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ヘリコプター解説(日本編)1

 
前書き
引用文献
wikipedia
陸上自衛隊の装備品一覧-回転翼航空機(ヘリコプター)

「AH-1 コブラ」
「AH-64D アパッチ・ロングボウ」
「EC665 ティーガー」
「UH-1J イロコイ」
「UH-60JA 多用途ヘリコプター」
「CH-47J チヌーク」
「OH-6J カイユース」
「OH-1」
「SH-60J」
「SH-60K」
「MH-53E」
「MCH-101」

 

 
「AH-1S コブラ」(72機)

用途:対地・対戦車攻撃

分類:攻撃ヘリコプター

製造者:ベル・ヘリコプター・テキストロン(ベル・エアクラフト)

乗員:2名(前席:射撃手/後席:操縦士)

全長:13.4m

全高:4.44m

発動機:ジェネラル・エレクトリックT-700-GE-401

実用上昇限度:3475m

最大速度:278km/h

航続距離:519km(増槽なし)

武装 :固定武装M197 20mm3砲身機関砲(1200発)

AGM-114 「ヘルファイア」対戦車ミサイル×8

BGM-71 TOW対戦車ミサイル×8

AIM-9サイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイル×2

JM261ハイドラ70ロケット弾ポッド(ロケット弾19発入り)×2


AH-1S コブラは、
ベル・ヘリコプター・テキストロン(ベル・エアクラフト)社が開発した、世界初の攻撃ヘリコプターである。従来、地上部隊への近接航空火力支援は空軍に任されていたが、適時に支援を受けられない等問題があった。
そこでアメリカ陸軍はヘリコプターによる自前の航空支援を考え、それにより生まれたのがAAFSS(新型航空火力支援システム)構想である。
しかし、アメリカ空軍が攻撃ヘリの構想に強く反対した為、
UH-1のような汎用ヘリコプターに兵装を施すガンシップに近いものを計画した。


しかし、ベトナム戦争においてヘリに機銃やロケット弾を装備させたガンシップを運用したところ、
重量増加による巡航速度が著しく低下するなどの問題が発生した。また、生存性の低下も課題となった。エンジンの換装や装甲板の貼り付け、防弾ガラスの重ね合わせなどの応急処置がとられたが、
元が輸送用ヘリコプターであるため決して良策とは言えなかった。この結果を踏まえて1967年にUH-1をベースにベル・ヘリコプター・テキストロン社(当時)が開発したのがコブラだ。世界初の本格的な攻撃ヘリコプターで、その後登場する各国の攻撃ヘリに大きな影響を与えた。


AH-1はUH-1のダイナミック・コンポーネントを流用しているが、主ローター・ハブはドア・ヒンジ・ローターを使用し、
抵抗の大きなスタビライザー・バーを廃止した。前面投影面積はUH-1の1/3の91cmと非常に小さく、
速度性能も向上している。前席はヘルメット照準方式のガナーが搭乗し、の二名が縦一列に搭乗する、タンデム式コックピットを採用し、
この配置は以後の攻撃用ヘリコプターの基本的スタイルになった。兵装は胴体側面のスタブウィングに搭載し、機首にはバルカン砲を搭載している。


最大の特徴は、
幅99cmという非常にスリムな胴体と、
搭乗員をタンデムに配置した事である。これによって前面面積はUH-1の約三割にまで減少され、
速度の大幅な増大と低視認性がもたらされた。初の量産型であるAH-1Gのエンジンは「T53-L-13」が搭載され、巡航速度は時速278kmに達する。
コックピットは、前席が射手兼副操縦席、
1段高い後席が操縦席となっている。


胴体中央部のスタブウイングには4ヶ所のパイロンがあり、
ミニガンポッド・ロケット弾ポッド・TOW対戦車ミサイルなどの兵装を、最大で700kgまで装備することが可能である。固定武装のM197機関砲は、もともとアメリカ陸軍のガンシップに搭載して運用するために開発された電動式3砲身ガトリング砲である。M197は、M61バルカンの砲身を6から3に減少させることによる軽量化版として開発された。


射撃レートはM61の4分の1以下となるが、
これは、反動を大幅に低下させ、ヘリコプターや軽航空機に搭載するのにはかえって適した特長となった。射撃レートは1分間に720発。射撃訓練では通常、30-50発のバースト射撃を行う。威力は距離100m、傾斜25度で20mmの装甲板を貫通できる。距離1000m以内で垂直に着弾した場合、
RHA(均質圧延装甲)換算で7mmの貫徹能力を持つ。


陸上自衛隊では昭和52年度予算と昭和53年度予算で研究用として1機ずつ購入し、
昭和54年度と昭和55年度にそれぞれ配備された。昭和57年度予算からは本格的な調達が開始され、
7機目から富士重工業(エンジンは川崎重工業)によってライセンス生産も始めた。しかし、古いので色々とエンジンの問題を抱えており、
次第に後継ヘリとの交代が進んでいる。
自衛隊特地派遣部隊が現地に持ち込んだヘリの一つで、現地では「鋼鉄のワルキューレ」として畏れられている。






「AH-64D アパッチ・ロングボウ」(36機)

用途:対戦車・対地攻撃(対空攻撃)

分類:攻撃ヘリコプター

製造者:マクドネル・ダグラス(現ボーイング)社

乗員:2名(前席:射撃手兼副操縦士/後席:操縦士)

全長:17.76m

全高:4.95m(FCR頂部まで)

発動機:GE(ゼネラル・エレクトリック)製T700-GE-701C ターボシャフト

実用上昇限度:4172m(地形効果内)/2889m(地形効果外)

最大速度:310km/h

航続距離:600km(機内燃料のみ)/2000km(フェリー時)

武装:固定武装M230A1 30mm機関砲(1200発)

AGM-114 「ヘルファイア」対戦車ミサイル×16

BGM-71 TOW対戦車ミサイル×16

AIM-9サイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイル×8

JM261ハイドラ70ロケット弾ポッド(ロケット弾19発入り)×2



AH-64D アパッチ・ロングボウは、マクドネル・ダグラス社(現ボーイング)が開発したAH-64A アパッチにロングボウ火器管制レーダーを搭載し、大幅な能力向上を図ったAH-64の派生型。アメリカ陸軍の他、日本の陸上自衛隊などでも採用されている。アメリカ陸軍は、ベトナム戦争でのベトナム民族解放戦線のゲリラ攻撃制圧用に、強力な武装を備えたヘリコプターを必要としており、AAFSS(発展型空中火力システム)と呼ばれる計画名により、本格的な攻撃ヘリコプターの開発を始めた。


しかし、AAFSSはベトナム戦争には間に合わず、兵士が1人で携行・発射できる携帯型地対空ミサイルの実用化により、その開発計画自体が見直しの対象となった。
また、ベトナム戦争で使用されたAH-1 ヒューイコブラは、AAFSSの実用化までの暫定的な攻撃ヘリコプターと位置づけており、アメリカ陸軍はAAFSSに代わる開発計画として、AAH(発展型攻撃ヘリコプタ)計画をまとめ上げ、1972年に発表された。


1970年代に入りソビエト連邦を中心としたワルシャワ条約機構軍が戦車などの装甲戦闘車両の増強を図り、その脅威が増大したため、対戦車攻撃力が重視され、
攻撃力と生存性を高めるため、高速性・低空飛行能力・高機動性を必要とし、
コンピュータ化した目標指示装置を用いた統合型の兵器システムを使用することが要求されていた。


1986年7月に初度作戦能力を獲得したAH-64Aアパッチは、
アメリカ軍の数々の作戦に投入されてその威力を発揮し、
世界最強の攻撃ヘリコプターであることを知らしめた。ただ、進化が予想される将来の戦場シナリオに対応するための改良・発達が不可欠とされ、マクドネル・ダグラス社は1990年の湾岸危機直後に第2世代アパッチ開発計画に着手した。


この計画はAH-64Aに全地球測位システム(GPS)、地上・空中単一チャンネル無線システム(SINCGARS)、自動火器管制システムと目標引き渡し機能などを備え、
新しいローター・ブレードの装備を含めた信頼性の向上を行うもので、AH-64Bの名称が与えられ、254機のAH-64AをAH-64Bに改修する計画が立てられた。しかし、
1990年8月にアメリカ国防調達委員会はもう一つの改修計画である、AH-64C/D計画を承認。これにより、AH-64B計画は実現しなかった。


このAH-64C/D計画は、AN/APG-78ロングボウ火器管制レーダー(FCR)システムを装備し、AH-64B計画での改修点に加え、
無線周波(RF)ヘルファイア対戦車ミサイルの携行能力、
ドップラー航法装置の装備、アビオニクスの小型化、コックピットの改善を行うもので、ミリ波レーダー搭載型をAH-64D、ミリ波レーダー非搭載型をAH-64Cと呼称した。


1990年12月からAH-64C/Dへの改修作業が開始され、ヘルファイア対戦車ミサイルの開発に間に合わせるために当初の51ヶ月から延長して70ヶ月の全規模開発プログラムがスタートした。1993年末にはAH-64Cの呼称が廃止され、ミリ波レーダー搭載の如何に関わらず、改修機全機をAH-64D アパッチ・ロングボウと呼称することが決定された。


AH-64DのコックピットはAH-64Aから完全に一新され、マンプリント型と呼ばれる。前後席には従来の計器類に代わって15×15cmの単色CRT表示装置を2基装備し、
乗員のワークロードは大幅に減少した。
CRT表示装置には、
基本飛行情報のほか、戦術状況表示、
エンジンやシステム状況表示、兵装状況表示、レーダー情報表示などを乗員の選択により行うことができ、2基のCRT表示装置には完全な互換性がある。


また、戦闘管理/連携攻撃/状況認識能力が改善されており、
サイメトリクス・インダストリーズ製改良型データ・モデム(IDM)を装備する。
このモデムは、毎秒16KBという高速データ転送機能を有しており、行動中の地上部隊、あるいは他の作戦ヘリコプター、火力チーム、E-8 J-STARSなどと各種データのやりとりを行う。


これによって、AH-64Dは各種のC4Iシステムに参加することが可能である。
本来AH-64DのIDMで転送できるデータとしては、座標データ、FCR目標データ、戦闘損害評価(BDA)、
射撃ゾーンなどで、こうした情報のやりとりは運用の互換性、デジタル通信、4チャンネル運用、耐妨害性、秘匿性、各種無線機、戦術火力指揮システムの使用といった特徴を有する。


AN/APG-78ロングボウ・レーダーは、35GHzというミリメートル波(Kaバンド)を使ったレーダーで、
目標の発見や捕捉/照準に加えて低迎撃可能性(LPI)を有するように設計されている。レーダー自体は、AH-64Dの主ローター・マスト頂部の円盤形ドームに収められていて、空対空モードでは360度の捜索能力を有し、1回の360度全周走査は30秒以内で行われる。
また、空対地モードでは、一つの走査セクター(区域)は90度で、それを3セクター有し、機体前方270度の範囲内で走査する。この他、地形プロファイリング機能も有する。


メインローターは先端に後退角の付いた4枚で、ステンレス・スチールと複合材を多用している。テールローターも同じく4枚で、騒音低減のために交差角60°でX字型に重ねた特殊な形態をしている。胴体に取り付けられたスタブウイングには前縁フラップが設けられており、輸送機への積み込みを考慮して取り外しも可能である。


操縦席周辺にはボロン・カーバイド製の装甲板が装着され、
強化構造のフレームが乗員を保護するよう設計されている。
前席と後席の間には破片や爆風を遮る透明なブラスト・シールドが設置され、
被弾した際に二名の乗員が同時に負傷する事を防止している。操縦系統は油圧式だが、被弾を考慮し電気式操縦系統も設けられている。墜落時に乗員を守るため、座席にもセラミック製装甲が取り付けられ、着陸脚や機関砲、胴体下部は墜落時の衝撃を吸収する構造となっている。


エンジンやトランスミッションなどには、構造材として7049アルミ合金製の装甲板が使用され、対弾性を高めている。
7049アルミニウム合金は機体の桁材、
外皮にも使用されており、構造自体へのダメージを軽減し、
容易に修復可能なものとなっている。
メインローターにはステンレス鋼と複合材が用いられ、23mm砲弾が直撃しても最低30分間飛行が可能な
設計となっており、メイントランスミッションは被弾によって潤滑油が全て損失しても、30分は作動する設計である。


燃料タンクは自己漏洩防止式(セルフ・シーリング方式)を採用しており、30mm機関砲の弾倉の前後に容量が587Lと833Lのものが配置される。燃料を消費してタンク内に隙間ができた際、その空間に引火性の混合気が充満することを避けるため、AH-64には自動的に窒素ガスを注入する装置が備えられている。エンジン排気口には、排気に周囲の常温空気を混入させて温度を下げる赤外線サプレッサーが装備されている。
これはブラック・ホールと通称され、
赤外線誘導方式の対空ミサイルの回避に有効とされる。


AH-64は最前線で活動できるように計画され、夜間の作戦や悪天候時にも対応できるよう考慮された設計であり、機首部の先端のターレットに装備された、AN/ASQ-170目標捕捉・指示照準装置(TADS)と操縦士用の暗視装置であるAN/AAQ-11パイロット暗視センサー(PNVS)を中心に構成された火器管制システム(FCS)を備えるほか、ハニウェル社製のIHADSS(統合化ヘルメット・表示標準システム)を備えている。


IHADSSは操縦士と副操縦士兼射撃手のヘルメットに飛行情報を右眼前に装着された片眼鏡の円形レンズのディスプレイに表示するものであり、戦闘機のヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)の同様の機能をもつシステムである。4つの異なるモードの表示機能を持っており、 後述する高度・方位・速度などの飛行データのほかに、目標ロックやTADSとPNVSの情報を表示することも可能である。


TADSは前席に搭乗する副操縦士兼射撃手用の機器で、機首部の先端のターレット下部に装備されており、TADSの左側には目視光学標準器(DVO)・TVセンサー・レーザー・スポット追跡装置・レーザー測距/指示装置が、右側には夜間戦闘用の前方監視赤外線装置(FLIR)が装備されており、ターレットにより上方30°、下方60°、左右120°まで旋回か可能だ。操作用レバーによって操作されるが、射撃手のIHADSSとも連動して操作が可能である。


昼間は直接光学視野またはTV視野が使用され、直接光学視野は範囲3.5度で拡大率18.2の狭視野と範囲18度で拡大率3.5の広視野に切替えることが可能であり、TV視野は範囲0.9度の狭視野と広視野に切替えることが可能である。夜間はFLIRが使用され、視野を狭(3.5度)・中(10.2度)・広(50度)の3段階に切替が可能である。


TADSは戦術・天候・視程条件により、
射撃手が直接光学視野・TV視野・FLIRの3種類のセンサーのいずれかまたは組み合わせを選んで使用される。また、3種類のセンサーの情報は、
射撃手のIHADSSにも表示が可能であり、
射撃手はこれを操作し目標の捜索を行い、発見後にTADSをその目標に捕捉させれば、その後は手動または自動で目標を追跡する。


後席に搭乗する操縦士はパイロット暗視センサー(PNVS)を主に使用するが、
状況に応じてTADSも使用できる。PNVSの映像は、操縦士のIHADSSに表示され、高度・方位・速度などの飛行データも投影される。PNVSは、機首部の先端のターレット上部に装備されており、操縦士のIHADSSに連動して上方20°、下方45°、左右各90°まで旋回可能で、広い視野が確保されている。


また、PNVSが故障した場合には、TADSのFLIRにより、操縦士に暗視画像を表示して、その後の操縦を可能とするバックアップシステムをもっており、PNVSや機首下の30mm機関砲の照準は、操縦士のIHADSSの向きに連動させることができる。ロケット弾発射の場合は、IHADSSのディスプレイに照準シンボルと予想着弾地点が表示される。
また、TADSまたはPNVSの情報は、前後席に装備された表示装置により、ビデオ出力映像として表示される。


ヘルファイア対戦車ミサイルを使用する場合は、レーザー測距/指示装置でレーザーを目標に照射する。これはレンジファインダー(測距儀)も兼ねており、パルス・レーザーの照射によって目標までの距離を測ることもできる。夜間での発射では、前方監視赤外線装置(FLIR)が使用される。TADS、
PNVS、IHADSSによって得られた情報は、
火器管制システム(FCS)に集約される。FCSには操縦系統のほか、電波高度計、
方位・姿勢表示システム、地表面誘導装置、ASN-128慣性航法装置などの電子機器が搭載され、それらの情報を統合・演算する事で射撃精度を高める。


ロングボウから新しく装備されたロングボウ・レーダーは、
戦車や空中部隊などを迅速に探知・識別して位置を特定し、
攻撃のための優先順位付けを行える。
空対地モードでは、
地上目標に加えて空中目標の探知も可能だが、空対空モードでは地上目標の探知能力はない。レーダー・アンテナの走査で把握された目標は機上プロセッサーが、精密な位置評定、
移動速度、移動方向などの情報処理を行う。


この作業は同時に最大256目標に対して行え、それぞれの目標の種別を特定することも可能である。
さらにこれら探知目標について、脅威の度合いを判定して自動的に対処優先順位を付けて目標リストを作成する機能も有している。加えて、
空対地モードでは優先射撃ゾーン(PFZ)を設定し、そのゾーン内のみの目標に関する優先順位付けも行える。優先順位付けされた目標は、
優先度の高いものから順に最大で16目標がコックピットの多機能表示装置に表示される。


ロングボウ・レーダーの基部にはAN/APR-48A レーダー周波干渉装置(RFI)のセンサーが付いており、AH-64Dが地形などの陰に完全に隠れる前に受動方式で敵防空システムのレーダー輻射を捉え、
その情報はFCRが優先順位付けをし、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルへ渡される。FCRの捜索処理による目標に対するキュー化は完全に自動化されており、
AH-64Dが地形などの陰に隠れた後でも作動している敵防空システム存在下で、
乗員による反応時間の最短化を実現できる。360度の脅威警報・識別能力を有するとともに、FCRの照準線に準拠した最大90度の範囲で射撃方向判定が行える。


干渉装置のアンテナ・アレイは、FCRアンテナとともにボアサイト化されているのでRFIによる探知は高い精度でFCRの目標情報と一体化される。
脅威特性では、最大100のレーダー輻射をプログラム化でき、
内蔵データとの照合で輻射源の機材などの特定化が行える。
このプログラムは、取り外し可能型の使用者データ・モジュール(UDM)に収められており、新たな脅威が出現した場合でもユーザーが容易にアップデートできるシステムである。


そして自衛隊のアパッチに装備されているアローヘッドは、
陸上自衛隊向けのAH-64Dに搭載されている新世代の赤外線技術を使ったセンサーで、操縦用センサー、画像増強装置(I2)、目標指示前方監視赤外線(FLIR)、昼間センサー(昼間テレビ、レーザー照射装置、レーザー追跡装置)で構成されている。これらの内、FLIRを使った操縦センサーとI2によるテレビ・システム(I2TV)が発達型操縦センサー(APS)を構成し、それ以外のものが発達型目標指示センサー(ATS)となっている。


アローヘッドの大きな特徴の一つは高画質のFLIR画像が得られることであり、1000-10000000ピクセルという極めて大きなフォーカル・プレーン・アレイを有し、その走査画像をアナログ/デジタル変換をチップ上で行うことによって高解像度の画像を得られる。アローヘッドは多数の列線交換モジュール(LRM)と列線交換ユニット(LRU)で構成されているため、不具合や故障が生じてもモジュール化ユニットをそのまま交換するだけで機体を作戦状態に戻すことが可能であり、
高い作戦稼働率を維持することができる。また、LRMの使用によって戦闘環境や電磁干渉に対しても高い抵抗力を有するようになっている。


固定武装として、
機首下にM230 30mmチェーンガン1門を備える。最大射程は約3000m。砲身は上方11°、下方60°、左右各100°まで旋回可能で、照準は射撃手のTADSを用いる。胴体両測面のスタブウイングに設置された兵装パイロンの位置は、機体の重心位置に近くに配置されており、兵装を搭載した際の兵装重量を重心位置の近くにすることで、空虚時と満載時の飛行特性をほぼ同じにしている。


兵装パイロンは2ヶ所に兵装を搭載可能であり、内側パイロンにAGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイルを1組4発で計8発を、
外側パイロンに2・75inロケット弾を19発装備したM261ロケット弾ポッドを1本の計2本を搭載するが、
内側と外側の兵装を入替えることが可能であり、また、ロケット弾ポッドのみなら計4本の搭載も可能であり、ヘルファイアのみなら最大16発搭載も可能である。
また、ヘルファイアはAH-1のTOWの様に有線誘導ではないため、母機の生存性向上に寄与している。
発射後にロックオンを行うことも可能で、母機の姿を敵に曝さないまま発射もできる。


母機以外のレーザー照射でも誘導可能だが、照射装置が一台の場合は数秒の発射間隔をおく必要がある。この多彩な発射モード故に、射撃手への負担も大きい。
2・75inロケット弾のみの場合、最大76発搭載できる。1985年からは飛翔中に信管の調整が可能なハイドラ70 FFARロケット弾が採用された。
追加装備として、
スタブウイング両端にはFIM-92、AGM-122、AIM-9などの空対空ミサイルを搭載できる。これらの重装備、重装甲から空飛ぶ戦車とも評される。


陸上自衛隊では、
かつて導入したAH-1Sの減勢が2000年代に始まることを受けて、AH-1Sの調達終了後に後継機の選定を開始した。選定では、
日商岩井と富士重工業が提案するボーイングAH-64Dと、三井物産エアロスペースと三菱重工業が提案するAH-1Zの2機種が候補となり、両者の性能やコストなどの比較が行われた結果、2001年(平成13年)8月27日にAH-64Dの採用が決定した。


採用決定の翌年である2002年(平成14年)度予算には2機分の予算が計上され、
2006年年度には陸上自衛隊への納入が開始されるなど配備は順調に進んだが、
冷戦終結後、年々縮小傾向にある防衛費の中では高価な戦闘ヘリを毎年数機しか調達できず単価が高騰したことや、アメリカでAH-64DブロックIIの生産が終了したことなどを理由に陸上自衛隊は2008年(平成20年)度予算で調達を打ち切った。このように数少ない貴重な攻撃ヘリなので、特地には派遣されていない。






「EC665J ティーガー」(72機/最終的には96機)

用途:対戦車・対地攻撃

分類:攻撃ヘリコプター

製造者:ユーロコプター

乗員:2名(前席:操縦士/後席:射撃手兼副操縦士)

全長:15.80m

全高:4.32m(テールローター含)

発動機:MTU/RR/チュルボメカ MTR390(958kW)ターボシャフトエンジン

実用上昇限度:3500m

最大速度:330km/h

航続距離:432nm(機内燃料)

武装:固定武装M230A1 30mm機関砲(1200発)

AGM-114 「ヘルファイア」対戦車ミサイル×16

BGM-71 TOW対戦車ミサイル×16

AIM-9サイドワインダー赤外線誘導空対空ミサイル×8

JM261ハイドラ70ロケット弾ポッド(ロケット弾19発入り)×2


ティーガーは、西ドイツ(当時)とフランスが開発し、ユーロコプター社が設計製造している最新型の攻撃ヘリコプターである。陸上自衛隊はEC665J ティーガーとして、AH-1S コブラの後継として採用している。1970年代にフランス陸軍と西ドイツ陸軍(当時)は、現有の軽攻撃ヘリコプター(フランスはSA341/SA342ガゼル、西ドイツはPAH-1)の後継機となる本格的な攻撃ヘリコプターの研究を行っていた。両国での要求性能や機体規模、
配備時期などが非常に似通っていたこともあり、1984年に共同開発の基本合意に達し、同年5月29日に両国政府が共同開発を承認した。


機体の開発・製造については、フランスのアエロスパシアル社(現EADS社)と西ドイツのMBB社が50:50で共同出資会社を設立することとなり、フランス・パリにユーロコプターGIE社を設立。1985年1月18日には西ドイツ・ミュンヘンに子会社のユーロコプターGmbH社を設立した。


この段階で両国は、
3タイプの配備を決定しており、フランス陸軍は航空支援型のHAPと対戦車攻撃型のHAC3G、西ドイツ陸軍はPAH-2とされ、HAPは75機を生産して1993年から、HAC3Gは140機を生産して1996年からの引渡し予定で、
PAH-2は212機生産して1995年からの引渡しを予定していたが、後に両国で運用要求の見直しが行われ、1987年11月13日に新しい機体案が承認された。この機体案がティーガーとなるもので、1989年11月30日に開発契約を交付した。


ティーガーは、採用国によって仕様の違いはあるものの、
基本的には同一の機体構造となっている。機体には複合材料が多用され、胴体は約80%がカーボン複合材料によるブロックまたはサンドイッチかケブラー・サンドイッチ構造で、その他の材料ではアルミニウムが約11%、チタニウムが約6%使用されている。メインローター、テールローターも同様で、ブレード本体は複合材料製。メインローターはMBB社が開発した高効率ブレードを採用し、テールローターは重量、性能、整備性、費用の関係から3枚ブレードを採用している。


操縦席は攻撃ヘリコプターでは主流となった縦列複座式を採っているが、前席に操縦士、後席に射撃手というアパッチとは逆の配置とされている。この配置は日本の陸上自衛隊の偵察ヘリコプターOH-1にも採り入れられるなど主流になりつつあるが、その先駆となったのはティーガーである。


操縦席全体は高度に密閉され、外気温に合わせた冷暖房を備えている。また、
乗員がNBCスーツを着用して搭乗でき、NBCスーツの換気は操縦席内の空気と空調装置の空気とを混合して行う。前後席には各2基のカラー多機能表示装置と各1基のキーボード付き表示装置があり、乗員はヘルメット装着式照準・表示装置(HMSD)を装備する。これにより、乗員の操縦負荷は大幅に減少している。


ティーガーの兵装電子システムは、任務器材パッケージ(MEP)と呼ばれ、HACとUHTのものはユーロMEP、HAPのものはHAPMEPとそれぞれ呼ばれる。ユーロMEPは対戦車兵装サブシステム、操縦士用画像サブシステム、空対空サブシステムなどで構成され、昼夜間、悪天候を問わず匍匐飛行が行える。
一方のHAPMEPは、
システム管理などの兵装コンピュータ・シンボル・ジェネレーターを中核として、機体に搭載されている複合センサーと組み合わされて乗員のHMSDに表示される。


双発で装備するMTR390ターボシャフトエンジンは、MTR社、ロールス・ロイス社、チュルボメカ社の共同開発製品だ。
自衛隊仕様のものは操縦席上部にTV、
FLIR、レーザー測距装置、直接視野光学センサーを収めた照準システム。メインローター上に対戦車ミサイル用のTV、
FLIR、レーザー測距装置で構成された照準装置を搭載するほか、機首にもFLIRを装備する。自衛隊特地派遣部隊が現地に持ち込んだヘリの一つで、現地では一部の帝国人から「鋼鉄のワイバーン」としてトラウマの対象となっている。






「UH-1J イロコイ」(132機)

用途:汎用ヘリコプター

分類:中型ヘリコプター

製造者:ベル・エアクラフト社

乗員:1~4名

全長:17.44m

全高:3.97m

発動機:T53-L-703

実用上昇限度:3840m

最高速度:260km/h

航続距離:532km

武装:基本的には無し、追加でキャビン両側にブローニング M2重機関銃を合計2丁装着する事が可能


UH-1J イロコイは、
アメリカ合衆国のベル・エアクラフト社が開発したモデル 204/205/212ヘリコプターのアメリカ軍における制式名称。
1955年、アメリカ陸軍による汎用ヘリコプターの開発要求に応じる形で開発されたのが、「ヒューイ」シリーズことUH-1J イロコイである。
1959年よりアメリカ陸軍で採用され、
ベトナム戦争などで活躍した。現在は後継機種のシコルスキーUH-60 ブラックホークに置き換えがすすんでいるが、日本の陸上自衛隊を含めて多くの国々では現役である。


アメリカ陸軍は当初は、軽輸送用途を主としたスリック(slick)として運用されており、最初期の配備部隊は第101空挺師団、第82空挺師団および第57医療分遣隊であり、いずれも負傷者後送用途で運用されていた。また、飛行性能が優れていたことから、1962年春より、武装攻撃用途を想定したガンシップとしての運用も検討されるようになった。


同年7月25日から沖縄で、15機のUH-1を有するUTTHCO(汎用戦術輸送ヘリコプター中隊)が編成され、
10月9日にはベトナムへと派遣された。
この中隊のUH-1は、
M60、またはM37C 7.62m機関銃二挺とロケット弾ポッド二個をスキッド上に搭載していた。翌年の1963年にはエンジンを換装し、メーカーによる本格的な艤装を施したUH-1Bを11機追加で配備している。このガンシップ型UH-1BはXM-156ユニバーサル・マウントが胴体後部に装着され、このマウントにはXM-6Eアーマメント・サブ・フライトシステムが取り付けられていた。


UTTHCOは、1962年10月から約5ヵ月間、
武装ヘリの実戦運用試験を行った。1800時間にもおよぶ試験の結果、護衛する輸送ヘリの被弾率は50%以上減少し、その有効性を証明した。また、その運用性格上、制圧射撃時による反撃を多々受けたが、損害は1機のみであった。この試験でUTTHCOは、総じて5-7機のガンシップで20-25機の輸送ヘリを護衛する事が可能という結論を出した。


一方で、1963年1月2日に第93輸送中隊が離着陸時を待ち伏せされ、CH-21が4機と護衛についていた1機のUH-1、計5機のヘリが解放戦線の重機関銃や迫撃砲によって撃墜されるという大損害が発生している。この時は、
アメリカ空軍による支援で事なきを得たが、これを戦訓とし、アメリカ空軍は武装ヘリ・ガンシップへの過度な依存は危険であると強く指摘した。


また、武装ヘリコプターはその武装や装甲故に速度が低下し、護衛すべき輸送ヘリコプターに追従できなくなる事態も発生し、運用に困難な面が多発し始める。
よって、本格的な武装(攻撃)ヘリコプターの導入が急務である事は明白であったが、アメリカ陸軍が入手可能な攻撃ヘリは当面存在しなかった。しかし、UH-1Bの多彩な兵装システムは、その後登場する本格的な攻撃ヘリコプター(AH-1G)の開発に大きく寄与する事となる。


1961年3月より、陸軍は改良型のモデル 204BをUH-1Bとして運用しはじめた。これは、UH-1A(モデル 204)をもとに胴体を延長し、ローターブレードを53cm幅に大型化するとともに、
より強力なエンジンを搭載したものであった。これにより、
基本となるスリック型においては、兵員7名か担架3台、貨物であれば1360kgを搭載できた。また、ベトナムにおいては自衛用としてドアガンも装備するようになった。もっとも広く使用されたのがいわゆるサガミ・マウントで、これはキャビン後部にM60D 7.62mm機銃を各舷に1丁ずつ装備したものであった。なお、この名称の由来は不明であるが、このシステムが相模総合補給廠で製作された可能性が示唆されている。


UH-1Bではスリック型以外にガンシップ型も製作され、これは1962年11月にUTTHCOに配備された。UH-1Bガンシップの艤装はメーカーによる本格的なものであり、
XM156ユニバーサル・マウントが胴体後部に装着されていた。
このマウントには当初、XM6Eアーマメント・サブシステムが取り付けられていた。M6サブシステム(1963年5月に制式化)は、片舷あたり2丁のM60C機銃を油圧駆動の銃座に装備したもので、しばしばMk4 FFARロケット弾のMA-2ポッド(2発)と組み合わせて搭載された。


副操縦士が射手として光学照準器により遠隔操作したが、
機銃が前方正面を向いているときは、
機長もロケット弾用照準器によって射撃することができた。1963年末からは、M6サブシステムにFFARのXM157ないしXM158ポッド(7発)を組み合わせたM16サブシステムが開発され、
初期のUH-1Bガンシップの標準装備となった。また、1963年には、FFARを片舷あたり24発(横4列×縦6列の直方体型ポッド)収容したXM3サブシステムが登場した。


XM3サブシステムは、
一度に480ポンド (220 kg)の高性能爆薬を投射可能という強力な火力投射能力を備えたものの、機銃を省いたロケット弾一本槍の武装であったため、通常、M16サブシステム搭載機のチーム(ライト・ファイア・チーム)とXM3サブシステム搭載機のチーム(ヘビー・ファイア・チーム)を組み合わせての運用が行なわれた。XM3サブシステム搭載機はホッグと通称された。
これらのユニバーサル・マウント用のアーマメント・サブシステムに加えて、
1964年7月にはM75 40mm擲弾銃を機首下面に装備するM5サブシステムが開発され、UH-1Bに搭載された。


その後、より収容力を増強したモデル 205シリーズ(UH-1D/H)の導入に伴い、スリック任務はこちらに任せ、UH-1Bは主としてガンシップ任務に投入されるようになった。ただし、スリック型とガンシップ型が基本的に同一機体であるために、重武装を施したガンシップ型が機動性や航続性能、
速力で劣り、編隊を組んでの作戦行動が困難になるという問題が発生した。


このことから、1965年9月からは、ガンシップ用途に特化した機体としてUH-1Cが配備された。UH-1CはUH-1Bの後期生産型をベースとしており、
モデル 204BのエアフレームにT53-L-11エンジンを搭載しているが、ローターは68cm幅のブレードとフレキシブル・ローター・ヘッドを採用したモデル540とされている。


兵装としては、基本的にはUH-1Bガンシップのものが踏襲され、機首部にはM75 40mm擲弾銃装備のM5サブシステムが、
胴体後部にはXM156ユニバーサル・マウントが搭載された。
ただし、ユニバーサル・マウントに搭載されるサブシステムとしては、M21サブシステムが主用された。これはM16サブシステムのM60CをM134ミニガンに換装したもので、1966年後半から導入された。


また、UH-1Cガンシップにおいては、UH-1BガンシップにおけるXM3サブシステムに相当するものとして、
XM159ポッドが多用された。これは空軍の19発入りポッドを導入したもので、XM3サブシステムよりも収容弾数は少ないものの、これによる軽量化と、ポッドそのものの空力設計が洗練されていたことから、機動性と航続性能への影響が低減されていた。UH-1Cは766機が生産された。


陸上自衛隊は現時点でUH-1HとUH-1Jを132機保有している。87式地雷散布装置を機外側面に取り付けることができる。1972年(昭和47年)からは、機体を大型化しエンジンをT53-K-13Bに強化したUH-1Hの調達に切り替え、1991年(平成3年)までに133機を納入、民間型のB204も販売した。
導入当初はUH-1Bと同様の塗装をしていたが、逐次迷彩塗装に切り替えられている。UH-1Hの最終生産12機は暗視ゴーグル(JAVN-V6)対応コックピットとなり、末期生産の少数はヘリコプター映像伝送装置(ヘリテレ)または赤外線監視装置が搭載された。


更に平成3年度(1991年度)予算からは、
エンジンをAH-1Sと同じT53-K-703に換装し、ワイヤーカッターなどを装備した富士重工業独自の改良型UH-1Jの調達に切り替え、2007年(平成19年)までに130機を納入した。UH-1Jはベルとの共同開発をベースとしているが、
機体構成の80%を国産技術としている。


UH-1Jは当初より、
暗視ゴーグル対応コックピットで生産され、また、大半の機体はヘリコプター映像伝送装置か赤外線監視装置を搭載できる準備工事が施されている。エンジンカウリングの上部にはIRジャマーも搭載可能。現在ではブラックホークとの更新が済んでいない部隊に配備されており、
自衛隊特地派遣部隊が現地に持ち込んだヘリの一つで、現地では偵察や輸送任務など多種多様な任務に行われている。






「UH-60JA 多用途ヘリコプター」(72機/最終的には120機)

用途:多目的ヘリコプター

分類:汎用ヘリコプター

製造者:シコルスキー・エアクラフト社

乗員:2名+完全武装の兵士12名

全長:19.76m

全幅:5.43m

全高:5.13m

発動機:ゼネラル・エレクトリック T700-GE-701C ターボシャフト

実用上昇限度:約4000m

最高速度:295km/h

航続距離:約1295km(フェリー飛行時2220km )

武装:基本的に無し。だがドアに12.7mm重機関銃M2、両側面の窓に5.56mm機関銃MINIMIを装備可能


UH-60JA 多用途ヘリコプターは、アメリカ合衆国のシコルスキー・エアクラフトが開発したUH-60 ブラックホークを日本の陸上自衛隊向けにした多用途ヘリコプターである。原型のUH-60 ブラックホークについても説明を行う。このヘリコプターはシコルスキー・エアクラフト社製の4翅シングルローター、双発エンジン搭載の中型多目的軍用ヘリコプターだ。


シコルスキーは、
1972年に行われたアメリカ陸軍の汎用戦術輸送機システム(UTTAS)競争のためにS-70を基礎とした試作機YUH-60Aを提示した。陸軍はボーイング・ヘリコプターズ提示のYUH-61との性能比較試験飛行を行い、1976年、このプログラムの勝者としてYUH-60Aを調達に向けたプロトタイプにすることを決定した。その後、それまで運用されていた戦術輸送ヘリコプターであるベル・エアクラフト社製UH-1 イロコイの代替として1979年、陸軍に納入を開始した。


これに続き電子戦機や特殊作戦機なども開発納入されている他、UH-60L、UH-60Mなどの亜種も開発されている。
また、海軍、空軍、
および沿岸警備隊のための改修版も開発されている。アメリカ軍の使用に加え、
UH-60ファミリーは多くの国へと輸出されているほか、グレナダ、パナマ、イラク、ソマリア、バルカン半島、アフガニスタン、中東など多くの紛争地帯で使用されている。


1960年代後半、アメリカ陸軍はUH-1 イロコイを置き換えるために汎用戦術輸送機システム(UTTAS)プログラムを立ち上げ、同時に新型ヘリコプターに使用される新型ガスタービンエンジンの開発にも着手した。これはその後、ゼネラル・エレクトリック T700として採用されている。


ベトナム戦争ではUH-1が多数撃墜されているように、ヘリコプターによる任務では低空を低速で飛行することが多く、
小火器や対空砲などの標的になりやすい。そのため重要な性能として、生存性と信頼性の改善を挙げており、UTTAS並びに新型パワープラントの要件として定め、
1972年1月に提案依頼書(RFP)を発布している。


その結果、UH-60は激しい攻撃を受けながらも生存率が高く、
戦闘地域から離脱することができたと報告されている。RFPには航空輸送の要件が含まれており、C-130輸送機に搭載するため、キャビンの全高、全長が指定されている。信頼性の向上、生存性および低ライフサイクルコストなどを定めたUTTAS要件は、結果として戦闘高度や高高度などでの性能を向上させる双発エンジンの採用などに繋がっている。


整備箇所を減らすことに繋がるモジュラーデザイン、乾式ギアボックス、被弾に備えた油圧、電気、
操作系統の冗長化、
墜落に対する耐衝撃性能を有する乗員並びに搭乗員の座席、
降着装置のデュアルダンパー化並びに耐被弾性能。静粛性が高く耐被弾、耐衝撃性能を有するメイン並びにテールローター、耐衝撃燃料システムなどが要件として定められている。


UH-60は、メイン、
テールローター共に4枚の羽根を有した回転翼によって構成され、ゼネラル・エレクトリック社製T700型ターボシャフトエンジンによって動力を与えられている。
回転翼は折りたたみ式であり、展開時はエラストマー製のベアリングローターヘッドに固定される。


テールローターは傾斜が付けられており、剛性クロスビーム構造である。C-130輸送機による航空輸送を目的とした陸軍の要件を満たすため低全高形状となっている。完全武装の歩兵1個分隊約11名の搭乗が可能であり、2600ポンド(1170kg)の内部積載量を持ち、
外部からスリングによって9000ポンド(4050kg)の貨物を吊り上げ可能としている。


ブラックホークシリーズは、特殊作戦、
戦術輸送、電子戦、医療搬送(MEDEVAC)、戦傷救難活動(CASEVAC)、
避難救助など多目的な用途に使用することが可能であり、
VH-60Nとして知られるVIP仕様は、コールサイン「マリーンワン」としてアメリカ大統領並びに政府関係者専用機として運用されている。ヘリボーン(Air assault)では1個分隊11名とその装備、もしくはM102 105mm榴弾砲および砲弾30発と4名の砲兵を同時に運搬することが可能である。


胴体上部左右に10000ポンド(4500kg)の積載が可能な外部搭載支援システム(ESSS)を裝着することにより追加される左右2箇所ずつのハードポイントに、AGM-114 対戦車ミサイル4連装ランチャー、2.75インチ(約70mm)19連装ロケット弾ポッド、ガンポッド、同じく片側に230ガロン(870リットル)計450ガロン(1700リットル)合計4つの増槽などを搭載することができる。


このため、AH-64 アパッチの開発費の高騰に対して代わりに利用することも検討された。なお、ESSSシステムは1996年に使用され始めているが、片側に2つの増槽を取り付けた状態ではドアガンの射撃に支障が出ることが判明し、問題解決のため専用のスタブウイングが取り付けられた(ETS)が開発されている。


そして陸上自衛隊が採用したUH-60JA 多用途ヘリコプターは、航空輸送を始めとする各種任務に使用されることから、
赤外線暗視装置(FLIR)、航法気象レーダー、GPSや慣性航法装置による自動操縦機能に加えて、エンジンの排気口へ装着された赤外線排出抑制装置(IRサプレッサー)やワイヤー・カッター(進路を妨げる電線やワイヤートラップなどを切断する)、チャフ・ディスペンサー、IRジャマーを追加装備し、燃料容量を増加して航続距離を1295kmに延長している。装備や燃料は増えたが、全備重量は9tと削減されている。


当初、現在使用中であるUH-1Hの後継機として置き換える計画だったが、UH-60JA(約37億円)が大変高価なためにUH-1J(約12億円)とハイローミックスする計画に変更した。また、
アメリカ陸軍同様に、対戦車ミサイルランチャー、ロケット弾ポッド、ガンポッドなどを装備する計画だったが、予算の関係で見送られ増槽装備のみに止まる。
状況に応じてキャビンドアに12.7mm重機関銃M2を、5.56mm機関銃MINIMIをキャビンドアとガナーズドアに搭載し、ドアガンとして運用することができる。


なお、沖縄の第15飛行隊向けの4機については、洋上飛行が多いため、不時着水時の脱出が容易となるように、コックピットドアの窓枠が廃止されているほか、
主脚付け根のスポンソンにはフロートが内蔵されている沖縄仕様の機体となっている。当初は白、オレンジ、
オリーブドラブの塗装である沖縄塗装が施される予定だったかが、通常の迷彩塗装で配備されている。


そして航空自衛隊向けのUH-60J 救難ヘリコプターは、1988年(昭和63年)度予算から調達を開始し2016年(平成28年)度予算までに72機の予算を計上している。救難隊用のKV-107の後継として、アメリカ空軍のHH-60Aをベースに改良し、
機首に赤外線暗視装置(FLIR)や航法気象レーダー、機体両側面に捜索用バブルウインドウ(半球状に膨らんだ形の窓)や大型の増槽を装備している。


実際の救難現場ではU-125A(航空自衛隊が運用している双発ジェット機の名称)と組んで運用される。長らく救難隊用に白と黄色の塗装であったが、2005年(平成17年)生産分からダークブルーの洋上迷彩塗装に切り替えられ、既存の機体も順次変更されている。また、48-4579号機以降の機体にはチャフ/フレア・ディスペンサーやミサイル警報装置が装備されているほか、アビオニクスも改良されている。これらの機体はUH-60J (SP)と呼ばれ、それ以前の機体と区別されている(SPはSelf Protectionの略)。更に98-4588号機からは空中給油用の受油プローブが装備されている。他にも自衛用の5.56mm機関銃MINIMIの装備も開始されている。


自衛隊特地派遣部隊が現地に持ち込んだヘリの一つで、現地では輸送任務やヘリボーンなど多種多様な任務に行われている。特に多いのが後者で、多少の被弾にはイロコイより強いので良く使用されている。ヘリボーンは輸送機や空挺部隊を使った空挺作戦と比べ、ラペリング(ヘリから降ろされたロープを伝って滑り降りる技術)を例外として特殊訓練が不要なことから、普通の兵員でも実施可能であるなど様々な利点があるので、特地派遣部隊は好んでこの戦法を使用する。






「CH-47J/JA」(CH-47J:48機とCH-47JA:72機で合計して120機)

用途:大型輸送ヘリコプター

製造者:ボーイング・ヘリコプターズ社

乗員:3名(操縦士2名、機上整備員1名)+55名

全長:30.1m(胴体長15.54m)

全高:5.7m

発動機:ゼネラル・エレクトリック T55-K-712A(川崎重工がライセンス生産)

実用上昇限度:2870m

最高速度:282km/h

航続距離:841km(フェリー航続距離:2060km)



CH-47J/JAは、CH-47 チヌークの改良型であるCH-47Dを航空自衛隊と陸上自衛隊が採用したものだ。
基本形となったCH-47は、アメリカ合衆国のボーイング・バートル社(現ボーイングIDS社のロータークラフト部門)で開発されたタンデムローター式の大型輸送用ヘリコプターである。
配備開始から半世紀が経過した現在でも、最新モデルであるF型が生産されており、未だに後継機は登場していない。エンジン換装や燃料タンクの増設などが何度も行われた為に最新の機体と初期型は、
全く違う機体といえるほどに各性能が改良されている。


アメリカ陸軍では、
有事の際に空中機動作戦を実施するにあたり、地上からの火力支援のために155mm砲を運搬できる大型ヘリを必要としていた。バートルが1956年に開発を開始し、
YHC-1A(後のV-107/CH-46)として提案したが、エンジン出力などが要求を下回ったために採用を見送られた。


そこで、エンジン出力を増強して胴体内容積を拡大、さらには最大12.7tの貨物を機体下面の吊下装置で吊下し、移動することも可能としたYCH-47Aを開発、1961年9月21日に原型機が初飛行し、アメリカ陸軍は1962年にCH-47Aとして採用した。CH-47AはM198 155mm榴弾砲と弾薬に加え、砲の運用に必要な兵員を含めて空輸できる能力を持っていた。


1965年からのベトナム戦争で大量に投入され、機体の優秀さを世界に証明した。
様々な改良を受け現在でもアメリカ陸軍、イギリス陸軍、
イラン陸軍(革命前に輸出)、オーストラリア陸軍、リビア陸軍(リビア革命前に発注、革命後に一部の機体が引き渡され、カダフィ政権打倒後に再度発注中)などで使用されている。イギリス空軍ではフォークランド紛争で、アメリカ軍でも湾岸戦争で能力を再び発揮した。特に、イラク領内に侵攻した陸軍第18空挺軍団の活動にはCH-47が欠かせないものであった。


日本では陸上自衛隊がCH-47JおよびCH-47JAを、航空自衛隊がCH-47Jを運用している。改修・装備で区別すると前者は6種、後者は5種のCH-47を保持している。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本大地震などの大規模災害における被災者救援活動の他に、
スマトラ島大津波、
パキスタン洪水被害の緊急援助で派遣された実績を持つ。


CH-47は、前部ローターを左回り、後部ローターを右回りに回転させることで回転トルクを互いに打ち消すタンデムローター機であるため、シングルローター機のようにテイルローターを駆動する分の無駄なエネルギーを消費せず、テールブームも必要としない。
操縦操作は、ヨーペダル、ピッチ/ロール・コントロールスティック、スラスト・コントロールで行い、2つのローターを備えることで、通常のシングルローター機よりも細かな動きが可能になっている。


タンデムローター機の特性上、ピッチ方向への安定性に欠けるため、AFCSを搭載し、非常に高い安定性を得ている。AFCSは2重化されており、1系統が故障した場合でも問題なく飛行できるようになっている。これらは高度や方位を保持する機能も持っており、パイロットの負担を軽減している。
21世紀以降はローターのブレード数を増やすことで効率向上と低騒音化が試みられているが、ブレード間の隙間にもう一基のローターのブレードが入り込む同期を行っているタンデムローター機では、
そのようなことはほとんど行えない。


機体は初期-後期型まで基本的にそれ程の変更は行われていない。キャビン内には、背の低いハンヴィーなら2両、兵員なら標準のトループ・シート33名分とエキストラ・シート11名分、または24台の担架を設置できる。機外吊り下げは胴体下の3箇所のカーゴフックで行い、CH-47Dなら合計11793kgまで吊り下げできる。また、
胴体下部は製造時点から防水処置が施されており、限定的な着水能力も一応有している。


油圧系統はトランスミッションによって発生される、二重化された操縦油圧系統と多用途油圧系統を搭載している。操縦油圧系統は操縦のみに使われ、片一方が損失しても操縦が継続出来るように二系統になっている。
多用途油圧系統はランプドア、カーゴフック、ホイスト、
ウィンチ、後脚のパワーステアリング、
エンジンの始動に使用される他、緊急時には操縦用の油圧としても使用できる。


そしてCH-47Dは、A-C型までの既存の旧型機に大幅な改造を施した型である。外板と内張りを剥がしてフレームやビーム、
バルクヘッドなどを総点検して腐食や亀裂箇所は交換され、
エンジンとアビオニクスも一新された。
D型からは後部ローター基部の前面に大きなトランスミッション・ギア冷却用のエアインテークが開口しているため、識別点となっている。


陸上自衛隊ではCH-47Jを1995年(平成7年)までに導入。
D型の日本向け改修機であり、自衛隊に対応した無線機器などの搭載改修を行っている。エンジンは川崎重工がライセンス生産したT55-K-712を搭載しており、連続最大出力は3149馬力となっている。自衛隊特地派遣部隊が現地に持ち込んだヘリの一つで、現地では輸送任務やヘリボーンなど多種多様な任務に行われている。主に積載量の関係で前者の用途で使用されるケースが多い。


平成7年の35号機(JG-52951)からは川崎の改良型であるCH-47JAを調達。大型燃料バルジを搭載して航続距離を1037kmに伸ばし、GPSとIGI(慣性航法装置)、
機首に気象レーダー、FLIR(前方監視型赤外線)をもち、NVG(暗視装置)対応型のコックピットになっていることから、
夜間での作戦能力が向上している。これらは第12旅団、第15旅団、第1ヘリコプター団、西部方面ヘリコプター隊などに配備されている。


また、近年の海外派遣任務の増加に伴い、JA型にEAPS(遠心力を用いたエンジンの防塵装置)、自己防御装置(チャフ・フレアディスペンサーおよびミサイル警報装置)、京セラとイスラエルメーカープラサン共同開発の特殊防弾板、衛星電話などを追加したタイプの機体が登場している。これらの機体は後部ランプドア、
および前方のキャビンドアと非常脱出ドアに12.7mm重機関銃M2、または5.56mm機関銃MINIMIを搭載することが可能となっている。また、エンジンについてはFADEC搭載型の強化エンジンであるT55-K-712Aエンジンへ逐次改修され始めている。


航空自衛隊ではCH-47Jを昭和59年から調達を開始してから長期間にわたって少数ずつ20機以上調達された。航空救難団ヘリコプター空輸隊(三沢・入間・春日・那覇)に配備され、平時には主にレーダーサイトへの物資補給に使われ、
非常時には救難ヘリとして要救助者の救助や被災地への物資輸送の要となる。


陸上自衛隊機と異なる装備としては、
後脚部の姿勢制御装置と救助用のホイストが挙げられる。
後脚の姿勢制御装置は、パレット化した貨物の積み下ろしの際に後脚の高さを調節することにより、ロードマスターの負担を軽減するものになっている。


平成11年度以降の取得機については、
大型燃料タンク、
気象レーダー、地図表示装置、2重化慣性航法装置(GPS内蔵)、
床レベリング装置などを装備したJA型に準じた機体とっており、CH-47J(LR)となっている。J型については既に全機用途廃止となっており、
現在はLRタイプのみを保有。航空自衛隊の機体もエンジンをFADEC化したT55-K-712Aエンジンへと改修を開始している。航続距離は約7トンの貨物を搭載し燃料満載状態で約750km。搭乗人員数は5人(操縦士2名、
機上整備員1名、空中輸送員2名)+55名。
 
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