ソードアートオンライン~混沌の暗殺者~
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デスゲーム
転移のとき独特の青い光に包まれ、転移させられた先は始まりの街の転移門前だった。他にもたくさんのプレイヤーが転移させられたらしく、広場は人で埋め尽くされていた。
「バグかな?」
その時頭上に[Warning][System Announcement]という単語が、真っ赤なフォントで空を染め上げていった。
「バグの説明かな?」
結論から言えばそうであった。しかし、この後の現象は僕の予想を大きく上回るものだった。空を埋め尽くす深紅のパターンの中心部分がまるで巨大な血液の雫のようにどろりと垂れ下がった。高い粘度を感じさせる動きでゆっくりとしたたり、赤い液体は突如空中で形を変えた。
出現したのは、身長20メートルはあろうかという、深紅のフード付きローブをまとった巨大な人の姿だった。
いや、違う。僕達プレイヤーは下から見上げているのでフードの中が見通せるのだが———―———そこに顔がないのだ。
この顔のないローブ男?女?を見ていると言いようのない不安感がつのってくる。
低く、落ち着いた声がローブから発せられた。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
「は?」
意味が分からなかった。
もし、あれが運営サイドの人間なら、確かにこの世界の操作権限を持つ神的な存在だが、いまさらそんな事はわかりきっている。混乱している中、赤ローブは話を続ける。
話をまとめると、
・ログアウトボタンが無いのは、バグではなく、SAO本来の姿であること。 よって、自発的なログアウトはできない。
・外部の人間によってナーウ゛ギアの停止または解除が試みられた場合、使用者の脳を破壊し、殺す。
・ゲーム内において、HPがゼロになった瞬間に、ナーヴギアによって脳が破壊され、名実ともに死ぬ。
・アインクラッド百層を全て攻略し、最終ボスを倒すまで、ゲームは終わらない。
と言うことらしい・・・
「で、できるわきゃねぇだろうが!!ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」
僕の隣にいた二人組の赤い髪の侍風のヒトが叫ぶ。
そういえば、ベータテスト期間の二か月で、クリアされたフロアはわずか六層だったと、先輩に聞いたことがある。事実だったのか・・・
『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに、プレゼントを用意した。確認してくれたまえ。』
それを聞くや、周囲のプレイヤーがいっせいにメニューを開く。プレゼントの中身は、《手鏡》。こんなものが何の役に立つのかわからないが、とりあえずオブジェクト化。おそるおそる覗いてみるが、映るのは、造るのに意外と苦労したアバターの顔だけだ。周りの人も首をかしげている。——————と。突然アバターを白い光が包んだ。二、三秒で光は消え、元の景色が流れ・・・。いや、再度鏡を覗くと、そこにあったのは元の僕の顔だった。さっきまでの爽やかな「リョウ」はもうどこにもなかった。周りにいた美男美女いなくなり、リアルのゲームショウの会場から、客を集め、鎧兜を着せればこうなるのだろう現実の若者たちの集団があった。恐ろしいことに男女比まで変化している。
隣でも、
「お前・・・誰?」
「おい・・・誰だよおめぇ」
やはりアバターの顔が変わっていて・・・・・・・・・あれ?
「セ、先輩?」
なんと、隣にいた二人組の片方————赤い髪じゃない方————は、昼間電話で話していた桐ケ谷センパイだった!!
「龍!?」
「知り合いか?」
「まあな」
「まぁそれはいいとして、なんで顔が元に戻ったんですかね?」
「ナーヴギアは高密度の信号素子で頭から顔全体をすっぽり覆っているんだ。つまり、脳だけじゃなくて顔の表面の形も詳細に把握できるんだ。」
「で、でもよ。身長とか・・・・体格はどうなんだよ」
確かに、ナーヴギアは顔を覆っているだけで、体のスキャンはできないはず・・・・・・いや。
「確か最初に被ったとき、自分の体を触らせられた気がします。なんだっけ?〈きゃりぶれーしょん〉的な奴でした。」
「でも、何でこんなことするんですかね。」
「もう少し待てよ。どうせ、すぐにそれも答えてくれる。」
その言葉通り、数秒後に声が降り注いだ。
『諸君は何故?、と思っているだろう。私の目的はこの世界を創り、鑑賞するためにのみSAOを、ナーヴギアを造った。そして今、すべては達成せしめられた。』
『・・・・・・・・・以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の—————健闘を祈る。』
唐突に終わり、赤ローブは消えていった。
数秒後、現実を悟ったプレイヤーたちの悲鳴が響き渡った。
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