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真田十勇士

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巻ノ五十五 沼田攻めその十

「兵達がここに来ればな」
「その兵達ですが」
「次々と来ていますな」
「いや、実にです」
「集まるのが早いですな」
「流石は真田じゃ」
 こうも言った幸村だった。
「真田の兵じゃ」
「声があればすぐに馳せ参じる」
「それが真田の兵ですな」
「そして戦う」
「まさにそれが」
「そうじゃ、もう集まった」
 集まるべき兵達がだ、それを見てだった。
 幸村は集まった兵達にもだ、強い声で言った。
「ではこれより城に入る」
「はい、さすれば」
「城に入りそのうえで出陣ですな」
「いよいよ」
「そうじゃ」
 そうなるというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「出陣ですな」
「あらためて」
「そうなる、関東に出る」
 まさにと言うのだった。
「その前に城に入るのじゃ」
「さて、では」
「これより」
 兵達が皆集まりだった、幸村達は上田城に入った、そしてそのうえでだった。
 幸村は兵達を然るべき場所で休ませて自身が十勇士達を連れて昌幸の前に参上した。見れば真田家の重臣達が揃っていた。
 当然昌幸もいた、その彼も重臣達もだった。
 既に具足で身を固め陣羽織も身に着けている、昌幸はその幸村を見て言った。
「来たか」
「はい、只今」
「ではこれより軍議を開こう」
 こう言ってだ、実際に昌幸は軍議を開いた。その結果だった。
「それがしは、ですか」
「そうじゃ、御主は沼田に行くのじゃ」
 こう幸村に言うのだった。
「十勇士達と己の兵を連れてな」
「そしてですな」
「源三郎の救援に向かうのじゃ」
「兄上と共に沼田城を囲む北条税を退けよといいますか」
「そうじゃ」
「ではすぐに」
「そしてそのうえで源三郎と合流してな」
 昌幸はさらに話した。
「沼田の方から上杉殿の軍勢と合流してじゃ」
「そのうえで」
「北条家を攻めよ」
「わかりました、その様に」
「頼むぞ、わしは主な者達を連れてな」
 今ここに集まっている重臣達の中でというのだ。
「甲斐から武蔵に入る」
「では徳川殿と共に」
「そうなる」
「ですか、では」
「うむ、沼田は御主達二人に任せた」
 信之と幸村、二人の息子達にというのだ。
「ではな」
「畏まりました、しかし」
「わしのことか」
「はい、徳川殿の軍勢に加わるとのことですが」
「心配は無用じゃ、今は味方同士じゃ」
「かつて刃を交えても」
「それは戦国の常」
 だからこそというのだ。 
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