英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 アリサのお見合い篇
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第2話
~同時刻・ルーレ・シュバルツァー伯爵邸~
「へっ!?お、俺に縁談!?」
「(兄様に縁談!?まさかこれって未来のキーアさんが言っていた……!)どういう事ですか、お父様、お母様!私と兄様が恋仲の関係で、将来夫婦になる事はお二人ともお認めになられたでしょう!?」
同じ頃父であるシュバルツァー伯爵から縁談の話を聞かされたリィンは驚き、エリゼは血相を変えた後机を叩いて立ち上がって怒りの表情で声を上げ
「エリゼ、貴女の気持ちはよくわかっているから少しは落ち着きなさい。私達は貴女達の仲を引き裂くつもりなんて一切ないわ。」
「……………わかりました。」
そして母親であるルシア夫人に宥められたエリゼは不満げな様子を見せながら椅子に座り直した。
「”ラインフォルトグループ”は知っているか、リィン。」
「へ?あ、ああ、それは勿論。”碧の大樹”での戦いの時に援軍として来たⅦ組のメンバーの一人――――アリサだったか。確か彼女がそのラインフォルトグループの会長の娘で、共に戦った事はあるけど………」
「知っているのならば話は早い。そのアリサさんが今回の縁談相手だ。」
「!!(やっぱり………!)」
「へっ!?な、なんで彼女が………?というか向こうも俺とエリゼの関係は知っているはずだけど……………」
シュバルツァー伯爵の話を聞いたエリゼは目を見開き、リィンは呆けた声を出した後戸惑いの表情を見せた。
「実は……………」
そしてシュバルツァー伯爵は二人にラインフォルトグループが縁談を申し込んできた理由を説明した。
「………あのラインフォルトグループがそこまで追い込まれている状況だなんて…………」
説明を聞き終えたリィンは驚き
「………内戦の件やかつてクロスベルを脅かしていた”列車砲”をエレボニア帝国軍に提供した件もある上、そこに追い討ちをかけるかのように新しくできた制度――――”工匠”の制度によってゼムリア大陸に進出し始めている”工匠”が作る製品で利益が更に減少している状況なのですから、仕方ありません。………お父様。一つお聞きしたい事があるのですが。」
エリゼは静かな表情で答えた後シュバルツァー伯爵を見つめた。
「何だね?」
「……何故、今回の縁談を受け入れたのですか?政略結婚である事にはある程度納得できます。重婚の件だって、珍しい事ですが今の時代一般の方々にも受け入れられている事なので私がアリサさんの事を2人目の妻として認めれば構いません。ですが倒産の危機に陥っているラインフォルトグループの為に何故今回の縁談を受け入れたのでしょうか?話を聞く限り、ラインフォルトグループ側にしか得がないようにしか思えないのですが………」
「確かに言われてみればそうだよな…………」
エリゼの疑問を聞いたリィンは頷いた後考え込んだ。
「………ラインフォルトグループが倒産してしまえば多くの失業者が各地で出てしまい、このルーレを含めた各地での税の収入が大幅に下がる恐れや多くの民達が貧困に苦しむ恐れが出てくる話は随分前から両帝国で挙がっていたんだ。かと言って、ラインフォルトグループの動きを制限しているメンフィル、クロスベルの両帝国は内戦に加担したラインフォルトグループをそう簡単には信じられない……なので自分達が信用できる”証”が欲しい。」
「そこに向こうから申し込んできた縁談話が渡りに舟……となった訳ですか。」
「つまりアリサは人質のような役割か…………」
シュバルツァー伯爵の説明を聞いたエリゼとリィンはそれぞれ複雑そうな表情をしていた。
「二人の今後を考えるとできれば受けたくなかったのだけど、色々と協議した結果エイフェリア様を始めとしたクロスベル帝国側はその件で納得したし、メンフィル帝国側からも縁談を受けるように命令が来ているのよ。それも皇族の方から直々に。」
「リウイ陛下……いや、シルヴァン陛下達から直々に……?」
ルシア夫人の話を聞いたリィンは不思議そうな表情をし
「いや、リフィア殿下だ。」
「へっ!?」
「リフィアが!?」
シュバルツァー伯爵の答えを聞いた二人は驚いた。
「……むしろ私はエリゼが知らない事の方が少々驚いたのだが。常に傍で仕えて、友人同士として親しい間柄なのだろう?殿下から既に話は聞いていると思っていたのだが………」
「今日の話で初めて知りました!(あの娘ったら……!さてはいつも私に怒られている意趣返しに私を驚かせる為にわざと黙っていたのね……!帰ったら覚えていなさい……!)」
シュバルツァー伯爵に尋ねられたエリゼは内心リフィアに怒りを覚えながら怒りの表情で答えた。
「それでどうするのかしら、リィン?リフィア殿下からはどうしても嫌なら断っても構わないと伝えられてはいるけど………」
「…………………いや、受けるよ。多くの民達の生活がかかっている上、少なくともお見合いをしただけでもラインフォルトグループ側も二大国に対して信用できる”証”を見せた事にはなると思うし、何よりリフィア殿下直々の命令を断る訳にはいかない。」
ルシア夫人に尋ねられたリィンは考え込んだ後答え
「エリゼも不満とは思うが、納得してくれないか?」
「…………………わかりました。多くの民達の生活がかかっている上、祖国メンフィルの皇族であり、シュバルツァー家に目をかけて下さっているリフィア殿下直々からも命令が来ているのですから、シュバルツァー家の一員として納得します。」
シュバルツァー伯爵に尋ねられたエリゼは不満そうな様子を隠さない表情で答えた。
「エリゼ……心配しなくても、俺はずっとお前と一緒だ。」
エリゼの様子を見たリィンは優しげな微笑みを浮かべてエリゼの頭を撫で
「に、兄様……………いい加減に妹扱いは止めて下さい。私達はもう兄妹の関係ではなく、将来夫婦になる関係なのですから。」
頭を撫でられたエリゼは若干頬を赤らめて恥ずかしそうな表情でリィンを見つめ
「でも、頭を撫でなかった時は『薄情です』って言うじゃないか。一体俺はどうすればいいんだ?」
「知りません。ご自分の胸にお聞きになってください。」
戸惑いの表情を見せて言ったリィンの言葉を聞いたエリゼはわずかに怒気を纏いながら目を伏せて静かな口調で答え
「??」
エリゼの反応を見たリィンは首を傾げた。
「クスクス………」
「やれやれ………婚約者ができても鈍感な所は全く治っていないようだな………」
二人の様子を見ていたルシア夫人は微笑み、シュバルツァー伯爵は呆れた様子で溜息を吐いた。
そしてお見合いの当日……………………
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