困った王子様
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第三章
「兄上は確かに変わった方です」
「誰も読まれない様な書ばかり読まれます」
「街や村によくお忍びで出られます」
「仮面舞踏会にも」
貴族達の宴にもだ。
「ですがそれでもです」
「日々努力されています」
「私達なぞよりも遥かに」
「あれだけ真面目な方はおられないですよ」
「どういうことだ」
弟、妹達の王子への評価を聞いてだ、誰もが不思議に思った。
「まず呆れる方々がだ」
「あの様に言われるとは」
「一体どういうことだ」
「おかしくないか」
「明らかにおかしい」
「これはな」
「王もそうだが」
父の彼のことも話される。
「何故王家の方々は王子がそのままでいいというのだ」
「おかしなことばかりされているが」
「廃嫡は考えないのか」
「あのままでは愚王が誕生するぞ」
「この帝国の歴史でも最悪のだ」
「それでもいいのか」
「あの方はあのままで」
「俺なら家の中に押し込めるぞ」
廃嫡、そして幽閉するというのだ。
「何故そうしない」
「何処がいいんだ、あの王子の」
「破天荒で奇行ばかり繰り返し」
「いつも自信満々で妙なことを言う」
「変人もいいところだぞ」
「あんな変な王子他にいるか」
「しょっちゅう街や村にも出て」
「その辺りの居酒屋で飲んだりしてるみたいだな」
お忍びでそうしていることも噂になっている。
「仮面舞踏会にも出て」
「遊んでばかりだろ」
「そんな放蕩王子の何処がいい」
「王様も他の王子様、王女様も何を考えている」
「理解出来ない」
「あの王子が国を継いだら大変だぞ」
「国は滅びるぞ」
こう言う、しかし。
王も他の王家の面々もだ、王子に跡を継がせることは変えなかった。それこそ頑としてである。
王子はそのままおかしな学問と武術に精を出し暇があるとお忍びで街や村で遊んだ、仮面舞踏会いも出た。そして。
王は王子が二十五歳になった時に自ら退位した、そして。
王子が新たな王となった、国民達も帝国の他の国々の者達も諸外国の者達も殆どの者がだ、口々に言った。
「愚王の誕生だ」
「これ以上はないまでのな」
「さて、どんな馬鹿なことをするか」
「あんな変な王子だったんだ」
「王になってからもだぞ」
「変なことをするぞ」
「そうに決まっている」
こう言うのだった、そして。
「この国も終わりだ」
「馬鹿な王様の為にどうなるか」
「皇帝陛下に廃嫡を願い出る準備をしよう」
「今からな」
こんなことも言い出していた、しかし。
王となった王子は自身の古今東西の様々な書を置いている、それ以外に金がかかっているものは何もない執務室の中でこう言ったのだった。
「さて、私が王になったからにはだ」
「あの、本当にです」
「大丈夫ですか?」
側近達は新王に心配そのものの顔で問うた。
「陛下で」
「本当に」
「ははは、見ているのだ」
そう言われてもだ、自信に満ちた笑みで笑って返す新王だった。
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