目をじっと見据えて言うのだった。
「その道はかなり辛いことは間違いないから」
「強さがないとですか」
「それだけのね」
「そうなんですね」
「そう、さもないと潰れるのは貴女よ」
他ならぬ優花自身だというのだ。
「それはね」
「だからですか」
「世の中善意の人ばかりじゃないから」
「岡島さんもよくそうお話してくれます」
「ヤクザ屋さんやもっと悪質な人がいるから」
「マスコミとかにですね」
「マスコミに多いのは確かね」
副所長もこのことは否定しない、マスコミという世界に腐敗しきった輩が非常に多く存在していることをである。
「そして普通に病んでいる人もいるわ」
「世の中にですね」
「ええ、そうした人が貴女を見たら」
優花の過去、それをだ。
「何をするかわからないな」
「悪意から、ですか」
「そうよ、ブログやツイッター、掲示板でもそうね」
インターネットでのだ。
「すぐにおかしな人が沢山出て来るでしょ」
「言われてみれば」
「そうした人に向かえるかしら」
優花の目をだ、今もじっと見据えて問うた。
「貴女は」
「それは」
「よくタレントさんのブログが炎上するでしょ」
こうした話は枚挙に暇がない、ツイッターでも頻発している。
「ちょっとしたことで」
「はい、普通に批判する人もいれば」
「攻撃するのが好きで叩く人がいるわね」
「そうした人が来るから」
「そう、危険よ」
真実、優花のそれを公表することはというのだ。
「どうしてもね」
「だから隠す方がですか」
「こちらも大変にしても」
「それでもですね」
「危険も苦労もずっと少ないわ」
公表するよりもというのだ。
「だからね」
「隠す方がいいですか」
「私はそう思うわ」
「そうなんですね」
「何でも立ち向かうといいというのじゃないのよ」
「向かって潰れることならですね」
「逃げる、隠れる方がいいの」
かなり真剣にだ、副所長は優花に話した。
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